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しおりを挟む「どうして欲しいか、睦紀の口から聞きたい」
さっきまでは春馬が主導権を握っていたというのに、突然バトンを渡され睦紀は呆気に取られる。それでも燻るような快楽は断続的に襲いかかる。
「睦紀は何も言わないし、求めない。望むようにしてやりたいのにだ。それがどれだけもどかしいか分かるか?」
精悍な顔立ちが悲しげに歪む。
「睦紀、欲しいなら欲しいって言えばいい。俺はお前になら何だって与えてやる」
昂ぶった前を戒めていた指が離れ、今度は緩慢に扱かれる。
「んっ……あっ」
決定的な刺激がなく、止むことのない微かな快楽は苦痛でしかない。春馬はきっと、睦紀の口から強請らない限りは、このままの状態を続けるつもりだろう。睦紀だけでなく、春馬も苦しいはずなのに――
「――もっと」
乾いた唇で睦紀は口を開く。
もとより自分は人よりもふしだらな人間だ。春馬にそんな姿をさらけ出すのは嫌だったが、これ以上は耐えられそうにない。久しぶりの人肌の温もりと与えられる快楽は、想像以上に思考を蝕んだ。
「……めちゃくちゃにしてください」
望みを口にすると、春馬が笑んだ。
「それでいい、睦紀」
春馬はそう言うなり、激しく腰を打ち付ける。それに合わせて、溢れる滴にまみれた昂ぶりを扱かれる。
「あ、ああっ――春馬さんっ」
「睦紀――いいか?」
こくこくと頷くと、春馬が腰を奥に突き入れる。奥でじんわりとした熱と脈動を感じ、睦紀は身体を震わせた。我慢していた分、開放感は今までにないほど強烈だった。濡れる腹部に自分が達したのだと気づく。
大変なことをしてしまったということは分かっている。涼華や俊政に申し訳が立たないとも――
「大丈夫だ。睦紀は何も悪くない」
そう言って春馬が再び覆い被さってくる。睦紀はそれを拒むことなく、腕を伸ばした。
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