上 下
3 / 50

獣人騎士団

しおりを挟む
「では、名前を教えてもらえるか?」

「シア…です」

「出身は?」

「・・・・・。」

「わからないのか?では、いつどこで奴らに捕まったんだ?」

「この森で、ついさっき」

「では、あの子供達と一緒の村からきたのか?」

「・・・・・。」

「なぜ答えない?」

「・・・・・。」


そんな事を聞かれても、答えられるはずがない。
自分が今いる場所もわからないうえに、魔女は出身地を明かせないのだから。


現在、私は野党達のアジトに居る。正確には、"元"アジトだった場所に。
ここまでは、しっかり担いで運んでもらった。お陰で少しは体力が回復したと思う。
到着したぞ!との声と共に気がつけば、騎士団に取り囲まれていた。
すでにそこは騎士団に包囲されており、奴等は仲間共々捕まり私と2人の子供は救出された。

そこからの、取調べである。
なんでも彼らは、前々から密輸に人身売買、恐喝に殺人と何でもやっており騎士団にマークされていたとの事。
あの2人の子供は、この近くの村の子供で家の手伝いで薬草を取りに森に入ったところで奴らに見つかり、私がいた森の奥まで逃げてきたらしい。
子供達も、逃げてたらあのお姉さんが座ってたの!と騎士団に説明したらしく、先ほどから、何故この森にいたのか?どこから来たのか?一人で入ったのか?などと質問攻めである。
もちろん、怪しんでいる訳ではなく私を帰すために心配して聞いているのだが…
困った事に、私は話せない。
どの国のどの場所に居るのかわからない上に、国境を通らずにこの場所にいるからだ。
下手に話すと、即、不法入国で捕まってしまう。

咄嗟に呟いてしまった。誰にも聞こえないぐらいの小さな声で。

「気づいたらこの森にいたんだよなぁ…」と。

「「え?」」

「…え?」
(今、声が重なって聞こえたような?)

「それは、どうゆう事だ?」

突然、後方から別の声がして振り向くと同時に、前から「団長!」と目の前に座っていた騎士が立ち上がった。
白い騎士団服の上に紺色のマントを羽織りフードを目深く被っている。袖には金色のラインが3本入っている。他の騎士団の人々よりも体格が大きく感じられる人が私を見下ろすように立っていた。

「・・・こわっ!」

思わず本音が出た。慌てて口を押さえるも、いろいろ遅い。
前にいる騎士団も、部屋の隅で盗品の確認をしていた団員たちもなぜか顔面蒼白でこちらを見ていた。
そんなに、大声で言ったつもりはないのだけど?
不思議に思っていると、「すまない」と上から声が聞こえ彼はフードを取った。
その瞬間、シアは目を瞠った!

「・・・・・・・!!!!!?」

フードをからパサリと綺麗な銀髪が落ち、その上にピコンッ!と立った耳があった。
顔立ちの整った綺麗な顔に、アメジストの大きな瞳がシアを捉えていた。

(え、獣人?)

団長がフードを取ったことを皮切りに、団員たちも皆フードを取り始める。
そして気づいた。
騎士団全員が獣人だということに。

「驚かせたようですまない。我らは、ここルーク帝国の獣人騎士団だ」

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

婚約破棄まで死んでいます。

豆狸
恋愛
婚約を解消したので生き返ってもいいのでしょうか?

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

私の愛した召喚獣

Azanasi
ファンタジー
アルメニア王国の貴族は召喚獣を従者として使うのがしきたりだった。 15歳になると召喚に必要な召喚球をもらい、召喚獣を召喚するアメリアの召喚した召喚獣はフェンリルだった。 実はそのフェンリルは現代社会で勤務中に死亡した久志と言う人間だった、久志は女神の指令を受けてアメリアの召喚獣へとさせられたのだった。 腐敗した世界を正しき方向に導けるのかはたまた破滅目と導くのか世界のカウントダウンは静かに始まるのだった。 ※途中で方針転換してしまいタイトルと内容がちょっと合わなく成りつつありますがここまで来てタイトルを変えるのも何ですので、?と思われるかも知れませんがご了承下さい。 注)4章以前の文書に誤字&脱字が多数散見している模様です、現在、修正中ですので今暫くご容赦下さい。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

虐げられ令嬢の最後のチャンス〜今度こそ幸せになりたい

みおな
恋愛
 何度生まれ変わっても、私の未来には死しかない。  死んで異世界転生したら、旦那に虐げられる侯爵夫人だった。  死んだ後、再び転生を果たしたら、今度は親に虐げられる伯爵令嬢だった。  三度目は、婚約者に婚約破棄された挙句に国外追放され夜盗に殺される公爵令嬢。  四度目は、聖女だと偽ったと冤罪をかけられ処刑される平民。  さすがにもう許せないと神様に猛抗議しました。  こんな結末しかない転生なら、もう転生しなくていいとまで言いました。  こんな転生なら、いっそ亀の方が何倍もいいくらいです。  私の怒りに、神様は言いました。 次こそは誰にも虐げられない未来を、とー

処理中です...