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透明人間になるためには?
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透明人間になるために、我々には何が必要なのか?
透明になるための薬?
透明になるためのマント?
透明になるための魔法?
そんな面倒くさそうなものは、透明人間になるうえでどれも必要無い。
私達が透明人間になるうえで必要なものはただ一つ。
それは、『呪文』だ。
その呪文さえ知っていれば、私達はいつだって透明人間になれる。
十六世紀にクイル博士がエジプトの遺跡で発見した書物には、
「以下の呪文を唱えれば、誰でも透明人間になれる」
と記されていた。
学者たちは血眼になって呪文を解読しようとしたが、
地球上のどこにも存在しないその文字を解読するのは非常に難題であった。
クイル博士が書物を発見してから二十年以上が経ったある日、
『私が発見した書物に書かれていたことは全て嘘であった。
あれは、太古の昔にあの遺跡付近に住んでいた子供がイタズラで書いたものである』
そう書かれた置手紙だけを残し、博士は突然姿を消してしまった。
しかも博士は、
あろうことか書物を跡形も無く燃やしてしまったのだ。
博士の置手紙を読んだ学者たちは、
今までの二十年は一体何だったのかと肩を落とした。
書物が子供のイタズラで書かれたものだと分かった博士は、
ショックのあまり自ら身を隠したのだと、大半の学者はそう思っていた。
だが、学者たちの中には、
博士が書いた置手紙の内容を信じない者もいた。
呪文の解読に成功した博士は、
実際にその呪文を唱えることで透明人間になった。
本を燃やしたのは、
自分以外の人間が透明人間になれないようにするためだ。
一部の学者たちは、そう考えていた。
それから更に何百年も経ったある日、
クイル博士の子孫であるエヴァン・クイルは
以下の秘密を世間に公表すると同時に、自ら命を絶った。
『我々は透明人間になることで、
何百年にも渡り、世界の平和のために陰ながら尽力してきた。
だが、我々クイル家の努力は全て無駄だったようだ。
透明人間になるための【呪文】は存在する。
そして、私はその呪文を書いた紙を、世界の何処かに隠した』
あの日、クイル博士は透明人間になっていた。
ようやく呪文の解読に成功した博士は、
自分自身の身体を使うことで呪文の効果を試した。
やっとの思いで呪文を解読し透明人間になった博士だったが、
そこである一つの問題点に気が付いた。
『元に戻るには、どうしたらいいんだ?』
結局、博士は透明人間になったまま元に戻ることが出来なかった。
その事を知っているのは、博士の家族である妻と息子の二人だけであり、
さらに博士は息子にだけ例の呪文を教えていた。
それから何世代にも渡り、
クイル家は透明人間の秘密と例の呪文を守り続けてきた。
しかも、クイル家の男たちは自ら透明人間になることで、
世界を少しでもより良くしようと戦っていたのだ。
もちろん、一度でも透明人間になってしまうと元に戻ることはできないし、
彼らが人知れず平和のために身を犠牲にしていることは、誰も知らない事実であった。
それでも、透明人間だからこそできることがあると信じ
クイル家は平和のために自らを犠牲にしてきた。
だが、何百年経っても世界が平和になることはなかった。
平和になるどころか、
世界は崩壊の一途を着々とたどっていた。
これ以上世界が良くなることはないと思ったエヴァンは
何百年にも渡って守り続けられてきた秘密を公表することにした。
クイル家の秘密を知った世界中の人々は
エヴァンが世界のどこかに隠したという『呪文が書かれた紙』を血眼になって探した。
透明人間になるために必要なものは、薬でもマントでも魔法でもない。
その『呪文』さえ知っていれば、誰でも透明人間になれるのだ。
エヴァンが遺した『呪文が書かれた紙』は、
今も世界のどこかに存在すると言われている。
透明になるための薬?
透明になるためのマント?
透明になるための魔法?
そんな面倒くさそうなものは、透明人間になるうえでどれも必要無い。
私達が透明人間になるうえで必要なものはただ一つ。
それは、『呪文』だ。
その呪文さえ知っていれば、私達はいつだって透明人間になれる。
十六世紀にクイル博士がエジプトの遺跡で発見した書物には、
「以下の呪文を唱えれば、誰でも透明人間になれる」
と記されていた。
学者たちは血眼になって呪文を解読しようとしたが、
地球上のどこにも存在しないその文字を解読するのは非常に難題であった。
クイル博士が書物を発見してから二十年以上が経ったある日、
『私が発見した書物に書かれていたことは全て嘘であった。
あれは、太古の昔にあの遺跡付近に住んでいた子供がイタズラで書いたものである』
そう書かれた置手紙だけを残し、博士は突然姿を消してしまった。
しかも博士は、
あろうことか書物を跡形も無く燃やしてしまったのだ。
博士の置手紙を読んだ学者たちは、
今までの二十年は一体何だったのかと肩を落とした。
書物が子供のイタズラで書かれたものだと分かった博士は、
ショックのあまり自ら身を隠したのだと、大半の学者はそう思っていた。
だが、学者たちの中には、
博士が書いた置手紙の内容を信じない者もいた。
呪文の解読に成功した博士は、
実際にその呪文を唱えることで透明人間になった。
本を燃やしたのは、
自分以外の人間が透明人間になれないようにするためだ。
一部の学者たちは、そう考えていた。
それから更に何百年も経ったある日、
クイル博士の子孫であるエヴァン・クイルは
以下の秘密を世間に公表すると同時に、自ら命を絶った。
『我々は透明人間になることで、
何百年にも渡り、世界の平和のために陰ながら尽力してきた。
だが、我々クイル家の努力は全て無駄だったようだ。
透明人間になるための【呪文】は存在する。
そして、私はその呪文を書いた紙を、世界の何処かに隠した』
あの日、クイル博士は透明人間になっていた。
ようやく呪文の解読に成功した博士は、
自分自身の身体を使うことで呪文の効果を試した。
やっとの思いで呪文を解読し透明人間になった博士だったが、
そこである一つの問題点に気が付いた。
『元に戻るには、どうしたらいいんだ?』
結局、博士は透明人間になったまま元に戻ることが出来なかった。
その事を知っているのは、博士の家族である妻と息子の二人だけであり、
さらに博士は息子にだけ例の呪文を教えていた。
それから何世代にも渡り、
クイル家は透明人間の秘密と例の呪文を守り続けてきた。
しかも、クイル家の男たちは自ら透明人間になることで、
世界を少しでもより良くしようと戦っていたのだ。
もちろん、一度でも透明人間になってしまうと元に戻ることはできないし、
彼らが人知れず平和のために身を犠牲にしていることは、誰も知らない事実であった。
それでも、透明人間だからこそできることがあると信じ
クイル家は平和のために自らを犠牲にしてきた。
だが、何百年経っても世界が平和になることはなかった。
平和になるどころか、
世界は崩壊の一途を着々とたどっていた。
これ以上世界が良くなることはないと思ったエヴァンは
何百年にも渡って守り続けられてきた秘密を公表することにした。
クイル家の秘密を知った世界中の人々は
エヴァンが世界のどこかに隠したという『呪文が書かれた紙』を血眼になって探した。
透明人間になるために必要なものは、薬でもマントでも魔法でもない。
その『呪文』さえ知っていれば、誰でも透明人間になれるのだ。
エヴァンが遺した『呪文が書かれた紙』は、
今も世界のどこかに存在すると言われている。
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