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伝説の魔獣
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セインが放った魔法によって、尾に突き刺された仲間は食べられる事はなかったが…
助けることもできなかった。
そして、自分へ向けて放たれた魔法により危険だと判断したキマイラは、セインにターゲットを絞っていた。
大きな赤い目がしっかりとセインを捉え、恐怖を与えるかのように目を細め微笑んだ。
そして、ものすごい瞬発力でセインに向かって走り出した。
周りの騎士達もすぐに反応し、魔法攻撃で加速させまいと応戦するものの、キマイラは伝説で聞いていた以上に素早くやっかいな魔獣だった。
一瞬にしてセインの目の前にきたキマイラを、セインが蹴り飛ばした。大きく弧を描くように宙を舞うキマイラ。
そこへ、他の騎士団達すかさず魔法を放った。何発か避けきれなかったのか、苦しそうな声が聞こえる。更にそこへもう何発か入れようと詠唱が聞こえた瞬間…
ボォっと火の手が上がった。
キマイラが火を吹いたのだ。
近くにいた、騎士達にも火は燃え広がり魔術師たちが必死に火を消し、回復魔法をかけていた。
「大丈夫か!? 今、回復させる!
腕をこちらに… ごふっ!」
突然、回復に回っていた魔術師が血を吐き倒れる。その背には細い矢の様なものが刺さっていた。
燃え盛る炎の中を、ゆったりと歩きながらキマイラは己の尾を振りまし毒針を飛ばしていた。
炎にやられ倒れている者にも、回復をかけようとした魔術師へも、その毒針は容赦なく襲いかかってくる。
動ける者は、毒針の届かない位置まで距離を置き様子を伺う。
その間も、キマイラはずっとセインを見据えていた。
そして、セインもキマイラを見据えている。
"絶対に目を逸らしてはいけない"
野生の感だろうか?セインはいつでも攻撃できるよう身構えた。
その瞬間!!!
キマイラが動くより先に、何かに接触…
いや、何かが衝突したのだ。
セインは余りの衝撃に意識を手放した。
彼に突っ込んでいったのは、シアたちにも突っ込んできたジャイアントボアだ。
メキメキメキメキッ…!!!
セインの身体は、大きな音と衝撃と共に立ち並ぶ家屋を破壊していった。
数百メートル飛ばされただろうか。
壁にめり込むようにして、ようやくセインの身体が止まった。
「セインさんっ!!!」
周りからはセインを呼ぶ悲痛な叫び声が聞こえて来る。
「起きてください!セインさん!」
「副団長ーーー!!!奴がきますっ!
目を開けてください!!」
そう、キマイラは飛ばされたセインの後を執拗に追いかけてきたのだ。
その目にセインだけを見据えて…
しかし、セインはそんな周りの声に反応することはなく、目を開けることはなかった。
それは、防御態勢を取れないままジャイアントボアに追突された、衝撃の凄まじさを物語っていた。
そして、今セインの目の前にはキマイラが立っている。
攻撃を受け傷だらけで出血もあるが、そんなことは気にもしないように、ニタァと笑いながらセインに向かって大きく口を開いた。
鋭い牙が並ぶ口が開き、誰もがやばいと思ったその瞬間!
ガシッ!と、その牙を素手で止めた者がいた。
ミシミシッ…と腕がしなり、今にも血管が切れて腕が折れるのではないかと思う程、強い衝撃が身体中に走った。
彼は語りかけるように意識のないセインに声をかけた。
「セイン副団長!!
貴方が目覚めるまで俺が食い止めますから!
でも…っ!
できれば早めに起きてくださいよっ!」
聞き覚えるのある明るい声…
その声に誘導されるようにセインの意識が戻る。
目を開けた先には、自分を守るために果敢に敵に立ち向かう彼の姿だった…
「___っ!?
トーマかっ…すま、ないっ」
「セイン副団長!?気づいたんっすね!
あーーーよかったっス!!!」
セインの意識が戻ったことに、トーマは安堵し、一瞬後方のセインへ振り向きその姿を確認し破顔した。
セインも大丈夫だ!という様に笑い返した。
その隙をキマイラは見逃さなかった。
次の瞬間…
ドンっ!
トーマの体を貫く様にキマイラの尾が突き刺さった。
助けることもできなかった。
そして、自分へ向けて放たれた魔法により危険だと判断したキマイラは、セインにターゲットを絞っていた。
大きな赤い目がしっかりとセインを捉え、恐怖を与えるかのように目を細め微笑んだ。
そして、ものすごい瞬発力でセインに向かって走り出した。
周りの騎士達もすぐに反応し、魔法攻撃で加速させまいと応戦するものの、キマイラは伝説で聞いていた以上に素早くやっかいな魔獣だった。
一瞬にしてセインの目の前にきたキマイラを、セインが蹴り飛ばした。大きく弧を描くように宙を舞うキマイラ。
そこへ、他の騎士団達すかさず魔法を放った。何発か避けきれなかったのか、苦しそうな声が聞こえる。更にそこへもう何発か入れようと詠唱が聞こえた瞬間…
ボォっと火の手が上がった。
キマイラが火を吹いたのだ。
近くにいた、騎士達にも火は燃え広がり魔術師たちが必死に火を消し、回復魔法をかけていた。
「大丈夫か!? 今、回復させる!
腕をこちらに… ごふっ!」
突然、回復に回っていた魔術師が血を吐き倒れる。その背には細い矢の様なものが刺さっていた。
燃え盛る炎の中を、ゆったりと歩きながらキマイラは己の尾を振りまし毒針を飛ばしていた。
炎にやられ倒れている者にも、回復をかけようとした魔術師へも、その毒針は容赦なく襲いかかってくる。
動ける者は、毒針の届かない位置まで距離を置き様子を伺う。
その間も、キマイラはずっとセインを見据えていた。
そして、セインもキマイラを見据えている。
"絶対に目を逸らしてはいけない"
野生の感だろうか?セインはいつでも攻撃できるよう身構えた。
その瞬間!!!
キマイラが動くより先に、何かに接触…
いや、何かが衝突したのだ。
セインは余りの衝撃に意識を手放した。
彼に突っ込んでいったのは、シアたちにも突っ込んできたジャイアントボアだ。
メキメキメキメキッ…!!!
セインの身体は、大きな音と衝撃と共に立ち並ぶ家屋を破壊していった。
数百メートル飛ばされただろうか。
壁にめり込むようにして、ようやくセインの身体が止まった。
「セインさんっ!!!」
周りからはセインを呼ぶ悲痛な叫び声が聞こえて来る。
「起きてください!セインさん!」
「副団長ーーー!!!奴がきますっ!
目を開けてください!!」
そう、キマイラは飛ばされたセインの後を執拗に追いかけてきたのだ。
その目にセインだけを見据えて…
しかし、セインはそんな周りの声に反応することはなく、目を開けることはなかった。
それは、防御態勢を取れないままジャイアントボアに追突された、衝撃の凄まじさを物語っていた。
そして、今セインの目の前にはキマイラが立っている。
攻撃を受け傷だらけで出血もあるが、そんなことは気にもしないように、ニタァと笑いながらセインに向かって大きく口を開いた。
鋭い牙が並ぶ口が開き、誰もがやばいと思ったその瞬間!
ガシッ!と、その牙を素手で止めた者がいた。
ミシミシッ…と腕がしなり、今にも血管が切れて腕が折れるのではないかと思う程、強い衝撃が身体中に走った。
彼は語りかけるように意識のないセインに声をかけた。
「セイン副団長!!
貴方が目覚めるまで俺が食い止めますから!
でも…っ!
できれば早めに起きてくださいよっ!」
聞き覚えるのある明るい声…
その声に誘導されるようにセインの意識が戻る。
目を開けた先には、自分を守るために果敢に敵に立ち向かう彼の姿だった…
「___っ!?
トーマかっ…すま、ないっ」
「セイン副団長!?気づいたんっすね!
あーーーよかったっス!!!」
セインの意識が戻ったことに、トーマは安堵し、一瞬後方のセインへ振り向きその姿を確認し破顔した。
セインも大丈夫だ!という様に笑い返した。
その隙をキマイラは見逃さなかった。
次の瞬間…
ドンっ!
トーマの体を貫く様にキマイラの尾が突き刺さった。
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