53 / 107
第三章
11
しおりを挟む
「考えたんだけどな……今回、母さんが行けなくなったのを機会に、脩を会合に参加させようかと思ってるんだが」
「えっ……」
「母さんがお前を向こうに渡したくないばかりに、牽制していたのはもちろん知ってる。だから今までは俺が参加してた。でも脩だって、世良家の人間であることは変えようがないんだよ」
諭すような口ぶりの道雄に、やっぱり世良家の人間なのだと背筋が薄ら寒くなる。恵美子の手前、従順なふりをしていたのだけなのだろう。
「脩も知っておいたほうが良いこともあるしな。母さんには会合の件は、もちろん言わないでおくからさ」
もう決定事項のように道雄は腕を組み、一人納得している。
まさか会合に出るところまでは考えていなかった。遠目で見ても異様な雰囲気漂うあの大広間に、自分一人で大丈夫なのだろうか。
「俺は母さんに付き添ってるから、何かあったら連絡してくれ。くれぐれも、固定電話でな」
世神子村は山間に位置していて、電波が入りにくい。スマホはあまり使い物にならないだろう。そのせいか基本は固定電話で連絡を取り合っていた。
「……分かった」
乗り気にはなれないが、確かにいろいろと気になる事は山のようにあった。これをキッカケに知ることが出来るかもしれない。
「そうと決まれば、向こうに連絡しておくから。母さんが行けなくなったことは言ってあったけど、誰が参加するかは伝えてなかったからな」
道雄が少し嬉しそうな顔で、早々に電話をかけるために立ち上がる。
「脩も明日に備えてもう休んだほうがいい」
「うん……」
脩も腰をあげる。早速、道雄は受話器片手に電話をかけていた。
道雄の横を通り、脩は自分の部屋に荷物を纏めに二階の階段を登っていく。
「――明日は脩が参加しますので……えぇ、嬉しい限りです……」
階下の廊下から漏れ聞こえてくる道雄の声は、脩とは裏腹に弾んでいた。
分かってはいても突きつけられる現実に、脩は手すりを握りしめ唇を噛みしめる。
――そうだ、自分も籠の中の鳥だった。
気づけば自分が普通の人と同じ生活を送っていくのが、当たり前となってしまっていた。
正解が見つからない迷路に迷い込んだような、暗澹とした気持ちが込み上げてくる。
脩は重い足を動かし、自分の部屋の扉を開けた。
「えっ……」
「母さんがお前を向こうに渡したくないばかりに、牽制していたのはもちろん知ってる。だから今までは俺が参加してた。でも脩だって、世良家の人間であることは変えようがないんだよ」
諭すような口ぶりの道雄に、やっぱり世良家の人間なのだと背筋が薄ら寒くなる。恵美子の手前、従順なふりをしていたのだけなのだろう。
「脩も知っておいたほうが良いこともあるしな。母さんには会合の件は、もちろん言わないでおくからさ」
もう決定事項のように道雄は腕を組み、一人納得している。
まさか会合に出るところまでは考えていなかった。遠目で見ても異様な雰囲気漂うあの大広間に、自分一人で大丈夫なのだろうか。
「俺は母さんに付き添ってるから、何かあったら連絡してくれ。くれぐれも、固定電話でな」
世神子村は山間に位置していて、電波が入りにくい。スマホはあまり使い物にならないだろう。そのせいか基本は固定電話で連絡を取り合っていた。
「……分かった」
乗り気にはなれないが、確かにいろいろと気になる事は山のようにあった。これをキッカケに知ることが出来るかもしれない。
「そうと決まれば、向こうに連絡しておくから。母さんが行けなくなったことは言ってあったけど、誰が参加するかは伝えてなかったからな」
道雄が少し嬉しそうな顔で、早々に電話をかけるために立ち上がる。
「脩も明日に備えてもう休んだほうがいい」
「うん……」
脩も腰をあげる。早速、道雄は受話器片手に電話をかけていた。
道雄の横を通り、脩は自分の部屋に荷物を纏めに二階の階段を登っていく。
「――明日は脩が参加しますので……えぇ、嬉しい限りです……」
階下の廊下から漏れ聞こえてくる道雄の声は、脩とは裏腹に弾んでいた。
分かってはいても突きつけられる現実に、脩は手すりを握りしめ唇を噛みしめる。
――そうだ、自分も籠の中の鳥だった。
気づけば自分が普通の人と同じ生活を送っていくのが、当たり前となってしまっていた。
正解が見つからない迷路に迷い込んだような、暗澹とした気持ちが込み上げてくる。
脩は重い足を動かし、自分の部屋の扉を開けた。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
味噌汁と2人の日々
濃子
BL
明兎には一緒に暮らす男性、立夏がいる。彼とは高校を出てから18年ともに生活をしているが、いまは仕事の関係で月の半分は家にいない。
家も生活費も立夏から出してもらっていて、明兎は自分の不甲斐なさに落ち込みながら生活している。いまの自分にできることは、この家で彼を待つこと。立夏が家にいるときは必ず飲みたいという味噌汁を作ることーー。
長い付き合いの男性2人の日常のお話です。
虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメンアルファ辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
獅子帝の宦官長
ごいち
BL
皇帝ラシッドは体格も精力も人並外れているせいで、夜伽に呼ばれた側女たちが怯えて奉仕にならない。
苛立った皇帝に、宦官長のイルハリムは後宮の管理を怠った罰として閨の相手を命じられてしまう。
強面巨根で情愛深い攻×一途で大人しそうだけど隠れ淫乱な受
R18:レイプ・モブレ・SM的表現・暴力表現多少あります。
2022/12/23 エクレア文庫様より電子版・紙版の単行本発売されました
電子版 https://www.cmoa.jp/title/1101371573/
紙版 https://comicomi-studio.com/goods/detail?goodsCd=G0100914003000140675
単行本発売記念として、12/23に番外編SS2本を投稿しております
良かったら獅子帝の世界をお楽しみください
ありがとうございました!
俺☆彼 [♡♡俺の彼氏が突然エロ玩具のレビューの仕事持ってきて、散々実験台にされまくる件♡♡]
ピンクくらげ
BL
ドエッチな短編エロストーリーが約200話!
ヘタレイケメンマサト(隠れドS)と押弱真面目青年ユウヤ(隠れドM)がおりなすラブイチャドエロコメディ♡
売れないwebライターのマサトがある日、エロ玩具レビューの仕事を受けおってきて、、。押しに弱い敏感ボディのユウヤ君が実験台にされて、どんどんエッチな体験をしちゃいます☆
その他にも、、妄想、凌辱、コスプレ、玩具、媚薬など、全ての性癖を網羅したストーリーが盛り沢山!
****
攻め、天然へたれイケメン
受け、しっかりものだが、押しに弱いかわいこちゃん
な成人済みカップル♡
ストーリー無いんで、頭すっからかんにしてお読み下さい♡
性癖全開でエロをどんどん量産していきます♡
手軽に何度も読みたくなる、愛あるドエロを目指してます☆
pixivランクイン小説が盛り沢山♡
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる