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1 僕の正体
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知らなかった。天国にもお布団ってあるんだな…。
そんなバカみたいなこと考えながら目を覚ますと、そこは天国どころかどう考えてもフカフカのベッドで…、窓から見える景色は見たことも無い景色で、この部屋も見たこと無いような部屋で…、何もかもが分からな過ぎて、僕は少々混乱気味…。
「ここどこ…?どうして天国じゃないの?だって僕は車に…って、布団って何!?何かおかしい…」
その時ドアから顔を覗かせたのは、おっきい目の優しそうな…若い男の人…誰!?
「あれ?気が付いたの?ああ良かった…。随分目覚めないから心配したんだよ。ちょっと待って。すぐにドクター呼んでくるから」
「あ、待って!…行っちゃった…。でもなんか変…」
ドクターって事はやっぱりここは病院…?僕は何処に運び込まれちゃったの…?
気持ちが不安に塗りつぶされそうになったその時、もう一度扉が開いて入って来たのは3人の男の人。
一人は中年の男性。もう一人は若くて背の高い、少し目の吊り上がった人、そしてもう一人がさっきのおっきい目の彼だ。
「おやおや。沈んだ顔をして、もしや気分がすぐれないのかね?」
「ねぇ君、この方は村のドクターだよ。もう安心して大丈夫だからね。」
「それより何があったか話してくれるか?あんなところにあんな姿で…、賊にでもやられたなら警戒が要る」
話せ…?話せって僕に言ってるの?それ本気?話せって言うなら話すけど…、正気?
オロオロする僕を見かねておっきい目の人が口を開く。
「えーっと、じゃぁとりあえず名を名乗ろうか?僕の名はマシュー。そしてこっちが僕の愛する旦那様で君を助けて連れてきたレイね。僕たちはこの村で軽食屋『とまり木』を営む夫夫だよ。さ、君の名は?」
ゴクリ…「ルーイ…」
「それじゃあルーイ、君は誰?どこから来たの?ご家族に連絡はとれそう?」
つ、通じた…。えっ?えっ?どど、どうして?
突っ込みどころは他にもあるけど分からない事が多すぎて…何をどうすればいいのか…。ああ…混乱続行中。
でも言葉が通じるなら聞いてみようかな?
「えっと…、逆にその、僕はどこにどんな状態で倒れてたの?あ、あの、僕…」
「どうしたの?」
「ぼ、僕…、どうしてここに居るのか全然分からないんだけど…あの…、驚かないでね。実は僕ハムスターで…」
「そんなの見ればわかるよ。それより君記憶が無いの?」
慌てたドクターが次から次へと質問を投げかけて来るけど名前以外何も答えられやしない…。って言うか、質問したいのはこっちなんだけど。
そう。僕の名はルーイ。日本のある地方の、なんてことないごく普通のご家庭の小さなケージで飼われていたごく普通のゴールデンハムスターである。
あれはカーテンを揺らす風が心地いいある晴れた日のことだった。僕はご機嫌で回し車をカラカラまわしてた。最近エンムギ食べ過ぎてメタボ気味だから気をつけなくちゃと思って。
そうしたら僕の天敵である飼い主の息子、3歳のユウタがケージの前までやってきたんだ。僕は「ゲッ」っと思いながら巣箱の奥に身をひそめた。
その部屋はユウタのお兄ちゃんのソウタの部屋。ソウタはショウガクセイだからお昼はガッコウに行っている。僕が一人でのんびりできる憩いの時間に何故ユウタが…。
そうしたらユウタは扉をガチャガチャし始めて…、「万事休す…」と思った時、ママがユウタを「お兄ちゃんの部屋に入っちゃだめよ!」って言って部屋の外へ連れて行ってくれた。
ホッとして扉を見たら…なんと!ケージの鍵が外れて扉が半分開いてた。
今日はお天気。空は真っ青。外ではスズメがチュンチュン鳴いている。それで僕は嬉しくなって、「こんなチャンス二度とない!」そう意気込んで自由なる世界に向かって思いっきり飛び出したんだ!
そこには部屋の中で見たことないようなでっかくて四角い、パパが病院に連れて行ってくれる時にいつも乗せてくれる〝クルマ”がいっぱいあって…
気が付いたら僕の目の前は真っ暗になっていた…。
そして現在に至る…。つまり、何が何やら…。
どうして人間に僕の言葉が通じるの?
どうして僕の視界に入る僕の手はママやパパと同じ人間の手なの?
僕が横たわるのはソウタと同じ、ベッドとお布団…。慣れ親しんだ巣箱もオガクズも…どこにも無い…。
覗き込まれるのには慣れてるつもりだったけど…こんなに見られたら…僕ちびっちゃう…。
「ああそうか。人間ばかりで怖いんだね。大丈夫だよ。安心して」
マシューって言ったおっきい目の人が頭にかぶった帽子を脱ぐと…、その頭には茶色くて小さな耳がついていた…。
「ルーイとお揃いだね。よく似てる。けど僕にはね…ほら、君にはない尻尾があるんだよ。僕はリス。リスの獣人。前歯の大きな君の仲間だよ。こっちの二人は人間だけど僕たちをいじめたりしない。安心した?」
君とお揃い…、よく似てる…、君の仲間…。つまり今僕の頭…というか顔もあんな風に耳の付いた人間みたいになってるっていうこと?獣人って言うのか…。っていうか獣人って何?動物と人間のミックスってこと?
僕は布団の中でそっと自分のお尻を触った。あ…お尻にあったちっちゃな尻尾が無くなっちゃった…。
そんなバカみたいなこと考えながら目を覚ますと、そこは天国どころかどう考えてもフカフカのベッドで…、窓から見える景色は見たことも無い景色で、この部屋も見たこと無いような部屋で…、何もかもが分からな過ぎて、僕は少々混乱気味…。
「ここどこ…?どうして天国じゃないの?だって僕は車に…って、布団って何!?何かおかしい…」
その時ドアから顔を覗かせたのは、おっきい目の優しそうな…若い男の人…誰!?
「あれ?気が付いたの?ああ良かった…。随分目覚めないから心配したんだよ。ちょっと待って。すぐにドクター呼んでくるから」
「あ、待って!…行っちゃった…。でもなんか変…」
ドクターって事はやっぱりここは病院…?僕は何処に運び込まれちゃったの…?
気持ちが不安に塗りつぶされそうになったその時、もう一度扉が開いて入って来たのは3人の男の人。
一人は中年の男性。もう一人は若くて背の高い、少し目の吊り上がった人、そしてもう一人がさっきのおっきい目の彼だ。
「おやおや。沈んだ顔をして、もしや気分がすぐれないのかね?」
「ねぇ君、この方は村のドクターだよ。もう安心して大丈夫だからね。」
「それより何があったか話してくれるか?あんなところにあんな姿で…、賊にでもやられたなら警戒が要る」
話せ…?話せって僕に言ってるの?それ本気?話せって言うなら話すけど…、正気?
オロオロする僕を見かねておっきい目の人が口を開く。
「えーっと、じゃぁとりあえず名を名乗ろうか?僕の名はマシュー。そしてこっちが僕の愛する旦那様で君を助けて連れてきたレイね。僕たちはこの村で軽食屋『とまり木』を営む夫夫だよ。さ、君の名は?」
ゴクリ…「ルーイ…」
「それじゃあルーイ、君は誰?どこから来たの?ご家族に連絡はとれそう?」
つ、通じた…。えっ?えっ?どど、どうして?
突っ込みどころは他にもあるけど分からない事が多すぎて…何をどうすればいいのか…。ああ…混乱続行中。
でも言葉が通じるなら聞いてみようかな?
「えっと…、逆にその、僕はどこにどんな状態で倒れてたの?あ、あの、僕…」
「どうしたの?」
「ぼ、僕…、どうしてここに居るのか全然分からないんだけど…あの…、驚かないでね。実は僕ハムスターで…」
「そんなの見ればわかるよ。それより君記憶が無いの?」
慌てたドクターが次から次へと質問を投げかけて来るけど名前以外何も答えられやしない…。って言うか、質問したいのはこっちなんだけど。
そう。僕の名はルーイ。日本のある地方の、なんてことないごく普通のご家庭の小さなケージで飼われていたごく普通のゴールデンハムスターである。
あれはカーテンを揺らす風が心地いいある晴れた日のことだった。僕はご機嫌で回し車をカラカラまわしてた。最近エンムギ食べ過ぎてメタボ気味だから気をつけなくちゃと思って。
そうしたら僕の天敵である飼い主の息子、3歳のユウタがケージの前までやってきたんだ。僕は「ゲッ」っと思いながら巣箱の奥に身をひそめた。
その部屋はユウタのお兄ちゃんのソウタの部屋。ソウタはショウガクセイだからお昼はガッコウに行っている。僕が一人でのんびりできる憩いの時間に何故ユウタが…。
そうしたらユウタは扉をガチャガチャし始めて…、「万事休す…」と思った時、ママがユウタを「お兄ちゃんの部屋に入っちゃだめよ!」って言って部屋の外へ連れて行ってくれた。
ホッとして扉を見たら…なんと!ケージの鍵が外れて扉が半分開いてた。
今日はお天気。空は真っ青。外ではスズメがチュンチュン鳴いている。それで僕は嬉しくなって、「こんなチャンス二度とない!」そう意気込んで自由なる世界に向かって思いっきり飛び出したんだ!
そこには部屋の中で見たことないようなでっかくて四角い、パパが病院に連れて行ってくれる時にいつも乗せてくれる〝クルマ”がいっぱいあって…
気が付いたら僕の目の前は真っ暗になっていた…。
そして現在に至る…。つまり、何が何やら…。
どうして人間に僕の言葉が通じるの?
どうして僕の視界に入る僕の手はママやパパと同じ人間の手なの?
僕が横たわるのはソウタと同じ、ベッドとお布団…。慣れ親しんだ巣箱もオガクズも…どこにも無い…。
覗き込まれるのには慣れてるつもりだったけど…こんなに見られたら…僕ちびっちゃう…。
「ああそうか。人間ばかりで怖いんだね。大丈夫だよ。安心して」
マシューって言ったおっきい目の人が頭にかぶった帽子を脱ぐと…、その頭には茶色くて小さな耳がついていた…。
「ルーイとお揃いだね。よく似てる。けど僕にはね…ほら、君にはない尻尾があるんだよ。僕はリス。リスの獣人。前歯の大きな君の仲間だよ。こっちの二人は人間だけど僕たちをいじめたりしない。安心した?」
君とお揃い…、よく似てる…、君の仲間…。つまり今僕の頭…というか顔もあんな風に耳の付いた人間みたいになってるっていうこと?獣人って言うのか…。っていうか獣人って何?動物と人間のミックスってこと?
僕は布団の中でそっと自分のお尻を触った。あ…お尻にあったちっちゃな尻尾が無くなっちゃった…。
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