恋する熱帯魚

箕田 悠

文字の大きさ
上 下
91 / 136
第十章

6

しおりを挟む

「二人だけで食べるには、量が凄いな」

 春夜が自分の分を取り分けると、松原がグラスを手に取った。

「確かにそうですね。僕も驚いています」

 春夜がグラスを手に取ると、軽くぶつけ合い口をつける。
 春夜はあまりお酒を飲まないので違いが明確には分からないが、持ってきてくれた日本酒は口当たりがあっさりしていて飲みやすかった。

「おいしいです」

 素直に口にすると、松原がホッとしたように口元を緩めた。

「この煮物は君が作ったのか?」

 皿に乗っている人参と椎茸を指しつつ、松原が言った。

「違いますよ」
「あの支配人か?」
「ええ、そうですよ。お気に召しましたか?」
「ああ。てっきり君が作ったのかと思った」

 何故そう思ったのか分からず、春夜は首を傾げる。

「前に出してくれた小鉢の煮物と味が似てるから、そうなのかと思ったんだ」
「どうして僕が作ったって、分かったんですか?」

 驚く春夜に、松原が困ったように口元を歪めた。

「いや……単なる勘だ。以前に君が俺の反応をやたらと気にしてたから、そうなのかと思ってただけだ」

 恥ずかしさを誤魔化すように、春夜は日本酒を口にした。カッと喉に熱が帯びる。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モラトリアムの猫

青宮あんず
BL
幼少期に母親に捨てられ、母親の再婚相手だった義父に酷い扱いを受けながら暮らしていた朔也(20)は、ある日義父に売られてしまう。彼を買ったのは、稼ぎはいいものの面倒を嫌う伊吹(24)だった。 トラウマと体質に悩む朔也と、優しく可愛がりたい伊吹が2人暮らしをする話。 ちまちまと書き進めていきます。

女性恐怖症の高校生

こじらせた処女
BL
昔のとあるトラウマのせいで女性に触られることに恐怖を覚えてしまう男子高校生の話

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

マッサージはお好きですか?

浅上秀
BL
マッサージ師×サラリーマン ※R18 仕事に疲れたサラリーマンの佐藤が同僚の女性社員におすすめされ癒しを求めて訪れたマッサージ店。 そこでマッサージ師の渡辺に出会い、気持ちよくさせられてしまうお話。 本編 四話 番外編 更新中 完結済み … 短編 BL  なお作者には専門知識等はございません。全てフィクションです。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

純情将軍は第八王子を所望します

七瀬京
BL
隣国との戦で活躍した将軍・アーセールは、戦功の報償として(手違いで)第八王子・ルーウェを所望した。 かつて、アーセールはルーウェの言葉で救われており、ずっと、ルーウェの言葉を護符のようにして過ごしてきた。 一度、話がしたかっただけ……。 けれど、虐げられて育ったルーウェは、アーセールのことなど覚えて居らず、婚礼の夜、酷く怯えて居た……。 純情将軍×虐げられ王子の癒し愛

処理中です...