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第一章
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しおりを挟む脩は部署に戻ると、パソコンの前で腕を組んでいる島崎を見つける。声をかけると、渋い顔で立ち上がり脩を連れて開いている会議室に向かった。
小じんまりとした会議室で、お互いに向かい合わせの席に腰を据える。
「田端はどうだった?」
腰を降ろしつつ、島崎は少し疲れた声音で問いかけてくる。
「今は落ち着いています」
「そうか……世良に任せて正解だった。ありがとう」
島崎はいくらかホッとした表情になった。大した事はしていないが、役に立てたようで脩も胸を撫で下ろす。
「まさか田端がああなるとは、予想外だった。どうするかなー」
「そうですね……原因がわからないのでなんとも言えないですが……ずいぶんと自分を追い詰めてしまう性格みたいです」
さすがに、秋良の発言を島崎には伝えるのは躊躇してしまう。きっと、自分と同じ様な枷を嵌めているのかもしれない。そうだとしたら、なおさら他人に知られたくない可能性があった。
「そうかぁ……。大変だろうが、世良なら田端と上手くやっていけると俺は思ってる。お前もなにか悩みとかあるんだったら、なんでも言えよ」
「はい。ありがとうございます」
島崎の気持ちは嬉しいが、きっと誰にも言えないだろう。秋良もきっと、誰にも言えない秘密を抱えているのかもしれない。そう思うと、放ってはおけないなと脩は落ち着かない気持ちになってくる。
「そういえば、近々出張があっただろ? 田端も同行させてやってくれ」
「わかりました。田端にも日程など、伝えておきます」
島崎はそれとなく、脩に秋良の事を探らせたいと思っているのだろう。今回は自社での事だったから良かったものの、取引先で取り乱されでもしたら混乱を招きかねない。
「悪いな。何かあったら、すぐに連絡してくれて構わないから」
島崎が立ち上がったことで、この話は終わりなのだと脩も腰を上げた。
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