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推し活満喫編

アデルの正体?グラナダ視点

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アデルが嫁いできてから半月ほどが過ぎようとしている。いまだ逃げ出す気配はない。どういうことだ?
トマスに様子を探らせたが身の回りのことは自分でこなしていると報告を受けた。
食糧庫へ行っては野菜や果物、干し肉、スパイス類を離宮に運び入れ器用に調理しているらしい。
ほうきや雑巾で掃除している姿も確認したと言っていた。
調理ができるのか⁉まさか伯爵家の息子が?いくら田舎の貧乏貴族といってもそれはないだろう。もしや、使用人にも困るほど困窮していたというのか?
……伯爵家の貧しさは私の予測をはるかに超えていたようだ。

それにしてもアデルの行動がさっぱり理解出来ない。
私の周りを常にうろついていることは確かだ。
どこにいても視線を感じる。もの言いたげにじっと私を視ている。毎日いる。場所を変えてもいつの間にか現れる。
気に留めれば増長させると思い彼がそこに居ないかのようにふるまっているが日に日にその存在感が増している気がする。
部下にも関わらないよう再三言い含め徹底させているが、誰も何も言わないのをいいことにどこへでも現れる。出現場所は増加の一途だ。
だからと言って何をするでもなく何かを言ってくることもない。文句の一つもあるだろうにそれすらも訴えてこない。
常に一定の距離を開け、まばたきもせず、声にもならないほど小さく何かをつぶやきながらじっと視ているだけだ…



そんな日が続いたある夜、不意に妙な考えが頭をよぎった。

もしや彼は王であるドノヴァン兄上より遣わされた間者なのではあるまいな?もしかして私を探っているのか?凡庸なカマーフィールド伯爵の印象ですっかり騙されたがアデルは子を生す以外にそんな密命を受けていたのか?
きっとそうなのだろう。それ以外に逃げ出しもせず私の周りをこれほどうろつく理由がない。

一度そんな考えが浮かぶともうそうとしか思えなくなってくるものだ。
まあ探るにしてももう少しやりようがあるだろうとは思うが…
隠れるわけでもなく、邪魔にならない位置ではあるが堂々と、そしてしっかり凝視してくる。新たな諜報スタイルなの…か?
……なんにしても彼が間者なのであれば今すぐ追い出すこともできまい。せっかく鎮火した簒奪の疑念を再び王に抱かせるわけにはいかない。
なぁに、調べられて困ることなど新妻の寝所を訪れていないこと以外何もない。
もしそのことを問われたら幼い妻を怖がらせないよう時間をかけていると言っておけばいいことだ。
だが、彼が王の間者であるならばなんらかの対策が必要だな。まったくわずらわしい事だ。


私は王都にいる兄に向けて呪詛をはきながらその晩眠りについた。


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