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アレイスター
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「シャノン」
「あ、アレイスター様」
「コンラッドと庭園に居たのか」
「ええまあ。初めて入りましたけどね。あそこに。王妃様の奥庭ほどじゃないですけど良かったですよ。…多分」
「多分?二人で散策を楽しんだのではないのかい」
我ながら嫌な聞き方をする。私がコンラッドに対し抱く感情などシャノンには関係ないというのに。
だが、今まで形式的でしかなかったコンラッドの振舞いが変化したのは確かだ。彼のシャノンを見つめる視線からは何かが感じられ、それが私をひどく焦らすのだ。
「ちょっと込み入った話してて風景を楽しむ心の余裕が…」
「込み入った話…?聞いていいだろうか?何を話していた?」
甘い雰囲気を感じさせぬ物言いに安堵している私が居る。だがこのままならいずれにしてもシャノンは第一王子妃、あの、町娘の服を着てくるくると回った無邪気な笑顔を取り戻すことは叶わなくなる…
だがその返答は私の杞憂を示していた。彼らは想像以上に深刻な話をしていたようだ…
「えー…コンラッド様が道を外れまして…僕の思ってるのと違う王道を目指そうとしていたのでちょっと修正を」
これは…私が聞いても良い話なのだろうか?
シャノンはいつも端的な物言いをする。それは王宮でその姿を見かけ始めた、まだ幼い頃から変わらない。彼の考えは熟考を重ねた慎重なもので、安易に人を先導しない。
それゆえに踏み込むべきかどうか躊躇していたところ、彼は私の様子を察し、やはり最低限の言葉を続ける。
「別れちゃイケマセンからね。それだけは阻止しないと…」
「分かれては駄目だと、そう言うのかい?」
「別れるんじゃなくて…き、き、共同?共有?とにかく、一旦役割り分担してお互いのストレージを犯さなければ、今は上手くやれると思うんですよ」
シャノンの語りには往々にして異国の言葉が混ざる。恐らく宮廷内の目や耳を警戒してのことだろうが。
「ストレージ…?」
「え?ああ。領域の事です」
そう…か!いたずらに国を二分するのではなく、役割を明確にし領域を分け互いに尊重しあえというのがシャノンの考えか!
私を悩ませ続けた大きな問題。それは王に反旗を翻し、本当に革命への道を突き進んでも良いのか、ということだ。それは誰にとっても大きな痛みを伴う。とりわけ私の愛する人たちが…。
王のやり方に異を唱えることは王妃アドリアナ様の不興を買う。それはシャノンにとって、あまり喜ばしいことではないだろう。アドリアナ様はシャノンにとって母代わり、敵対させるのは本意でない。
そしてもう一つ。母は王を心から愛している。その愛すべき王と剣を交えるようなことはなんとしても避けたい、それが私を鈍らせてきた。が…
共同統治、ようやく私が推し進めるべき道が見えた。
「あ、アレイスター様」
「コンラッドと庭園に居たのか」
「ええまあ。初めて入りましたけどね。あそこに。王妃様の奥庭ほどじゃないですけど良かったですよ。…多分」
「多分?二人で散策を楽しんだのではないのかい」
我ながら嫌な聞き方をする。私がコンラッドに対し抱く感情などシャノンには関係ないというのに。
だが、今まで形式的でしかなかったコンラッドの振舞いが変化したのは確かだ。彼のシャノンを見つめる視線からは何かが感じられ、それが私をひどく焦らすのだ。
「ちょっと込み入った話してて風景を楽しむ心の余裕が…」
「込み入った話…?聞いていいだろうか?何を話していた?」
甘い雰囲気を感じさせぬ物言いに安堵している私が居る。だがこのままならいずれにしてもシャノンは第一王子妃、あの、町娘の服を着てくるくると回った無邪気な笑顔を取り戻すことは叶わなくなる…
だがその返答は私の杞憂を示していた。彼らは想像以上に深刻な話をしていたようだ…
「えー…コンラッド様が道を外れまして…僕の思ってるのと違う王道を目指そうとしていたのでちょっと修正を」
これは…私が聞いても良い話なのだろうか?
シャノンはいつも端的な物言いをする。それは王宮でその姿を見かけ始めた、まだ幼い頃から変わらない。彼の考えは熟考を重ねた慎重なもので、安易に人を先導しない。
それゆえに踏み込むべきかどうか躊躇していたところ、彼は私の様子を察し、やはり最低限の言葉を続ける。
「別れちゃイケマセンからね。それだけは阻止しないと…」
「分かれては駄目だと、そう言うのかい?」
「別れるんじゃなくて…き、き、共同?共有?とにかく、一旦役割り分担してお互いのストレージを犯さなければ、今は上手くやれると思うんですよ」
シャノンの語りには往々にして異国の言葉が混ざる。恐らく宮廷内の目や耳を警戒してのことだろうが。
「ストレージ…?」
「え?ああ。領域の事です」
そう…か!いたずらに国を二分するのではなく、役割を明確にし領域を分け互いに尊重しあえというのがシャノンの考えか!
私を悩ませ続けた大きな問題。それは王に反旗を翻し、本当に革命への道を突き進んでも良いのか、ということだ。それは誰にとっても大きな痛みを伴う。とりわけ私の愛する人たちが…。
王のやり方に異を唱えることは王妃アドリアナ様の不興を買う。それはシャノンにとって、あまり喜ばしいことではないだろう。アドリアナ様はシャノンにとって母代わり、敵対させるのは本意でない。
そしてもう一つ。母は王を心から愛している。その愛すべき王と剣を交えるようなことはなんとしても避けたい、それが私を鈍らせてきた。が…
共同統治、ようやく私が推し進めるべき道が見えた。
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