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王位交代開始編

父子の時間

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「それでね、クリフト殿下の気持ちが知りたいって思って」
「そうかそうか」

僕とお父様は邸の居住棟に備えられてるコンサバトリーで今お茶をしている。
グラナダ様が執務から戻られる僅かな時間を親子で過ごす。目を細めて僕を見るお父様の視線がくすぐったい。


「だって、よく考えたらどうなんだろうって。だって殿下の生誕ジュ、殿下お一人で神殿に行って賜ったものでしょ?皇太子妃はどうなってるの?女の人には生誕ジュ必要ないから神殿だって奇跡を賜る奥の院には入れないってマーカス副長が言ってましたよ?」
「うむ、そのとおりだ。…皇太子殿下の正妃であられるデボン侯爵家の令嬢、エネミア様は…正直私の中の、近づきたくない人物の一人である。」

デボン侯爵家の一人娘だったエネミア様は幼いころからの婚約者で殿下の成人を待ってするりと婚儀を結んだそうだ。どちらかというと王様よりの、いわゆる権威主義者で常にマウントとってくるような人らしくお父様はお好きじゃないみたい。

「エネミア様は王国と言うよりはデボン家の繁栄を一番に考える節がおありでな。傀儡の王子はドノヴァン陛下のみならず妃にとっても都合が良いのであろう。御用商人など裏金次第で好き勝手に采配しておった。かと言って陛下に迎合するかと思えばそうでなく…眼の上のタンコブ程度には思っておられるだろうが」
「ええ~…」

残念姫でしたか。え、じゃぁ、どうして殿下は…。
僕は、王が強権を発動する前、正妃様が愛人?の子を妊娠しようとしたことを殿下が認めてたってトマスさんに聞い
て、殿下は何を考えているんだろうって納得できなかった。
朝一で焼き上げたクッキーをお父様の前に差し出しながらささやかな疑問をぶつけると、推測だがと前置きして考えを聞かせてくれた。

「むしろ考えることを放棄しておられるのだろう。殿下はいろいろとこう、あきらめてしまっておるのではないかな?それほどまでにドノヴァン陛下は唯我独尊であられるからな。幼少の頃よりきつく抑えつけられ自分を取るに足らぬ者だとお思いになられているように感じる。優しい方ではあるのだがな」
「ぐ、グラナダ様の別バージョン…」
「ばーじょ?ともかく陛下に関して私は触らぬ神に祟りなしと思って極力避けてきたが、あちらからこうもこられてはのう…カマーフィールドの魔力は何かと有用でな…はは…」

お父様が乾いた笑いを…モテモテだね…おかわいそうに…

「殿下はおそらく言われたことをしているにすぎぬよ。妃が子を作ると言えば好きにせよと言い、王が珠を賜れと言えば神殿へ出向き、…連れてこられた赤子をお前の息子だと言われればそのようにされるのであろう…」
「…ちょっと、想像を超えてきました…え、お父様その殿下を教え、え、導か、え、大丈夫ですかそれ?」

返事を!返事をしてっ、お父様ーーー!





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