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第二夜

戦いの幕開け

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『 無事、二日目の朝を迎えることが出来た皆様、おめでとうございます。会議ホールにてこれよりルール詳細及び、犠牲者、砂浜球太様の処遇について説明させて頂きます。早急に議席に着いてください。』

.......求めていた情報は、求めている結果にはならないことを悟る。処遇。俺はその重苦しい響きに彼の身に希望など無いことを静かに感じ取った。

 .......それでも前に進まなければ、自分が自分ではいられない。俺はゆっくりと球太の部屋の扉から離れた。背を向けて、中央テーブルに歩む。

 ああ、どうやら俺も積極的に参加せざる負えないみたいだ。必ずあいつの恐怖を、痛みを、狼に、そして誘拐犯共に味わせてやる。俺は決意を胸に、自室の前の椅子を引いた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 円形の会議テーブルに集まったのは九人。それぞれ部屋の前にあった椅子に座っている。端から九個しかなかった椅子に空席は一つもなく、傍から見れば脱落者がまだ出ていないかのようだ。.......球太の部屋の前を避ける様に椅子が配置されている。昨日はそうじゃなかったから、今日位置を変えたのだろう。

 皆、一言も発さない。何かと事ある毎に突っかかっていた赤髪の彼も、終始テーブルを睨みつけている。

『人狼の処刑。これから皆様には人狼と思わしき人物を投票によって探し出して頂きます。円卓の中央にございます砂時計が落ちきるまでに自由に議論し、その後で順番に投票して下さい。』

 重い沈黙を破った機械音は淡々とこのゲームのルールを説明する。確かに円卓の中心には昨日には無かった2リットルペットボトル位の大きな砂時計があった。金属製で機械的だ。もしかしたら自動でひっくり返せるのかもしれない。

『なお公正を期すため、投票順は毎回完全にランダムで選ばせていただきます。選ばれた方を最初に時計回りで投票。投票の前には指名した一人に質問をして頂くことも可能です。』

「.......腐ってやがる」

 再び沈黙が流れた後赤髪の彼はそう吐き捨てたが、淡々と説明を続ける機械音は何も意に介さない。

『砂時計が反対になった時点で会議スタートです。では.......』

「待てよ」

俺は静かなホールに鋭い声を上げた。

「“処刑”って」

視線が集まるのを感じる。

「処刑って何だ。説明しろよ」

俺はできるだけ冷静に話した。怒りを喉の奥で押し殺す。

『今日の処刑をご覧になれば分かるかと。ただし死ぬことはありませんので、ご安心下さい』

俺は円卓を思い切り叩いた。大理石の硬さが骨を揺らす。

「.......ふざ、けるな。なら、あいつはどうなった」

『それも、今日の処刑時に説明いたします』

冷淡な声。くそ、開放されたって、言えよ。そう、盲目的に信じたい。だけど、そうじゃない事は経験が知っていた。

「“処置”を説明するんだろ、はぐらかさないで早く言えよ!」

 立ち上がった俺は怒鳴った。だけど声量で声の震えは誤魔化せなかった。処置、それが解放を意味しないことくらい、俺にだって分かっていたから。

『今日処刑を“見ていれば”分かることでしょう。それと、顔と名前が一致していない方もいらっしゃるかと思われますので、議論を円滑に進めるため皆様の部屋の扉に名前と職業を表示いたします。』

 ドアの中央に設置してあったパネルにそれぞれの名前と職業が表示される。椅子に座っている参加者の上に名前が表示されているように見える仕組みだった。

『それでは、ご武運を』

 嘲るような機械音の途絶えた音がして、砂時計が自動でひっくり返る。細かい砂が、ガラスの中で早くも小さな山を作り始めていた。

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