君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第一章「代償」

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 確かに男同士のキスなんか見せられたら、良い気はしないだろう。後で泰明には何か奢ってあげようと、僕は心に誓った。

「終わったなら帰るぞ」

 泰明はそう言い残すと、先に教室から出ていってしまう。

「あ、そういえば代償って何をすれば良いの?」

 そういえば聞いていなかったと、神近くんに問いかける。神近くんは唖然とした表情をした後、お腹を抱えて笑い出す。

「先輩……面白いですね」

 何か面白いことでも言ったのだろうかと、僕は首を傾げる。笑いすぎて涙を零す神近くんは、こうしてみると子供っぽい雰囲気が残っていた。

「もう良いですから。充分です」

「何が充分なの?」

「良いですからほら、置いていかれちゃいますよ」

 神近くんはまだ可笑しそうにクツクツと笑い、僕の背に手を置いた。とりあえず神近くんが良いというのなら良いのだろう。

「とにかくありがとう。助かった」

「先輩、男の人に好かれやすいみたいなんで、気をつけた方が良いですよ。憑いてたのも男なんで」

 神近くんは悪戯っぽい表情で僕の背を押すと、部屋から出るように促してくる。僕は釈然としないまま、追い立てられるようにして部屋を後にした。


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