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148 断罪と最後のイベント
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特に何が起こるわけでもなく時刻はすでに夜。
この会、つまり成人式の二次会は延々夜中まで行われる。そのうえこれといって終了時間が決められていない。恐るべし貴族の体力気力。やっぱりあのクソ重たい衣装が日々の筋トレになっているんだろうか?
「シャノン様、少しよろしいですか」
「あ、ヘクター様」
「会が始まる前ですが…ホールにシャノン様の姿が無いと幾人かの者が騒いでおりましたがあれは一体…」
「ああ、あれですか」
どうせ隠していても仕方ないことだし、僕はフレッチャーに呼び止められ小部屋で話をしたことを報告した。
「何と迂闊な事を!何かあったらどうするつもりだったんですか!」
コ、コワー…
ヘクターはいつもこうだ。そもそもアレイスターに対してもけっこう辛辣だし。
「け、けどどうせ言っても引かないだろうし…、嫌なことは早めに済ませとこうと思って。騎士様もいたし」
「はー…、あの騎士はフレッチャー家の騎士です。あの小部屋は元々出仕時のアーロンに割り当てられていた部屋ですから。後見であったフレッチャーが今でも王に許可を得て使用しているのですよ。ご存じなかったんですか?」
ジワリと広がる背中の汗…。僕はいつの間にかアーロンの控室に入っていたらしい。
「何が仕掛けられているか分かったのもではないというのに、浅慮な…。まあ…いくらフレッチャー候でも成人の儀が行われている王宮内で騒ぎは起こさないでしょうが。あの男はそういう面で抜かりが無いですから」
「そ、そーだよね」
危なかった…
「ああそうそう」
「ん?何ですか」
「アレイスターがあなたに忘れ物を渡したいそうです。やれやれ、大胆になったものだ。…第三宮の地下で待つと仰せですよ」
ポ…「あ、あそ、そう。分かりました…」
っていうか学院で渡してくれたら良かったじゃん。アレイスターめ…
勝手知ったる地下通路。といってもコンラッドの手引きでしか使えないけどね。何故かこの件に関して寛大なコンラッドは快く地下通路の入り口まで案内してくれたのだが。
「いいか。私が誤魔化せるのは一時間までだ。それまでにここへ戻ってきて欲しい」
「なんて誤魔化すんですか?」
「アーロンに誕生祝いの返礼を渡しに行ったと」
コンラッドにしちゃ気が利く言い訳だな。
確かに誕生日前日、学院の下校時に僕はアーロンからプレゼントを渡された。それは以前コンラッドに貰ったという小さなブローチ。貰い物の流用はいかがなものかと思うのだが…物質に固執しないのもアーロンらしい。コンラッドには気の毒だけどこれぞアーロンって感じ。
「わかりました。すぐ戻ります」
あれ?そう言えばさっきの話って…
地下通路を歩きながらふと思った。事実はさておき、期せずして僕はアーロンからコンラッドの物を奪い代わりのものを渡したことになるんだな、と。
ゾゾッ!タラリと伝わる背中の汗。着々と埋められるイベント内容。じゃあどっかからルビーも出現すんの?ノベルゲーの強制力ってマジ怖い。僕は心の中で、伝統的男性用アンダーウェアの紐を結び直した。
ギギギ…
重たい石の隠し扉を開けると、そこにはアレイスターがすでに待機していた。
アレイスターとコンラッドは成人の儀には参加していない。王子である彼らには国教会で専用の儀式があるのだ。
なので二次会にも参加しないアレイスターは今日も静かに第三宮で北部の統治計画を練っていたようだ。けど、それにしては式典にでも出席したかのような正装だ。
「その恰好…どこかに出かけてたんですか?」
「いいや。大切な話は正装で、そう思ってね」
大切な話…、頭をよぎるのは先日のプロポーズ。え…?まさか返事を聞かせろって?忘れ物ってそういうこと?…急がないって言ったのに…
「こちらにシャノン。少しなら大丈夫なのだろう?第三宮の裏庭は最奥になる。誰の目も心配いらない」
ドキドキドキ…「え…?あの?あ、ちょっと!」
少し強引に手を引くアレイスター。十年後のプロポーズを聞いた後だしちょっと手を取られるだけのことが妙に恥ずかしい…
連れていかれたのは第三宮の裏手にある小さなパティオ。ここは建物自体がコの字型で、最奥の裏庭は中庭とも言える作りだ。多分王様が誰の目にも触れず、思う存分第三側妃様とイチャイチャするための仕様なんだろう。
イチャイチャ…ぐあぁー!いちいち考えんな自分!
なのにそこに置かれた石のベンチに腰掛ける灰色の髪のクールな王子は、プロポーズまでしたくせにチラッともこっち見ない…人をこれだけ落ち着かない気分にさせといてひどくない?こっち見ろ!
「それで?エンブリー卿に求婚はしたのかい?」
ガタっ!「な、何故それを!」
っていうか、聞く?それ…
この会、つまり成人式の二次会は延々夜中まで行われる。そのうえこれといって終了時間が決められていない。恐るべし貴族の体力気力。やっぱりあのクソ重たい衣装が日々の筋トレになっているんだろうか?
「シャノン様、少しよろしいですか」
「あ、ヘクター様」
「会が始まる前ですが…ホールにシャノン様の姿が無いと幾人かの者が騒いでおりましたがあれは一体…」
「ああ、あれですか」
どうせ隠していても仕方ないことだし、僕はフレッチャーに呼び止められ小部屋で話をしたことを報告した。
「何と迂闊な事を!何かあったらどうするつもりだったんですか!」
コ、コワー…
ヘクターはいつもこうだ。そもそもアレイスターに対してもけっこう辛辣だし。
「け、けどどうせ言っても引かないだろうし…、嫌なことは早めに済ませとこうと思って。騎士様もいたし」
「はー…、あの騎士はフレッチャー家の騎士です。あの小部屋は元々出仕時のアーロンに割り当てられていた部屋ですから。後見であったフレッチャーが今でも王に許可を得て使用しているのですよ。ご存じなかったんですか?」
ジワリと広がる背中の汗…。僕はいつの間にかアーロンの控室に入っていたらしい。
「何が仕掛けられているか分かったのもではないというのに、浅慮な…。まあ…いくらフレッチャー候でも成人の儀が行われている王宮内で騒ぎは起こさないでしょうが。あの男はそういう面で抜かりが無いですから」
「そ、そーだよね」
危なかった…
「ああそうそう」
「ん?何ですか」
「アレイスターがあなたに忘れ物を渡したいそうです。やれやれ、大胆になったものだ。…第三宮の地下で待つと仰せですよ」
ポ…「あ、あそ、そう。分かりました…」
っていうか学院で渡してくれたら良かったじゃん。アレイスターめ…
勝手知ったる地下通路。といってもコンラッドの手引きでしか使えないけどね。何故かこの件に関して寛大なコンラッドは快く地下通路の入り口まで案内してくれたのだが。
「いいか。私が誤魔化せるのは一時間までだ。それまでにここへ戻ってきて欲しい」
「なんて誤魔化すんですか?」
「アーロンに誕生祝いの返礼を渡しに行ったと」
コンラッドにしちゃ気が利く言い訳だな。
確かに誕生日前日、学院の下校時に僕はアーロンからプレゼントを渡された。それは以前コンラッドに貰ったという小さなブローチ。貰い物の流用はいかがなものかと思うのだが…物質に固執しないのもアーロンらしい。コンラッドには気の毒だけどこれぞアーロンって感じ。
「わかりました。すぐ戻ります」
あれ?そう言えばさっきの話って…
地下通路を歩きながらふと思った。事実はさておき、期せずして僕はアーロンからコンラッドの物を奪い代わりのものを渡したことになるんだな、と。
ゾゾッ!タラリと伝わる背中の汗。着々と埋められるイベント内容。じゃあどっかからルビーも出現すんの?ノベルゲーの強制力ってマジ怖い。僕は心の中で、伝統的男性用アンダーウェアの紐を結び直した。
ギギギ…
重たい石の隠し扉を開けると、そこにはアレイスターがすでに待機していた。
アレイスターとコンラッドは成人の儀には参加していない。王子である彼らには国教会で専用の儀式があるのだ。
なので二次会にも参加しないアレイスターは今日も静かに第三宮で北部の統治計画を練っていたようだ。けど、それにしては式典にでも出席したかのような正装だ。
「その恰好…どこかに出かけてたんですか?」
「いいや。大切な話は正装で、そう思ってね」
大切な話…、頭をよぎるのは先日のプロポーズ。え…?まさか返事を聞かせろって?忘れ物ってそういうこと?…急がないって言ったのに…
「こちらにシャノン。少しなら大丈夫なのだろう?第三宮の裏庭は最奥になる。誰の目も心配いらない」
ドキドキドキ…「え…?あの?あ、ちょっと!」
少し強引に手を引くアレイスター。十年後のプロポーズを聞いた後だしちょっと手を取られるだけのことが妙に恥ずかしい…
連れていかれたのは第三宮の裏手にある小さなパティオ。ここは建物自体がコの字型で、最奥の裏庭は中庭とも言える作りだ。多分王様が誰の目にも触れず、思う存分第三側妃様とイチャイチャするための仕様なんだろう。
イチャイチャ…ぐあぁー!いちいち考えんな自分!
なのにそこに置かれた石のベンチに腰掛ける灰色の髪のクールな王子は、プロポーズまでしたくせにチラッともこっち見ない…人をこれだけ落ち着かない気分にさせといてひどくない?こっち見ろ!
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