上 下
229 / 247
番外編 第二世代の恋模様

グレンの初恋は…

しおりを挟む
歌劇団のキャンディーを目当てに王都から第一王子、ルミエールがやって来た。
ルミエールは僕らの従兄弟。この国リーガル王国の陛下の叔父が父様で王妃様の弟が母様だ。
僕には2歳上にアベニア兄さまが、5つ下に弟のミルドレッドがいる。そしてつい先日生まれたのが一番下のウィニーだ。


「父様とそっくりな真っ赤な瞳だ。僕も父様似って言われてるけど、父様の赤は受け継げなかったのに…いいな、ウィニー父様と一緒。」
「アベニア、お前は母様と父様の色を合わせたラベンダーを持っている。私にとって何よりの宝だ。何を羨む必要があるというのか。」
「そうだよ、アビー。僕とグラナダ様はね…アベニアをこの手に抱くためにいろんなことを頑張ったの。アベニアはこの国の真の救世主なの。アベニアがこの国を救ったと言ってもいい!」
「え…えへ。そうですか?父様、母様…僕、ウィニーの良き兄さまになりますね!」

「それにしても…ウィニー坊ちゃまは本当にご当主様にそっくりですね。ほら見てください。幼少はハッキリしないはずの属性ですが、坊ちゃまは生まれつき炎を持ってお生まれですよ」
「炎?確かに炎のような赤い瞳だが…」
「いえ、その奥をよくご覧になって下さい。小さな炎に気づきませんか?」
「え、本当ですか?ええー、嬉しい!僕の大好きなバーガンディレッドの炎だ。炎が灯ってますよグラナダ様。すごい…やっぱり生誕珠賜に念を飛ばしたのが良かったのかも。」
「邪念…」「何言ってんのジョッシュさん!思念だよ!思念!」
「執念…」「ちょっとマカフィーさん!あ、いいのか。」

「うむ、しかと見た。瞳の奥の小さな炎…アデルよ。お前は何を飛ばしたのだ。念だけではないのだろう。何をしたのだ、言って見よ」
「えへへ、実はグラナダ様の真っ赤な瞳のお子が良いって、生誕珠を賜ってから受精までの1週間、毎日祭壇に供えて祈祷したんですけど…願いが通じて良かった。」
「祭壇…?ここにそのようなもの…」
「僕のグラナダ様ミュージアムにはグラナダ様を祀った祭壇がちゃんとあるんですよ。知りませんでした?」
「アレの事だな…まったくお前と言う奴は…」
「ええー、だって想いの強さで勝負して僕のグラナダ様への愛が負けるなんて…勝負相手がグラナダ様でもこればっかりはゆずれませんよ?」



こんな愛情あふれる両親だから、当然血を引く兄さまも僕も〝運命の相手”に憧れがある。
兄さまは僕からラフを独り占めしていつかお嫁にもらうみたいだ。この間やらかしたちょっとした騒ぎのせいで、お兄様が本気なのはすでに邸中が知っている。
父様も母様も高貴な家にはめずらしく、好きな人と結ばれるべきって思っているからラフの気持ちがおんなじなら、それで良いってお考えだ。
生まれる前からの運命だって兄様は固く信じてる。母様のお腹にいるときからずっとラフからの愛情を感じてたって。母様とはまた違う柔らかく甘いその声にいつも癒されていたんだって。その話を聞いたマカフィーは、「生誕珠の中に居てさらに癒しが必要なのか?」って怪訝そうな顔してた。僕もそう思う。

それにしても…それならぼくの運命は?運命の人はどこだろう?

そんな思いを持て余してる頃、その人は目の前に現れたのだ。



「アベニア様、グレン様、ルミエール殿下の側近として共に修行に参りました。今日より一年お世話になります。」

父様と母様に挨拶を済ませたルミエの側付き、タウンゼン伯爵家のモデーロさまが兄さまの部屋へとやってきて丁寧に、そして品よくボウアンドスクレイプを決めて見せた。

ふぅん…きれいな横顔。

こんな感想を持ったのはいつぶりだろう…。何しろ僕は美形の顔は見慣れているのだ。

王族はそもそも美男美女が多い。歴史的にもそういった美しい男女が多く選ばれ集められた。もはやすでに遺伝子レベルで美形しか生まれないのだ。
そして母様や王妃様。
カマーフィールドのおばあ様はいまでもたいそうお美しいし、おじい様も今だってとても整ったお姿だ。そんな二人から生まれたカマーフィールド家の3兄弟はトールキン伯父様も含めみんな揃って見目が良いって評判だ。

そんなわけで…美形×美形の混成で僕の周りは美男美女だらけ。
それに加えて、せっかくの容姿の無駄使いと言うか…ルミエールがなんだかあんな風なので、僕は美形には免疫がついている。

そこに現れた兄さまたちより3つ年上のモデーロ君。今まで僕の周りに居たどの子とも違って見える。
この雄々しく賑やかなバーガンディではあまり見ない貴族然としたその立ち振る舞い。だけど全然嫌みじゃなく、薄く笑みを張り付かせ感情を抑えたその顔は、ルミエールの従者としてはとても様になって見えた。

「よろしくね、モデーロ。ルミエはいつもあんなんで君も大変だとは思うけど、ああ見えてもとても頭の良い従兄弟だからお願いね。」
「ふふ、存じておりますアベニア様。心配は無用です。殿下の発案した水路のおかげで物資の運搬が大変便利になりした。その聡明さに陛下も大変お喜びでしたよ」

「はじめましてモデーロさま。ルミエはクセが強いけど、ほんとはとても立派な王子なの。どうか見捨てないであげて。」
「そうですね。たいへん道義心に厚い素晴らしい方でいらっしゃいます。かと言って融通が利かぬほど頭が固いわけでなく…良い主君に恵まれたと我が身の幸運を神に感謝しておりますよ。ああ、グレン様。私に様は不要です。どうぞモデーロと、そうお呼び捨てください」

差し出された手にそっと手の平を乗せると思いのほか強く、きゅっと握られた。
兄さまと3歳しか違わないのにすごく大人びて見える。
僕はその怜悧な顔を、目を話すことも出来ないままにずっとずっと見つめ続けていた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました! カクヨム、小説家になろうでも投稿しています。

拾った美形魔法使いの胃袋と心を掴んでしまいました ~魔法使いと高校生のおいしいものライフ~

雨宮ロミ
BL
☆大まかな更新スケジュールは近況ボードに記載しています。  きつい容姿と冷たい態度と口下手さが原因で周りから怖がられ孤独な日々を送っていた男子高校生、古谷章太郎(ふるやしょうたろう)。彼の趣味は料理であり、誰かに自分が作った料理を食べてほしいという密かな想いを抱いていた。ある日章太郎は空腹で動けなくなった美形の男性「ガレット」を拾い、家に連れていき食事を振る舞う。ガレットは自らを「魔法の国から落ちてきた魔法使い」と言い、さらに「章太郎のやさしさと料理のおいしさに心を奪われてしまった」と告白。二人で一緒に住むことに。  そこから章太郎の生活は少しずつ変わっていく……。  美形魔法使い✕男子高校生のゆるやか日常ライフです。  諸注意 ※何も分かっていません。あらゆる変更が定期的に発生します。 ※主人公が周りから怖がられたり避けられる描写があります。 ※魔法・ファンタジー要素はそこまで強くないです ※性描写はありません ※料理のレシピは専門家の監修に基づいたものではありません。 ※すべてフィクションとしてお楽しみください。

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?

み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました! 志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo
BL
俺がゲイだと自覚したのは、高校生の時だった。中学生までは女性と付き合っていたのだが、高校生になると、「なんか違うな」と感じ始めた。ネットで調べた結果、自分がいわゆるゲイなのではないかとの結論に至った。同級生や友人のことを好きになるも、それを伝える勇気が出なかった。 そうこうしているうちに、俺にはカミングアウトをする勇気がなく、こうして三十歳までゲイであることを隠しながら独身のままである。周りからはなぜ結婚しないのかと聞かれるが、その追及を気持ちを押し殺しながら躱していく日々。俺は幸せになれるのだろうか………。 そんな日々の中、襲われている女性を助けようとして、腹部を刺されてしまった。そして、同性婚が認められる、そんな幸せな世界への転生を祈り静かに息を引き取った。 気が付くと、病弱だが高スペックな身体、アース・ジーマルの体に転生した。病弱が理由で思うような生活は送れなかった。しかし、それには理由があって………。 それから、偶然一人の少年の出会った。一目見た瞬間から恋に落ちてしまった。その少年は、この国王子でそして、俺は側近になることができて………。 魔法と剣、そして貴族院など王道ファンタジーの中にBL要素を詰め込んだ作品となっております。R指定は本当の最後に書く予定なので、純粋にファンタジーの世界のBL恋愛(両片思い)を楽しみたい方向けの作品となっております。この様な作品でよければ、少しだけでも目を通していただければ幸いです。 GW明けからは、週末に投稿予定です。よろしくお願いいたします。

悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです

魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。 ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。 そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。 このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。 前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。 ※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

処理中です...