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決断の時編

鏡よ鏡 ①

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待ちに待ったグラナダ様のお帰り。1週間っていいながら10日間も留守にして…もうっ、寂しかったんだからね。
又従姉妹さんのところへ行って養子縁組の話をまとめたグラナダ様は、ローランさんに生家のご両親をカマーフィールドへ呼びよせてはどうかと提案したらしい。その辺のことは今から細かく話し合うんだろうけど、グラナダ様がそういう提案をしたこと自体にトマスさんはビックリしてた。

「旦那様がこのように人の心を慮る日が来るとは…」

すごくいい感じに言ってるけど、結構ヒドイ事言ってるからね、それ。

そのあと王宮に寄って、いつものようにお父様と陛下のお手伝いをしたあと、なんとグラナダ様は神殿を訪れたって言うんだよ。
ええーっ、ちょっと鏡さん、余計な事言ってないよね⁉

「水見の鏡は他者の願いを決して漏らさぬ。その制約があの聖杯にはかけられておるのだ。簡単に聞けるものなら最初から聞いておるわ」

良かった…守秘義務ってやつに守られたよ…

「それじゃぁグラナダ様は何をしに行ってきたの?」
「その話は後でゆっくりとな。まずはアベニアに会わせてはくれぬか」




「とーたまー!」
「おおっ!アベニア。10日間会わぬ間にまた大きくなったか。ほうら、父様の腕においで」

グラナダ様の高い高いはみてるこっちがひやひやする。だけどそんなことはお構いなしにアベニア自身は大喜びだ。
王都で買い集めたたくさんのお土産。わざわざグラナダ様が選んだんだって。どんな顔して買ったのかって考えるだけであったかい気持ちになるよ。

「アベニアはアデルに似て闊達な子になりそうだ。良い兄となるであろう。だろう?アデル」
意味深にこちらを見るグラナダ様。

「こ、今夜?」「うーむ、今夜は話し込むかも知れぬ。明日ではどうだ」
「も、もちろんいいけど、グラナダ様、転移陣で魔力酷使してませんか?」
「魔力は2日で回復する。体力は…ふっ、推して知るべきだな」
「やだーもう、何この会話。アベニアの前で恥ずかしい!」

「夫夫仲良きことを恥じる必要などありませぬよ、アデル様」

トマスさんの慰めが心にしみた…





水見の鏡に未来視が出来るなら過去視も出来るんじゃないかとグラナダ様はそう考えたらしい。

「自身の全てを魔力化せずとも覗くだけなら出来るのではないかと、お前も近い事を思ったのであろう?」
「だって僕はそこに戻りたいわけじゃない。言ったでしょ。グラナダ様とアベニアのいるこの場所から何処へも行かないって」
「うむ。信じておるとも。」
「ただ本当にいきなりだったから…どこか割り切れない思いがあって…」
「大切な者たちだったのだな」
「うん…だからせめて、一目会えたら…」

「人間不信の私でさえ、父王と母の最期には立ち会った。命の恩人とやらの最後に会えなんだ事は心のしこりになっておるのだな。なんとかしてやりたいとは思うのだが…」

グラナダ様の様子からいい結果は得られなかったんだと分かった。
だけど聞いた話だけでも話してほしいとお願いしたらバカな僕にもわかるように説明してくれる。

水見の鏡は先見の鏡。祈り人の魔力を対価に見たい未来を見せてくれる。
だけど過去を失った鏡の精神体は過去を見ることは出来ない…

「過去を失ったってどういう意味?」
「身体を失ったと言う事だ。身体を失った時点でその者の過去はその者ごと消滅する。だから鏡は過去を持たぬ。ゆえに過去へは飛べぬのだと」
「わかるような…わからないような…。じゃあ未来は?」
「未来はこれから構築される世界であるからな、精神体の鏡にも自在に飛べる。いやむしろ独壇場といったところか」



身体を失った鏡は過去へは飛べない…か。じゃぁ、異世界にほんに体がアデルごと残ってる僕はどうなのかな?









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