淫愛家族

箕田 はる

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「でもさ、あんまり気負いすんなよ。浮気が嫌なら店ぐらい行けばいい」
「店って、風俗のことだろう? 浮気と変わらない」
「お前は分かってないなぁ」

 そう言うなり、多嶋が財布を取り出す。

「店で性欲を満たすのは、いわば日常での買い物となんら変わらないんだよ。お前はお腹空いたと思ったとき、コンビニやスーパーで弁当だの買うだろう? 妻の作った料理しか食べません、だなんてことないんじゃないのか? 金払って食欲を満たす。金払って性欲を満たす。何も変わらないとは思わないか」

 持論を展開しつつ、多嶋が一枚のカードを取り出した。睦紀のスーツのポケットにそれを差し込んでくる。運転に集中している睦紀は、咎める声は出せても突き返せない。

「俺の苦労の成果だ。そのカードを持って行けば、どのコースも半額になる。たまには羽目外せよ」
「いらないから。自分で使えよ」

 会社の駐車場に車を止めつつ、睦紀は眉を顰める。
 駐車し終えた睦紀が胸ポケットからカードを取り出そうとしたところで、多嶋は逃げるように車から降りてしまう。

「お、おいっ」

 睦紀が慌てて追いかけようとするものの、シートベルトを外している隙にどんどん距離を取られてしまう。
 睦紀は溜息を吐き、諦めてシートに凭れる。
 何気なしに手元の黒いカードに視線を向けると、アルファベットで書かれた文字が並んでいた。一見すると、何のカードだか分からない。こういった店はお忍びで行くところであって、こういった配慮がされているのだろう。
 後で多嶋に返そうと、睦紀は胸ポケットにしまう。代わりにスマホを取り出すと、通知が来ていることに気づく。
 涼華だろうかと、慌てて通知を開いた。差出人を見て、睦紀の肩から力が抜けていく。
 連絡は涼華からではなく、俊政からだった。今日は早く終わりそうだから、一緒に夕食が取れそうだという内容だ。

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