34 / 247
新生活順応編
新しい朝が来た
しおりを挟む
バーガンディの薄暗い夜明け。柔らかい布団の感触に頬ずりしながら目を覚ますとお手製のグラナダ様枕が目に入る。
「おはようグラナダ様♡」
枕を抱きしめながらその胸元に顔を寄せグリグリする。そのあとはほっぺにちゅぅ。ここまでが朝の儀式だよ。
「ほう、それはそのように使うものなのだな。新しい枕の使用方法か?」
「んなっ!」
背後からやけに楽しそうなイケボが聞こえる。
ギ…ギ…ギと音がするほどゆっかり振り返るとそこにはグラナダ様がいた。
お、同じベッドにグラナダ様がぁ!こんなこと!あっていいはずがない!
「ひ、ひぇ…」
ずりずりと離れようとするがそのたくましい腕にあっさりと捕まった。
笑顔をけしたグラナダ様は真顔になってベッドの上で座位をとる。そしてその前に僕を座らせた。こわ…これ今からお叱り受ける感じ?
「あっ、ダメだって言われてたのに、うぅ…勝手に名前で呼んですみません…で、でもこれは枕の名前でっ、へ、辺境伯様の事じゃありませんからっ」
グラナダ様は少し困った顔をして、でも名前呼びしたことを怒らなかった。
「そのように他人行儀な呼び方などしないでくれ…いや私が拒んだのだな…そんなたわいのない事まで…すまなかったアデル。本当に。何から詫びればいいのか…あぁ、どうかこれからは名前を呼んではくれないか。お前のその可憐な声で呼ばれたいのだグラナダと」
「かっ、可憐ではないですけど…良かった!あ、ありがとうございます嬉しいですグラナダ様」
推しが!推しが、名前呼びを許可してくれた!それに何だか…怒って、無い?
「…あの日もこうして…お前が目覚めるまで傍についていれば、目覚めたお前の話を聞いていれば…そうすればこんなにも長い時間を無駄にすることは無かった…」
「ぇえっと、僕は無駄な時間なんてちっとも過ごしていませんよ。毎日がとっても充実してました。」
「あのような仕打ちをうけてもか?優しいのだなアデルは。だが私にとってはアデルともっと有意義に過ごせたかもしれない時間だ。自ら不毛な時間にしてしまったがな」
グラナダ様がわかりやすく落ち込んでいる…あぅぅ…僕の事で推しにこんな顔をさせるわけにはいかないよ。
「誤解…があったのはわかりました。王様のことは濡れ衣です。でも、グラナダ様はがっかりしたんですよね…アデ…僕が嫌々ここに来たと思って。それで僕にちょっとあたっちゃったんですよね?ならもう大丈夫ですよ?僕は嫌々どころかウキウキここに居るから。むしろ命令で来たお嫁さんだから嫌なのかなって思ってて…僕が嫌われてるわけじゃなくてほっとしました。」
僕を推しを悲しませる戦犯にしないで~!
「あたったなどとそんなかわいいものではなかったであろう?邸中のみなまで巻き込んで…ひどいまねをした…」
「でも僕使用人さんたちのことはなんとも思ってないですよ。グラナダ様からの命令なんだろうなって思ってたし。主人の命には逆らえないですもんね」
「…弁明のしようもないな…」
「グラナダ様ほんとにいいんです。僕あの離れでいろんなこと出来て楽しかった。魔法の修行も、絵、描いたりとかも、そ、その追っかけも…。まぁもうちょっとファンサ、んんっ、愛想ふりまいてくれてもいいのにな、とは思いましたけど…贅沢な望みですもんね…」
「そのように卑下するのはよすのだ!ああ、それも私の過ちがそうさせたのか…だが、こんなに儚く見えるのに…強いのだなアデルは…」
儚く…?誰ですかそれ。僕は昔からお姉ちゃんにも『あんたは人間として雑』てよく言われてた。
「それより誤解が解けたならまたこっそり演習場に観に行ってもいいですか?僕剣を振るって汗を流すグラナダ様の姿が大好きで!」
「な!あぁいや、これからは堂々と来るがよい。わざわざ隠れて見ることもあるまい?」
グラナダ様の声がとってもとっても柔らかくなった。
「それよりもあのような酷い仕打ちを受け続けても私を嫌いにはならなかったのか?今までこの邸に押しかけて来た縁をのぞむ子息子女はあっという間に逃げ出し「まさかっ!冷酷なグラナダ様なんてあり寄りのありですよっ!」」
「しかし私は相当に酷い言葉も「あの冷たいまなざしに射抜かれるなんてむしろご褒美です!」」
食い気味に返事をする僕にちょっとひいてるグラナダ様もカッコよかった♡
「おはようグラナダ様♡」
枕を抱きしめながらその胸元に顔を寄せグリグリする。そのあとはほっぺにちゅぅ。ここまでが朝の儀式だよ。
「ほう、それはそのように使うものなのだな。新しい枕の使用方法か?」
「んなっ!」
背後からやけに楽しそうなイケボが聞こえる。
ギ…ギ…ギと音がするほどゆっかり振り返るとそこにはグラナダ様がいた。
お、同じベッドにグラナダ様がぁ!こんなこと!あっていいはずがない!
「ひ、ひぇ…」
ずりずりと離れようとするがそのたくましい腕にあっさりと捕まった。
笑顔をけしたグラナダ様は真顔になってベッドの上で座位をとる。そしてその前に僕を座らせた。こわ…これ今からお叱り受ける感じ?
「あっ、ダメだって言われてたのに、うぅ…勝手に名前で呼んですみません…で、でもこれは枕の名前でっ、へ、辺境伯様の事じゃありませんからっ」
グラナダ様は少し困った顔をして、でも名前呼びしたことを怒らなかった。
「そのように他人行儀な呼び方などしないでくれ…いや私が拒んだのだな…そんなたわいのない事まで…すまなかったアデル。本当に。何から詫びればいいのか…あぁ、どうかこれからは名前を呼んではくれないか。お前のその可憐な声で呼ばれたいのだグラナダと」
「かっ、可憐ではないですけど…良かった!あ、ありがとうございます嬉しいですグラナダ様」
推しが!推しが、名前呼びを許可してくれた!それに何だか…怒って、無い?
「…あの日もこうして…お前が目覚めるまで傍についていれば、目覚めたお前の話を聞いていれば…そうすればこんなにも長い時間を無駄にすることは無かった…」
「ぇえっと、僕は無駄な時間なんてちっとも過ごしていませんよ。毎日がとっても充実してました。」
「あのような仕打ちをうけてもか?優しいのだなアデルは。だが私にとってはアデルともっと有意義に過ごせたかもしれない時間だ。自ら不毛な時間にしてしまったがな」
グラナダ様がわかりやすく落ち込んでいる…あぅぅ…僕の事で推しにこんな顔をさせるわけにはいかないよ。
「誤解…があったのはわかりました。王様のことは濡れ衣です。でも、グラナダ様はがっかりしたんですよね…アデ…僕が嫌々ここに来たと思って。それで僕にちょっとあたっちゃったんですよね?ならもう大丈夫ですよ?僕は嫌々どころかウキウキここに居るから。むしろ命令で来たお嫁さんだから嫌なのかなって思ってて…僕が嫌われてるわけじゃなくてほっとしました。」
僕を推しを悲しませる戦犯にしないで~!
「あたったなどとそんなかわいいものではなかったであろう?邸中のみなまで巻き込んで…ひどいまねをした…」
「でも僕使用人さんたちのことはなんとも思ってないですよ。グラナダ様からの命令なんだろうなって思ってたし。主人の命には逆らえないですもんね」
「…弁明のしようもないな…」
「グラナダ様ほんとにいいんです。僕あの離れでいろんなこと出来て楽しかった。魔法の修行も、絵、描いたりとかも、そ、その追っかけも…。まぁもうちょっとファンサ、んんっ、愛想ふりまいてくれてもいいのにな、とは思いましたけど…贅沢な望みですもんね…」
「そのように卑下するのはよすのだ!ああ、それも私の過ちがそうさせたのか…だが、こんなに儚く見えるのに…強いのだなアデルは…」
儚く…?誰ですかそれ。僕は昔からお姉ちゃんにも『あんたは人間として雑』てよく言われてた。
「それより誤解が解けたならまたこっそり演習場に観に行ってもいいですか?僕剣を振るって汗を流すグラナダ様の姿が大好きで!」
「な!あぁいや、これからは堂々と来るがよい。わざわざ隠れて見ることもあるまい?」
グラナダ様の声がとってもとっても柔らかくなった。
「それよりもあのような酷い仕打ちを受け続けても私を嫌いにはならなかったのか?今までこの邸に押しかけて来た縁をのぞむ子息子女はあっという間に逃げ出し「まさかっ!冷酷なグラナダ様なんてあり寄りのありですよっ!」」
「しかし私は相当に酷い言葉も「あの冷たいまなざしに射抜かれるなんてむしろご褒美です!」」
食い気味に返事をする僕にちょっとひいてるグラナダ様もカッコよかった♡
474
お気に入りに追加
3,294
あなたにおすすめの小説
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる