イケメン大好きドルオタは異世界でも推し活する

推し活満喫編

推し事の始まり

人を探して邸内をうろつく僕。
このお屋敷…外も中も清掃行き届いているのになんだか暗い。灯りのせいじゃなくこれって雰囲気的なものだよね。
つくづく魔王城みたいじゃん。けどグラナダ様の深い海の底のようなダークブルーの髪色にはすごく合う。良き。
ゴシック様式な調度品に囲まれたこの廊下に立つグラナダ様を想像しただけで顔が熱くなる。
うぅ…見たい！会いたい！何処にいるの～。

そうして徘徊していると兵士さんたちとは違う僕にもなじみのある服装の温和そうなおじ様に遭遇した。
こっ、これは執事⁉執事ですかっ！だってどう見たってセバスって感じだもん。絶対そう！萌える！
心の中でクラッカーを鳴らしながら愛想よく話しかけた。

「すみません執事の方ですか？僕はこの度辺境伯様のもとにお嫁入りしたアデルです。あらためてご挨拶したいのですがどこに行ったらお会いできますか？」

執事のおじ様は少し逡巡した後、やさしく微笑み

「私は執事ではなく家令のトマスと申しますアデル様。以後お見知りおきを。到着時お会いしておりますので自己紹介は必要ありませんよ。だんな様はただいま執務室でお仕事をされておいでですので会うことは叶わないかと。アデル様に関してはすべて好きにさせよと使用人には通達がいっております。挨拶など気にされずどうぞご自由にお過ごしくださいませ。」

カレイって何だろう？執事の上位互換的な？でもここで聞いたらまずいのはなんとなくわかるからスルーすることにした。
っていうか、丁寧だけど返事になってなくない？困ったな…でもまぁ自由にしていいって言質は取ったし…

「…とりあえず行ってみるので執務室の場所教えてください」







どうしてこの屋敷の人は誰一人付いて来てくれないんだろう。初めての場所なのに案内とかしてくれないのかな？
気が利かないなぁ…でもどうやらここ女の人居ないみたいだし男所帯だとこんなもんなのかなぁ？あー、男ばっかだとそういうとこあるよね。そうだよ日本にいた時も、男友達んとこ遊びに行くとたいてい「なんか持ってくるからテキトーにしててー」って言って結構な時間放っとかれてたよね。って、なんか納得してたら執務室に無事到着。

ドアの横には護衛の人が立ってる。すごい真顔だからヘラヘラ話しかけるのはないなと思い、軽くお辞儀をして僕もその近くに待機することにした。

んっ？
この感じどこかで…
既視感…

あーっっ‼出待ちだよこれ！
ライブハウスの搬入口でメンバーでてくるの待ってた時！
テレビの収録終わりに出入り口で待ってた時！
近づきすぎると警備員さんに追い払われるから怒られないぎりぎりの距離を見極めて今か今かと待ってたあの日。
まさに今がそのものだと気付いたら急激にテンションが上がってきた！
今！僕！推し活してるっ！

今はもう戻れないあの日々の喜びを思い出したら急激に活力が漲みなぎってきた。