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第23話:忍び寄る危機

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 リリアナの胸の中に根を下ろしていた不安は、日々増大していった。守護者たちの存在に守られているはずの村だが、確かに迫ってくる影の気配があることを感じていた。リーダーもまた、守護者たちだけでは守りきれない危機が迫っていると認めた今、リリアナは自分自身が村を守るために行動しなければならないという責任を強く意識するようになっていた。

 その朝、リリアナは普段よりも早く目を覚ました。まだ村は静寂に包まれており、窓から見える風景にはいつもと変わらない平和が広がっていた。しかし、リリアナはその平和の裏に隠れた脅威を、肌で感じ取っていた。

(この静けさは一時的なもの……何かが起こるのは間違いない)

 彼女はゆっくりとベッドから起き上がり、深く息を吸い込んだ。何が迫っているのかはまだ分からないが、それに対処するために心の準備をしなければならないと感じていた。

 朝食を済ませると、リリアナは早々に診療所へ向かった。いつものように、エマが元気に挨拶をしてきたが、彼女の笑顔にはどこか不安が隠れているのが分かった。

「リリアナ様、最近やっぱり村のみんな、どこか不安そうです。私も何となく怖い気持ちが続いていて……」

 エマの言葉には、日々の村の空気を鋭く感じ取る彼女ならではの繊細さが現れていた。リリアナもその気配を感じていたが、彼女に何も言わず、ただ微笑んで頷いた。

「そうね、エマ。私も同じよ。だからこそ、私たちは村のみんなを支えなければならないわ」

 そう言いながらも、リリアナの心には、一つの考えが強く浮かび上がってきていた。自分が村を守るためにできることは限られている。守護者たちだけでも不十分であれば、自分自身がさらなる力を持つ必要があるのではないか――そんな考えだった。

 その日の午後、リリアナは村の外れにある小高い丘へと足を運んだ。ここからは村全体が見渡せ、彼女はいつもこの場所で心を落ち着けていた。しかし今日の彼女は、落ち着きとはほど遠い気持ちでここに来ていた。

(私は村を守るためにどうすればいいの……)

 彼女の頭の中では、その問いが何度も繰り返されていた。守護者たちとの協力はもちろん重要だが、それだけでは十分ではないことをリリアナは痛感していた。何かもっと強力な手段が必要だ――それは、彼女の過去に関係しているのではないかと考え始めていた。

 彼女がかつて追放された原因――それが、この村に迫る危機と繋がっているのではないかという考えが、次第に彼女の中で現実味を帯びてきていた。

 その夜、リリアナは再び守護者たちとの会合を開いた。リーダーをはじめとする守護者たちは、彼女の到着を静かに待っていた。彼らの表情は冷静でありながら、その奥には何かしらの不安や警戒が見て取れた。

「リーダー、村に何かが迫っているのを感じています。私たちが今、できることは何なのでしょうか? 守護者たちだけでは、すべてを守りきれないのかもしれません」

 リリアナの言葉に、リーダーはしばらくの間、彼女の目をじっと見つめた。そして、彼は静かに口を開いた。

「我々はこの村を守るために存在している。しかし、お前が言う通り、我々の力だけでは十分ではない。お前が持っている可能性――それを発揮する時が来るかもしれない」

 その言葉に、リリアナは一瞬息を呑んだ。自分が持っている「可能性」とは何なのか。リーダーの言葉が意味するものを理解するのには時間がかかったが、彼女はそれが、自分の過去と繋がっていることに気づき始めていた。

「私の……可能性?」

 リーダーは頷き、さらに続けた。

「お前の家系がかつて守護者たちの力を求めた理由――それが今、お前に問われる時が来るだろう。我々が守りきれない部分を補うために、お前がその力を発揮できるかどうか、それがこの村を救う鍵となるかもしれない」

 リリアナの心の中に、これまで隠されていた事実がゆっくりと浮かび上がってきた。彼女の家族がかつて守護者たちの力を利用しようとした取引――その意味が今、彼女にとって現実のものとなりつつあった。

(私がこの村を守るために必要な力……それは、私自身の中にあるということ?)

 彼女の頭の中で、過去の出来事が次第に繋がり始めた。自分が追放された理由、それが今再び彼女に問われようとしている。リーダーの言葉が彼女に新たな覚悟を与えたが、同時に彼女の胸には、これまで感じたことのない恐れが芽生えていた。

 リリアナは翌朝、長老たちと再び話し合うために集会所を訪れた。村を守るために自分が果たすべき役割が何なのか、彼女はそれを模索し続けていた。

「リリアナ様、私たちは村を守るために、あなたの導きを必要としています。何か新たな情報があるのなら、ぜひ教えていただきたいのですが……」

 長老たちはリリアナに期待を寄せている。その視線が彼女に重くのしかかるが、リリアナは冷静さを保ちながら話し始めた。

「私の家族が過去に関わっていた取引――それがこの村に影響を与えているのではないかと感じています。私自身、その力を持っているかもしれませんが、それがどのように役立つのかはまだ分かりません。しかし、私はその力を見つけ出し、村を守るために使う決意をしました」

 その言葉に、長老たちは静かに頷いた。彼らもまた、リリアナの家系が持つ秘密を知っていたかもしれない。しかし、それをどう解釈すべきか、彼らもまだ答えを見つけられていないようだった。

「リリアナ様、その力がこの村を救う鍵となるのであれば、我々も全力で協力します。どうか、私たちを導いてください」

 長老たちの信頼と期待を受け止めながら、リリアナはさらに強い決意を胸に抱いた。自分が持っている力、それを発揮する時が来たのだと。

 その夜、リリアナは一人で村の広場に立っていた。星空が美しく広がり、夜風が彼女の頬を撫でている。村は一見平穏だが、リリアナの胸の中には、今にも崩れ落ちそうな危機感が満ちていた。

(私はこの村を守るために、すべてを捧げる覚悟を持たなければならない。自分の過去、そして家族が残した力を使って……)

 リリアナはその思いを胸に、夜空を見上げた。彼女の目には強い決意が宿り、これから訪れるであろう試練に立ち向かう覚悟が徐々に固まっていくのを感じた。

(私はもう逃げない。この村を守るために、どんな困難にも立ち向かう)

 彼女の心の中には、これまで以上に強い意志が芽生えていた。自分が持つ力、それが村を救うための最後の希望となるかもしれない――そう信じて、リリアナは決意を新たにした。
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