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条件その1がきた

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「これが、精霊の森の薬草とそれらを使ったポーションだ」

"交換条件その1"が早速やってきた。
シアは薬草を受け取ると、その場ですぐに鑑定を行なった。

《精霊の森でとれた薬草》
栄養素が豊富
解毒効果あり
回復効果あり
秘薬、霊薬の素材として使用可能
妖精の加護あり


《精霊の森ポーション》
品質:良質
鮮度:普通
状態:普通
レベル:中級
効果:HP・MP大幅回復
   状態異常回復
   魔力+30向上
   一時的に能力最大向上


・・・これはこれは、オモシロイ。

"妖精の加護"

採れた薬草に加護がついていることは珍しい。
樹齢何百年もなる木の蜜などには希に込められていることもあるが、すぐに採取されるような草花に加護がつくことはまずない。
これが、精霊の森の秘められた力なのかもしれない。
それに、思っていたとおり"秘薬・霊薬が作れる"ようだ。


《妖精の加護》
与えられた加護内容は様々で、1度のみ召喚術使用可能や危険回避能力、聴力up等がある

それにしても、何故薬草には加護があるのにポーションには生かされていないのだろうか?
加護がついている素材で魔女達が作れば、大なり小なり加護もついてくる。
混ぜ合わせる素材の相性が良ければ良い程、加護の効果は格段に上がり、どんなに相性の悪い素材であっても効力は下がるが加護がつかない事は無い。


まぁ、恐らく問題はこのポーションのレベルにあるのだろう。
実際、このレベルのポーションであれば、シアでなくとも魔女見習いのミラレットですら努力次第で作成できるレベルだ。だからこそ、想定外のレベルの低さにどうしたものかと考えていると…

ギルバートの執務室へ向かう途中のサイラスがやってきた。

「ギル!丁度話があって向かっていたんだが、こんなところで何をしている?
ん?おや、話し中であったか?すまない・・」

食堂の側にある木陰のテラスで話していた為、ギルバートとセイン以外にも人がいることに気がつかなかったサイラスは申し訳ないと言いそのまま戻ろうとした。
しかし、2人と共にいる相手が持っているに気づく。

「もしや、君か!!ポーションを持ち込んだのは!?」

サイラスは嬉々として、シアの肩を掴み揺さぶる。思わずセインが止めに入る程揺さぶっていた。グニャグニャ…っと。

「…気持ち悪い」

「ぉぉ、これはすまない。でも、君なんだな?ポーションを持ち込んだのは!君は厨房で働いているようだが、あれをどこで手に入れた?いや、仕入れている?この国ではない様だからなぁ、何とか紹介してもらえないだろうか?紹介状や身分証明書などが必要ならば陛下にでも書かせるから信用度は問題ないはずだが、それでも無理だとすればその時は…」

「サイラス殿、少し落ち着いてください。」

ギルバートが興奮するサイラスを宥めるも、その想いは止まる事なくシアを質問攻めにした。
シアは目をそらす事なく、ずーっとその様子を眺めている。そして、サイラスに尋ねた。

「ねぇ。なんでこのポーションはこんなにも程度が低いの?レベルにしろ、効果にしろ全く釣り合ってないんだけど?
これで、あの金額で売ってるの?
それとも…嫌がらせでこの品質の悪いポーションもってきたわけ?」

あの条件への嫌がらせか?と不快感を露わにしているシアに対し、3人は目を見開くもシアは続ける…

「そもそも、この薬草だと条件その2で示したポーションが作れて当然のはずなのに…
持って来たものがこのレベルなんて、嫌がらせか期待はずれもいいとこだわ~。
この程度しか作れないなら、精霊の森の薬草じゃなくてもいーじゃん!もったいない!」

「君は…。鑑定ができるのか?しかも、レベル確認ができるほどの?
もしや、君も魔術師か?」

「…どーでもいいし、仮にそうだとしても、こんなレベルの低い物しか作れない貴方達と同業者にされたくはないわね。
それに、これじゃぁ…製作者を教えるなんて永遠に無理ね。」

サイラスは肩を震わせながらシアの話を聞いていた。
ギルバートもセインもその背中を心配そうに見つめている。
シアが述べたことは、全て本当のことであり、それは長年ポーション作成に関わって来たサイラスが1番思っていた事なのだから
人一倍精霊の森への思いもポーションへの思いも強く、何度も悔しい思いもしているはずだ。

シアはを教えることはできない、と言っていたが…セインはもちろん、恐らくサイラスさえも、製作者は誰かシアだとわかっているだろう、とギルバートは思っていた。
ポーションの進化は魔術師だけでなく騎士団にとっても重要なものだ。
しかし、出会った頃のガリガリのシアを知っているギルバートは彼女に無理な協力を取り付けたくなかった。
やっと少しづつではあるが笑顔を見せるようになったシア。
前までは気配を消すように過ごしていたが、近頃は「ギル様、おはようございます」と自ら挨拶もしてくれるようになった。ギルバートは、そんなシアをとても好ましく思っていた。それは妹を心配する兄の様に…
だからこそ、彼女を護らなくては。

「サイラス殿。失礼ながら、条件を満たさないのであれば詰め寄るのはここまでですよ」













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