君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第二章「正真」

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「ごめん。ありがとう」

「あっ! 神近くんですけど、今日はお休みでしたよ。理由は知りませんが……」

 彼は思案げにそう言うと、再び頭を下げて行ってしまった。

 休みだと知らない僕は、驚いて立ち尽くしてしまう。そういえば一昨日会った時、熱があるような感じだった。

 病み上がりなのにも関わらず、昨日は除霊までさせて家に引き留めまでしまったのだ。

 僕は先輩失格だ。後輩を気遣うべき先輩が、自分の我儘に付き合わせて体調を崩させるなんてパワハラにも等しい。

 自覚してしまうと、血の気が引いて心臓が激しく打ち鳴らす。不安と罪悪感が込み上げ、僕はどうするべきかと思い悩む。

 とにかく泰明に神近くんの連絡先を聞いてみようと、僕はすぐさま泰明に電話をかける。僕の不安な気持ちとは裏腹に泰明は出てくれず、コール音だけが空しく続いていく。

 蒸し暑い廊下で僕は大量の汗を流しながら電話をかけ続けるも、泰明が出る気配が一向にない。

 僕は仕方なく、取り敢えずは家に帰ろうと溜息を吐き出す。泰明の家に行くにしても、連絡が取れないという事は家の手伝いをしているのかもしれなかった。

 それに加え、泰明の家は僕とは真反対の場所にあって、自転車でも二十分程の距離がある。僕は学校まで徒歩で来ていて、歩きだと倍の時間はかかるだろう。

 僕は諦めて、帰路に着く事にしたのだった。

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