イケメン大好きドルオタは異世界でも推し活する

新たな家族編

真実の近く

今日グラナダ様はバーガンディに新しく出来た目抜き通りに、これまた新しく出来た商業ギルドの長と夜の視察に出かけちゃった。マカフィーさんもすでに退出して時間外。
僕は良いチャンスとばかりに、お兄様から預かったアデルの絵本を取り出した。

擦り切れそうなほど何度も読み返してる絵本。タイトルは【動物と語らう少年】
たくさんの動物たちとお話したり遊んだりする、実にファンシーな絵本。雰囲気的にはアリスに近い。
…この異世界に獣人がいたら、アデル大喜びだったかな？

ページを捲っていると一枚の古紙が落ちて来た。古紙といっても古い本はまだまだ紙には程遠く、樹皮より硬い薄い木片か布紙になる。一冊一冊手書きだから非常に高価になってしまう。だからアデルの輿入れにあれだけの魔法書を用意したのはよほどの事なのだ。なんなら宝飾品よりお高い。お母様の愛を感じる…。
そしてきっとこの本も…。

中身を見ればわかる。これは5～6歳児向けの絵本。多分パーバートのことがあって、外に出られなくなったアデルを気遣って買ってくれた貴重な絵本なんだ。
その中に挟まれた布紙。
あっ、これ、魔法書の1ページだ…

とある魔法のページ。
そこに記されている魔法は…時空間魔法…

ドキリ
僕は、僕がここに連れて来られた秘密に触れた気がした。








と、思ったけど…、
…読めば読むほど…アデルに発動出来たとは到底思えなくなった…
いやいやいや、無理でしょこれ。僕にだって怪しいのに、魔法の嫌いなアデルにならもっと難しい。

そもそも必要なのが膨大な魔力。
日本で言うところの琵〇湖くらい大きな大きな水の魔力と強すぎず弱すぎずとても繊細な加減の光の魔力。それを囲って拡散させないの膨大な土の魔力。そしてすべてを異空間へと誘うのが清廉な風の魔力…。
かなり高レベルな四元素が揃わないと無理って…その時点でムリじゃん。

そして紙片の端に小さく書かれた文字列　
ヒ　ト　ウ　ニ　チ　ガ　タ　リ　ナ　イ
発動の呪文？



心の拠り所だったのかな？
だけど僕でも無理ってわかるんだからアデルにだってわかるはず。
それでも…諦められなかったのかな？ページの端が滲んでる…これはきっと涙なんだろう…

ズズ…う…ぐす…ひっく…
アデルがどんな思いで毎日この紙を見ていたのか…大切に折りたたまれ保管された紙片。それを考えると悲しくてやりきれない。




お願いアデル…お願いだから…日本に…僕の部屋に居て…