君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第二章「正真」

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 僕はすでに校門を出て、駅に向かっていた。茹だるような暑い空気と、強い日差しが容赦なく降り注いでくる。

 僕が思わず暑い……と呟くと『何処にいるんですか?』と神近くんが少し驚いた口調で問いかけてきた。

「今、駅に向かってる。最寄り駅は何駅?」

『日本語通じない人ですね……』

 呆れたように言葉を吐き出しつつも駅名を言った後、『ついたら連絡してください』と言って電話が切られてしまう。

 言われた駅名はここから三駅離れた場所にあった。普段あまり降りないような、閑静な住宅地の多い地域だ。

 僕は最寄り駅に降り立つと、まずは神近くんに連絡をする。アパート名を教えてもらいネットで検索をして、僕は初めての土地を右往左往しつつ進んでいく。

 途中でスーパーに寄って、飲み物やお菓子、レトルト食品、冷えピタを買うとパンパンになったビニールを片手に僕は、再び茹だるような暑さが広がる道を歩いていく。

 まだ八月にもなっていないのに、この暑さは殺人級だ。天気予報では三十八度越えと言っていたがそれ以上に思えてならない。

 僕は汗だくになりながら、神近くんのアパートを目指していく。正真正銘の霊感を持っている彼が住むアパートとは、一体どんな感じなのだろうか。

 彼がこだわりにこだわった、霊の気配を感じない建物なのだからきっと空気が澄んでいるのかもしれない。

 不謹慎ながら少しだけ、僕の胸は弾んでしまっていたのだった―― 

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