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しおりを挟む睦紀は目を覚ますなり周囲に視線を這わせると、自分の部屋ではなく俊政の部屋であることに気づく。自分の吐くため息だけが部屋に響き、どうやらここには自分一人のだけのようだった。
身体を起こすと、いたる箇所に軋むような痛みが走る。顔を顰め、時計に視線を向けると既に十一時を回っていた。
昨晩は気絶するように眠ってしまったようで、一体いつ終わったのかも定かではない。
断片的に覚えているのは浅ましい自分の姿と、二人の男の欲を滲ませた表情。
思い出すだけで、全身が燃えるように熱くなってしまう。そんな卑しい自分に、嫌気すら差した。
早く下に降りなければ。そう思うのに、身体は思うように動かない。
春馬はわからないが、俊政は今日は休みだと言っていた。ここにいないということは、既に下に降りているのだろう。出かけているとも限らず、リビングで顔を合わせる可能性もある。気まずさからどうにも、気が重たかった。
普段の温厚さがフェイクだったような、激しい欲を滲ませた顔。優しい口調で話す口からは、睦紀を辱める言葉が発せられていた。そんな豹変した義父の姿が、今思えばショックでもあった。
薬のせいとはいえ、流されてしまった自分にも非があるかもしれない。それでも防ぎようがなく、あの時はどうすることも出来なかったのは確かだ。
ぐるぐると考えていると、扉がノックされ俊政が顔を出す。今、一番会いたくなかった本人が現れたことで睦紀は、ぎこちなく視線を反らす。
「大丈夫かい? 睦紀」
労るように問われ、睦紀はぎくしゃくと頷く。昨日の今日で、普通に接するのは無理だった。落とした視線をそのままに、睦紀はギュッと拳を握る。
「昨日はすまなかった。つい、行き過ぎたことをしてしまったようだ。申し訳ない」
そう言って睦紀の傍に近づくと、俊政は頭を下げてくる。
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