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しおりを挟む「……大丈夫か?」
問われて目を開く。隣でこちらを伺う春馬の目は、熱を孕んでいる。現にスラックスの前が盛り上がっていた。
「ああ、悪い」
睦紀の視線に気づいたのか、春馬がばつの悪そうな顔をした。
こんな醜態を晒す人間を軽蔑することもなく、情欲を滲ませる春馬。それでも自分の欲を差し置いて、睦紀との約束を守ろうとする強固な精神。
その姿に睦紀の心が揺れ動く。きっと、睦紀の方から抱いて欲しいと口にしない限り、春馬は一生手を出しては来ないだろう。それに目に見えない溝は、睦紀が全てを曝け出し、二人の欲を受け入れない限りは埋まらないように思えた。
「……春馬さん」
立ち上がりかけた春馬の腕を掴む。涼華が本当の妻ではないと分かった今、何を躊躇する必要があるのかとすら思えた。
「前に欲しいものは何でも与えてくれるって、言ってましたよね」
「ああ、そうだが」
「それなら……春馬さんが欲しいです」
睦紀の言葉に春馬が息を呑む。
「だめですか?」
黙り込んでいる春馬に、睦紀は自分の考えが誤りだったのかと不安が過る。
「本当にいいのか?」
躊躇う素振りを見せる春馬に睦紀が頷くと、腕を引かれてベッドに乗せられる。
睦紀の背がベッドに落ち、春馬が覆い被さった。荒々しく唇を奪われ、ボタンが外されていく。早急な動きから、春馬がどれほど我慢してきたのかが伝わってくるようだった。
首筋から胸へと舌が這い、睦紀は身もだえる。胸の先端に吸いつくなり、春馬の指が身体をなぞって後孔にたどり着く。
すでに柔らかくほどけている襞をかき分け、指が中をまさぐった。
「んッ……早く……ください」
ぎゅっと春馬の指を食い締め、睦紀は身体を揺さぶる。
恥もプライドも捨て、今は快楽だけを求めた。自分の欲に忠実になった分、今までの鬱屈とした感情が嘘のように解消されていく。
「睦紀が望むなら、いくらでもしてやる」
そう言って春馬はスラックスから、興奮に色を変えた雄を取り出す。膝を抱え込まれると、一息に中に突き入れられる。
「あああッ――」
激しく中を抉る熱に睦紀は目眩がするほど、翻弄される。
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