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番外編 第二世代の恋模様
一番弟子ルミエ③
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「ルミエ…もうこれ以上小物増やさないでくれるかな…大体これもこれも同じものじゃない…」
「ですけど母上、こっちとこっちはほらここ、指先の形が少し違ってこっちの開いている方は迎えるように、指を軽く曲げている方は誘うように、表現されているものが違うのですよ」
「……」
「あ”あ”ーー!キャンディスーー!早く新作!新作の舞台が観たい!」
「どうしてだろう…なんかアデルに似て来たような…やっぱりあの時アデルの魔力に包まれたせいで…」
「あの時って?なにかあったのですか?」
「ルミエ、お前を産む時ワイアットは酷く難産でね…。危うく母子ともに命を落としかけたのだ。」
「父上!」
「それを救ってくれたのがアデルなのだよ。彼はワイアットの全身をピンクベージュの魔力で包み相当高位のヒール、いやハイヒールを放って…そしてお前が生まれたのだ…ルミエ、お前とアデルには切って切れない絆があるのだよ。」
アデル様が僕の恩人…そうだったのか…ならば僕たちは、魔力を交わした師弟といっても過言ではない。
「父上、母上、僕は修行をこの王宮でなくバーガンディでおこないたいと思います!」
「ええっ!ルミエ…そんな事突然…」
「バーガンディの警備隊には最高レベルの隊士が揃っていますし、僕はアデル様からその繊細な魔力操作を含め、いろいろ学びたいと思うのです」
「アデルから学ぶ…経営学とかそういうものかい?」
「人の心を動かす方法です。そういった部分は後継者としてとても大切だと思うのです」
とっさに口から出たその言葉は思いのほか父上の心を揺さぶった。母上はそれでもまだ訝しんでいたけれど、父上を味方につけた以上反対まではしなかった。
「アベニアっ、今日から一年お世話になるよ。どうぞよろしくねっ!」
「る、ルミエ…お前…キャンディー目当てでここまでするなんて!どうなっちゃったの?でもまぁ…あれからグレンとミルドレッドが平和そうにしてることだし…」
「そう言う訳だから聖地巡礼ついて来てよ。トレカの野外撮影した場所、アベニアなら見てわかるでしょ?」
「良いけど…セイチジュンレイ?って何?」
「アデル様が言ってらした、推しに関係した場所を見てまわる事だって」
「か、母様ったら…何教えてるんだか…」
アベニアにはフラッフィの他にも護衛が2人付いている。フラッフィは風の魔法を開花させある程度は使えるようだが、そもそも気性が優しすぎてとっさの危機に体が動くと思えない…とは師匠であるマカフィーの弁。
当の本人アベニアは「むしろ僕がラフを守るんだから構わない」って気にも留めていないようだ。
何か所もの撮影個所を回って僕の興奮は最高潮!そして最後に訪れたのが、ほんの2年前まで住んでいたという歌劇団の団員宿舎。
そしてアベニアと僕の強権を発揮してキャンディスが使っていたという部屋を見学させてもらう。
「こ、ここにキャンディスが…」
「ちょっと!変なことしないでね。それにしてもこの部屋が使用されてなくて良かったね」
「ああ、幸運だった…」
キャンディスが住んでた部屋はファンからもらった荷物が多く、今でも片付けられずにそのままだった。
カチャ
「あれ、フラッフィ来てたの?アベニア様こんにちわ。え…後ろにいるのって…」
「ーーーー!!!き、きゃ、あわわ…きゃんですさま…」
「る、ルミエっ、落ち着いてっ」
「ルミエール殿下…先日の夜会以来ですね。千秋楽はたくさんの花をありがとう。とても…ふふっ、嬉しかったです。」
「はっ、いえっ、そんなっ」
「お顔が赤いですよ?どうかしました?熱は?」ペト
「えdcrfvtgんjh!」
「うふふ、これからも応援してくださいね」
「ひゃい…」
絶好の機会だったというのに…満足に話す事すらできなくて、そのふがいなさに頭を抱えるしか出来なかった…。
「聞いたよルミエ、キャンディーに会ったんだって?あれ?せっかく会えたのに何でそんな顔して落ち込んでんの?」
「うう…だってまともに話せなくて…一生の不覚…」
「あ、あー、まぁそう言うものだよ。そういう僕は、接触はあってもいいけど無くても困らない派だからね。推しは遠くに有りて眺めるもの。地上に降りられても困っちゃうよ。なにしろ僕も陛下に初めてお会いした時はまともに話せなくって困ったよ」
「父上にですか?母上がアデル様は本当に父上の顔が好きだと言っていましたが…」
「始めた会ったときの陛下はまだ身長もそれほど高くなくて、本当に地上の天使かと思った。もーキラキラ」
「えっ、ええまあ確かに。それにしても地上の天使はキャンディス様の為の枕詞ですよ。父上に使うのはお止めください。」
「えっ…言うねぇルミエ…。それをいうなら子供の頃のアベニアがどれほど可愛かったことか!あれこそが天使!」
「いいえ、キャンディス様のあの人知を超えた透明感は…いまにも天に還りそうで…」
「くっ!グレンだってねー、ちっちゃなあんよでかーさまかーさまって付いて回って…」
「「やめてよ母様!恥ずかしい!」」
従兄弟二人の声を揃えた絶叫で、その醜い争いには終止符が打たれたのであった。
「ですけど母上、こっちとこっちはほらここ、指先の形が少し違ってこっちの開いている方は迎えるように、指を軽く曲げている方は誘うように、表現されているものが違うのですよ」
「……」
「あ”あ”ーー!キャンディスーー!早く新作!新作の舞台が観たい!」
「どうしてだろう…なんかアデルに似て来たような…やっぱりあの時アデルの魔力に包まれたせいで…」
「あの時って?なにかあったのですか?」
「ルミエ、お前を産む時ワイアットは酷く難産でね…。危うく母子ともに命を落としかけたのだ。」
「父上!」
「それを救ってくれたのがアデルなのだよ。彼はワイアットの全身をピンクベージュの魔力で包み相当高位のヒール、いやハイヒールを放って…そしてお前が生まれたのだ…ルミエ、お前とアデルには切って切れない絆があるのだよ。」
アデル様が僕の恩人…そうだったのか…ならば僕たちは、魔力を交わした師弟といっても過言ではない。
「父上、母上、僕は修行をこの王宮でなくバーガンディでおこないたいと思います!」
「ええっ!ルミエ…そんな事突然…」
「バーガンディの警備隊には最高レベルの隊士が揃っていますし、僕はアデル様からその繊細な魔力操作を含め、いろいろ学びたいと思うのです」
「アデルから学ぶ…経営学とかそういうものかい?」
「人の心を動かす方法です。そういった部分は後継者としてとても大切だと思うのです」
とっさに口から出たその言葉は思いのほか父上の心を揺さぶった。母上はそれでもまだ訝しんでいたけれど、父上を味方につけた以上反対まではしなかった。
「アベニアっ、今日から一年お世話になるよ。どうぞよろしくねっ!」
「る、ルミエ…お前…キャンディー目当てでここまでするなんて!どうなっちゃったの?でもまぁ…あれからグレンとミルドレッドが平和そうにしてることだし…」
「そう言う訳だから聖地巡礼ついて来てよ。トレカの野外撮影した場所、アベニアなら見てわかるでしょ?」
「良いけど…セイチジュンレイ?って何?」
「アデル様が言ってらした、推しに関係した場所を見てまわる事だって」
「か、母様ったら…何教えてるんだか…」
アベニアにはフラッフィの他にも護衛が2人付いている。フラッフィは風の魔法を開花させある程度は使えるようだが、そもそも気性が優しすぎてとっさの危機に体が動くと思えない…とは師匠であるマカフィーの弁。
当の本人アベニアは「むしろ僕がラフを守るんだから構わない」って気にも留めていないようだ。
何か所もの撮影個所を回って僕の興奮は最高潮!そして最後に訪れたのが、ほんの2年前まで住んでいたという歌劇団の団員宿舎。
そしてアベニアと僕の強権を発揮してキャンディスが使っていたという部屋を見学させてもらう。
「こ、ここにキャンディスが…」
「ちょっと!変なことしないでね。それにしてもこの部屋が使用されてなくて良かったね」
「ああ、幸運だった…」
キャンディスが住んでた部屋はファンからもらった荷物が多く、今でも片付けられずにそのままだった。
カチャ
「あれ、フラッフィ来てたの?アベニア様こんにちわ。え…後ろにいるのって…」
「ーーーー!!!き、きゃ、あわわ…きゃんですさま…」
「る、ルミエっ、落ち着いてっ」
「ルミエール殿下…先日の夜会以来ですね。千秋楽はたくさんの花をありがとう。とても…ふふっ、嬉しかったです。」
「はっ、いえっ、そんなっ」
「お顔が赤いですよ?どうかしました?熱は?」ペト
「えdcrfvtgんjh!」
「うふふ、これからも応援してくださいね」
「ひゃい…」
絶好の機会だったというのに…満足に話す事すらできなくて、そのふがいなさに頭を抱えるしか出来なかった…。
「聞いたよルミエ、キャンディーに会ったんだって?あれ?せっかく会えたのに何でそんな顔して落ち込んでんの?」
「うう…だってまともに話せなくて…一生の不覚…」
「あ、あー、まぁそう言うものだよ。そういう僕は、接触はあってもいいけど無くても困らない派だからね。推しは遠くに有りて眺めるもの。地上に降りられても困っちゃうよ。なにしろ僕も陛下に初めてお会いした時はまともに話せなくって困ったよ」
「父上にですか?母上がアデル様は本当に父上の顔が好きだと言っていましたが…」
「始めた会ったときの陛下はまだ身長もそれほど高くなくて、本当に地上の天使かと思った。もーキラキラ」
「えっ、ええまあ確かに。それにしても地上の天使はキャンディス様の為の枕詞ですよ。父上に使うのはお止めください。」
「えっ…言うねぇルミエ…。それをいうなら子供の頃のアベニアがどれほど可愛かったことか!あれこそが天使!」
「いいえ、キャンディス様のあの人知を超えた透明感は…いまにも天に還りそうで…」
「くっ!グレンだってねー、ちっちゃなあんよでかーさまかーさまって付いて回って…」
「「やめてよ母様!恥ずかしい!」」
従兄弟二人の声を揃えた絶叫で、その醜い争いには終止符が打たれたのであった。
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