君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第二章「正真」

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「神近とは仲が良いのか?」

 門屋先生に問われ、「はい」と僕は言い切った。今は決して仲が良いとは言えなかったが、少しでも神近くんに対するイメージが良い方に変わって欲しい。それに少なくとも僕は、仲良くなりたいとは思っていた。

「なら、彼に言ってくれないか。部室に盛り塩を置くのはやめた方がいいと」

 別段不快そうな表情ではなかったが、どこか居心地悪そうに腕を組んでいる。

「なぜですか?」

「気味悪がって、入部希望を取りやめる生徒もいる。あんまりにも活動が少なかったり、人数が少ないのが続くと、早い段階で廃部になるだろう」

 確かに盛り塩があるのは、何処を探してもあの部室ぐらいなものだろう。

「私からも言ったんだが、彼は聞く耳を持たなくてな。特待生で入った優秀な生徒ではあるのに、いろいろと勿体ない……」

 神近くんが特待生だったとは驚きだ。この男子校は県でも高い偏差値を誇っていて、特待生の枠も年に一枠しかない。そんなこともあって、嫌でも特待生になった生徒は目立ってしまう。

「別段、悪さをしているわけじゃない。成績も優秀だ。でも少々、人を見下している面がある」

 そこで、ハッとしたように門屋先生が口をつぐむ。

「少々喋りすぎた。この事は他言無用で」

 僕は素直に頷き、ついでに入部届けを手渡す。

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