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王位交代開始編

計画の概要

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「して閣下、真面目な話私のような凡庸なものになんの手助けができましょうか?」
「うむ、今私の手の者が王へ恭順しておらぬ、国を憂う真摯な貴族に結束するよう呼び掛けておる。」
「では!辺境伯閣下がついに立たれるのですかな」
「いや、王位簒奪はせぬ。典範にのっとり王位には皇太子殿下についていただく。」
「ぬぬ、しかし殿下には少々私と同じ匂いを感じますぞ」
「あ、…いや、そのためにも卿には早急に殿下の側付きとなってもらいたい。名目は魔法の師がよかろう。そして殿下を諭し導いてくれぬか。凡庸と思われておればこそ殿下は卿には安心召されるだろうし、陛下は油断なされよう」

僕の半ギレ計画に乗っかってグラナダ様やグレゴリー隊長たちが肉づけをしてくれた計画の詳細がお父様に明かされる。
グレゴリー隊長さんとマーカス副長さんにも同席してもらい僕にもわかるように説明してくれた。

ドノヴァン王の傲慢不遜な治世への民衆の抑え込まれた不満を表に引き出し退位を要求。
そして皇太子殿下には腐敗貴族家のお取りつぶしや汚職官吏の一掃を含め、正された清廉な王国の統治を行っていただく。
これが計画の骨子。
そのためにまずは志を同じくする貴族たちの協力のもと、資源の採掘や食糧生産量の多い要となる各地方で、その地域に影響をもつ有力者を引き込み、先手を取って情報操作。
事態を知った王が手を打てぬよう、押さえた各領地を一斉同時に蜂起させ王国軍を分散させる。さらに王都でも暴動をおこし、それに乗じて殿下に王を討っていただく。
これらを近々懸念されるスタンピードの発生を待ち時を合わせて行う。

「…一つ二つ伺っても…?」
「うむ、なんなりと」
「情報統制はどうなされる?噂や伝聞程度で領民を決起させるほどの大きな波は起こせますまい?」
「それにはアデルの魔道具が役に立つ。記憶した動く映像を大勢の民を前に再生できる魔道具だ。視覚からの印象は又聞きのそれよりも強力に残るであろう。そして伝達の魔道具もだ。その魔具を持った者同士の間では、どれほどの距離があろうと会話が可能になる。これで離れた各地の決起も時期を合わせることが可能になる」
「アデルがそのような魔道具を…、いや他にも、何故スタンピードの発生を待たれる?かえって大変になるのではないのですかな?」
「伯爵の懸念はもっともなことだ。だがこれが最善と判断した。閣下はその瘴気ゆえこの地を離れ王都へ向かうことは出来ぬ。だが王は欲した力が手に入らぬと知れば必ずや閣下の御身を狙われるだろう。」
「閣下は確かにお強いが血を流しすぎれば死ぬ普通の肉体であられます。手段を問わねば手がないわけではない。」
「だがスタンピードの最中、このバーガンディの地に入ってくる馬鹿はおるまい。死地に出向くようなものだ。このスタンピードが閣下とこのバーガンディを守る結界代わりになってくれるだろうて。だからこそこの地バーガンディは閣下と第一部隊、そしてアデル様を信じて託し、我らは第二第三部隊を率い閣下の名代として王都へ参るのだ」
「なんと!アデルがスタンピードに参戦すると申しますか!か、閣下はそれを良しとするのですかな!?」

お父様の想いが胸にしみる。でも甘えてばかりはいられない。心配のあまり取り乱すお父様を僕は真剣に説得した。

「ねえお父様。僕を心配してくれてありがとう。でも僕はもうこのバーガンディの、グラナダ様の妻なんだよ。一時滞在の異邦人いせかいじんじゃない。みんなみんな覚悟を持ってこの計画を立ててくれた。それだって僕とグラナダ様の未来のためにだよ。それなのに言い出しっぺで当事者の僕がただ黙ってみてるなんてこと出来るはずないよ。」
「アデルや…」
「心配しないで、グラナダ様はきっと僕を守ってくれるし僕もグラナダ様を守る。最初からずっと決めてる事だから。グラナダ様は絶対僕が守るって!」

力強く宣言する僕をグラナダ様が背中から包みこんで眼の端にたまった涙をぬぐってくれる。そうしてお父様に言ってくれたんだ。


「アデルを失って生きてゆけぬのは私も同じだ。いや私の方がもっとだ。お義父上に誓おう。私は必ずアデルを守る。どんな危険からもだ。この先もずっと。これからの長い時を二人幸せに過ごす為にな。」

「閣下…信じて、信じてお任せいたしますぞ!」
「うむ、任せよ」
「…ですが父である私よりももっととは聞き捨てなりませんな…」


なんか変な争いが勃発した。














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