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ヒメ様は精霊王
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「精霊王かぁ。面倒だなぁ・・」
ぼそっと、独り言のように呟く。
シアは知っていた。
精霊王が、どんな存在でどんな性格でどれだけ人使いが荒いかを。
そう、魔女からしたら"精霊王"はとても身近な存在なのだ。
親戚のおじちゃん・おばちゃん、というくらいには身近にいたし、そもそも魔女の名付けは代々その地に住む精霊王が担っていた。
その為、"シア"という名をつけたのは、父でも母でもなく精霊王なのだ。
幼い頃から、祖母や他の魔女達とお茶したり散歩したりしている所をみているシアにとっては、精霊王の登場は特別でもなんでもない。むしろ、やっかいな親戚が久々に登場したぐらいの心境だ・・それが"妖精姫"であっても、きっと変わらないだろう。
そんな想いで案内されるがまま進んで行くと、突然視界が歪んだ。出口かな?と感じ、その歪んだ空間に入っていくと、目の前には幻想的な美しい光景が広がっていた。
あまりの美しさにシアは、ぽかーんっとした顔で景色に見入っていた。
そこへ、素敵な雰囲気をぶち壊すかのように元気な声が聞こえてきた。
「シアーーーーー!!!!!
やっと来たわねー!もう、遅いじゃない!イングになったなら、すぐにでも会いに来れたでしょー?ずっと待ってたのに、全然顔みせないんだから!呼び出そうと思ったらサハラに行ってるし・・久しぶりにこの地に魔女がきて楽しみにしてたんだからね!!」
あー、やっぱりこんな感じだよね・・精霊王って。
まくし立てるように話し続ける、彼女こそこの地の"精霊王"であり、シアに逢いたがっていた"妖精姫"その人だった。
そして、心の中でシアは悟った。絶対に面倒なことが起きると。
「シアはなんでここに着たの?」
『それは・・』
「皆、あっちから出たがらないのに・・どうして?」
『だから、それは母が・・』
「昔はね、私の家に住んで良いからおいで~!ってよく誘ってたんだけど、結局誰も来てくれなかったのよ・・それなのに、どうしてシアは来てくれたの?いつまで居てくれる?ずーっとここで暮らさない?私だって何でも教えてあげられるわよ!それに、ほら!シアの魔力を糧に妖精化ができた子達も多いし楽しいわよ!」
『・・・・・。』
予想通り、全くこちらの話しを聞かずにシアの声を遮ってまで、話し続ける妖精姫には内心うんざりしていた。
そう、大抵の精霊王は全く人の話を聞かない。
特に、長年魔女と一緒に暮らしていなかった精霊王たちはひどかった。
魔女の島には、他国の精霊王達が時折遊びに来ていた。
先程、妖精姫も言っていたように自分たちの地に住まないか?という打診や相談の目的もあれば、島の精霊王に用事だとか、魔女達と触れ合いたいとか、理由は様々だった。
それに、一部の魔女の間では【魔女は精霊王の使い】とも伝えられており、魔女達も進んで交流を行っていた。
特に、島の精霊王は昔から魔女と仲が良く、子供が産まれれば喜んで名付けをしてくれた。島で産まれた子達を自身の子のように大切に見守ってくれている。
ちなみに、シアは名をつけてくれた精霊王の事を「ジジ様」と呼んでいた。
それ程、魔女と島の精霊王の関係は良好だった。
だからこそ、たまにやってくる他国の精霊王達の傍若無人ぶりには驚かされた。
前に一度、不思議に思い祖母に尋ねてみたが、「遙か昔から皆が精霊王に名をもらい育てて貰っていたからねぇ、いつからそんな関係だったのかはわからない・・それが当たり前だったからね」と、誰もが精霊王と共に暮らしている理由も、仲が良い理由も知らなかった。
そして、今。
隣には永遠と話しを続ける精霊王・・いや、妖精姫がいる。
(あーーー面倒くさい)
◇◇◇
一方その頃、王都では小さな問題が発生していた。
それは・・
「シアはまだ見つからないのか!?」
「「はい・・まだ何も」」
「いったいどこに行ったんだ、シアは・・」
そう、シアが妖精姫と話している間に、月日は流れ…すでに10日程経過していた。
ちょっと出かけたつもりのシアと、ちょっと出かけてくると聞かされていたギルバートとセインたち。
どんなに物事の捉え方が違うにせよ、10日間は"ちょっと出かけてくる"の長さではない。
そして、連絡も無く戻ってこないとなれば・・
嫌でも、一騒動起きるだろう。
ぼそっと、独り言のように呟く。
シアは知っていた。
精霊王が、どんな存在でどんな性格でどれだけ人使いが荒いかを。
そう、魔女からしたら"精霊王"はとても身近な存在なのだ。
親戚のおじちゃん・おばちゃん、というくらいには身近にいたし、そもそも魔女の名付けは代々その地に住む精霊王が担っていた。
その為、"シア"という名をつけたのは、父でも母でもなく精霊王なのだ。
幼い頃から、祖母や他の魔女達とお茶したり散歩したりしている所をみているシアにとっては、精霊王の登場は特別でもなんでもない。むしろ、やっかいな親戚が久々に登場したぐらいの心境だ・・それが"妖精姫"であっても、きっと変わらないだろう。
そんな想いで案内されるがまま進んで行くと、突然視界が歪んだ。出口かな?と感じ、その歪んだ空間に入っていくと、目の前には幻想的な美しい光景が広がっていた。
あまりの美しさにシアは、ぽかーんっとした顔で景色に見入っていた。
そこへ、素敵な雰囲気をぶち壊すかのように元気な声が聞こえてきた。
「シアーーーーー!!!!!
やっと来たわねー!もう、遅いじゃない!イングになったなら、すぐにでも会いに来れたでしょー?ずっと待ってたのに、全然顔みせないんだから!呼び出そうと思ったらサハラに行ってるし・・久しぶりにこの地に魔女がきて楽しみにしてたんだからね!!」
あー、やっぱりこんな感じだよね・・精霊王って。
まくし立てるように話し続ける、彼女こそこの地の"精霊王"であり、シアに逢いたがっていた"妖精姫"その人だった。
そして、心の中でシアは悟った。絶対に面倒なことが起きると。
「シアはなんでここに着たの?」
『それは・・』
「皆、あっちから出たがらないのに・・どうして?」
『だから、それは母が・・』
「昔はね、私の家に住んで良いからおいで~!ってよく誘ってたんだけど、結局誰も来てくれなかったのよ・・それなのに、どうしてシアは来てくれたの?いつまで居てくれる?ずーっとここで暮らさない?私だって何でも教えてあげられるわよ!それに、ほら!シアの魔力を糧に妖精化ができた子達も多いし楽しいわよ!」
『・・・・・。』
予想通り、全くこちらの話しを聞かずにシアの声を遮ってまで、話し続ける妖精姫には内心うんざりしていた。
そう、大抵の精霊王は全く人の話を聞かない。
特に、長年魔女と一緒に暮らしていなかった精霊王たちはひどかった。
魔女の島には、他国の精霊王達が時折遊びに来ていた。
先程、妖精姫も言っていたように自分たちの地に住まないか?という打診や相談の目的もあれば、島の精霊王に用事だとか、魔女達と触れ合いたいとか、理由は様々だった。
それに、一部の魔女の間では【魔女は精霊王の使い】とも伝えられており、魔女達も進んで交流を行っていた。
特に、島の精霊王は昔から魔女と仲が良く、子供が産まれれば喜んで名付けをしてくれた。島で産まれた子達を自身の子のように大切に見守ってくれている。
ちなみに、シアは名をつけてくれた精霊王の事を「ジジ様」と呼んでいた。
それ程、魔女と島の精霊王の関係は良好だった。
だからこそ、たまにやってくる他国の精霊王達の傍若無人ぶりには驚かされた。
前に一度、不思議に思い祖母に尋ねてみたが、「遙か昔から皆が精霊王に名をもらい育てて貰っていたからねぇ、いつからそんな関係だったのかはわからない・・それが当たり前だったからね」と、誰もが精霊王と共に暮らしている理由も、仲が良い理由も知らなかった。
そして、今。
隣には永遠と話しを続ける精霊王・・いや、妖精姫がいる。
(あーーー面倒くさい)
◇◇◇
一方その頃、王都では小さな問題が発生していた。
それは・・
「シアはまだ見つからないのか!?」
「「はい・・まだ何も」」
「いったいどこに行ったんだ、シアは・・」
そう、シアが妖精姫と話している間に、月日は流れ…すでに10日程経過していた。
ちょっと出かけたつもりのシアと、ちょっと出かけてくると聞かされていたギルバートとセインたち。
どんなに物事の捉え方が違うにせよ、10日間は"ちょっと出かけてくる"の長さではない。
そして、連絡も無く戻ってこないとなれば・・
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