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独立記念日 上
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サマワ王国 とある酒場
アンゴラス帝国兵が立ち寄らなくなったからだろうか。いつもより少し多く客が入っている。
「この国はどうなっちまうんだろな」酔っ払いが言う。謎の軍勢に占領されて2日。皆、先行きに不安を感じる。
「アンゴラス帝国の奴ら、手も足も出ず終いだったな。」酒場の中は陰鬱な雰囲気が流れている。
「あんな力を持った連中だ。とうとう植民地になっちまうんじゃねぇか?」男の発言にぎょっとする。
「さすがにそれは無いだろう。」
「向こうに居たときも含めて300年以上続いた王国だぜ?」
「じゃあ、あの兵器に勝てるのか?」酒場に沈黙が包まれる。
「独立させてくれればいいのに。」男が言う。
「なら、最初から占領するはず無いだろ。」
「せめて人材の徴発だけでもなくなればなぁ。」会話は続く。
------------------------
サマワ王国 トランスト軍港
港の沖合いに停泊する巨船、飛鳥Ⅱ及び護衛艦2隻より内火艇が港に向かう。
小ぶりな城に、趣ある石造りの街。
「本当に異世界なんだな。」外交官の天田はこれから始まる異世界初の交渉に不安と興奮を感じる。やがて港に着き異界の地を踏む。
「不思議と言葉は通じるらしいから向こうよりは楽なのか。」
「こちらです。」感傷に浸る間もなく、自衛官に装甲車へ案内される。装甲車は王城へ向かい出発する。
車窓を流れる異界の景色。ヨーロッパの田舎町を思わせる綺麗な町ではあるが、人通りも少なく活気がないように思える。時折すれ違う住民が、慌てて道の横によける程度だ。やがて車は自衛官に警備された城門を潜り抜け城へと入る。
「いよいよか。」天田は思わず呟くのだった。
------------------------
サマワ王国 王城
張り詰めた空気の流れる会議室で会話が行われている。列席するのは、サマワ王国の王であるサマワ・ラマタワを含む高官達、及び外交官天田とその部下達。
「貴国の軍艦が我が国を攻撃。そして多数の民間人を虐殺した事案について何か言いたいことはありますか?」天田が冷たい口調で言う。
「いえ、我が国はそのようなことはしておりません。」汗をかきながら外務相が言う。
「我が国を攻撃した船が貴国の港に入港したことは分かっています。」
「我が国にはアンゴラス帝国という国の軍が駐留しております。その国の軍です。我が国は一応、国としての体裁は残っているものの、所詮は衛星国。軍備を持つことも許されていません。」
「捕虜の証言と一致しますね。」天田の部下が耳打ちする。
「では、貴国に我が国と敵対する意図はないと?」天田が問う。
「はい。もちろんです。むしろ友好関係を築きたいと。」外務相が、国として形を残して欲しいということを含めながら答える。
「なるほど。我々もそう望みたいです。では次に、あなた達の国について詳しく教えてください。」
アンゴラス帝国兵が立ち寄らなくなったからだろうか。いつもより少し多く客が入っている。
「この国はどうなっちまうんだろな」酔っ払いが言う。謎の軍勢に占領されて2日。皆、先行きに不安を感じる。
「アンゴラス帝国の奴ら、手も足も出ず終いだったな。」酒場の中は陰鬱な雰囲気が流れている。
「あんな力を持った連中だ。とうとう植民地になっちまうんじゃねぇか?」男の発言にぎょっとする。
「さすがにそれは無いだろう。」
「向こうに居たときも含めて300年以上続いた王国だぜ?」
「じゃあ、あの兵器に勝てるのか?」酒場に沈黙が包まれる。
「独立させてくれればいいのに。」男が言う。
「なら、最初から占領するはず無いだろ。」
「せめて人材の徴発だけでもなくなればなぁ。」会話は続く。
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サマワ王国 トランスト軍港
港の沖合いに停泊する巨船、飛鳥Ⅱ及び護衛艦2隻より内火艇が港に向かう。
小ぶりな城に、趣ある石造りの街。
「本当に異世界なんだな。」外交官の天田はこれから始まる異世界初の交渉に不安と興奮を感じる。やがて港に着き異界の地を踏む。
「不思議と言葉は通じるらしいから向こうよりは楽なのか。」
「こちらです。」感傷に浸る間もなく、自衛官に装甲車へ案内される。装甲車は王城へ向かい出発する。
車窓を流れる異界の景色。ヨーロッパの田舎町を思わせる綺麗な町ではあるが、人通りも少なく活気がないように思える。時折すれ違う住民が、慌てて道の横によける程度だ。やがて車は自衛官に警備された城門を潜り抜け城へと入る。
「いよいよか。」天田は思わず呟くのだった。
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サマワ王国 王城
張り詰めた空気の流れる会議室で会話が行われている。列席するのは、サマワ王国の王であるサマワ・ラマタワを含む高官達、及び外交官天田とその部下達。
「貴国の軍艦が我が国を攻撃。そして多数の民間人を虐殺した事案について何か言いたいことはありますか?」天田が冷たい口調で言う。
「いえ、我が国はそのようなことはしておりません。」汗をかきながら外務相が言う。
「我が国を攻撃した船が貴国の港に入港したことは分かっています。」
「我が国にはアンゴラス帝国という国の軍が駐留しております。その国の軍です。我が国は一応、国としての体裁は残っているものの、所詮は衛星国。軍備を持つことも許されていません。」
「捕虜の証言と一致しますね。」天田の部下が耳打ちする。
「では、貴国に我が国と敵対する意図はないと?」天田が問う。
「はい。もちろんです。むしろ友好関係を築きたいと。」外務相が、国として形を残して欲しいということを含めながら答える。
「なるほど。我々もそう望みたいです。では次に、あなた達の国について詳しく教えてください。」
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