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本編
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【ナナエラ・ルーベルトの場合】
恐らく、一番初めに気づいたのは私だ。
肩と胸元がざっくり開いた、真っ赤なドレスがとても下品だと思った。
そのドレスの上から、お尻を撫で回している男性を見て最低だと思った。
そして、その男性の顔が自分の婚約者とそっくりな事実に目を背けたかった。
ライガスト侯爵家嫡男
クロード・ライガスト。
紫紺の髪に黒い瞳の彼もまた、将来を有望しされている騎士団二番隊に所属している。
先の2人よりも、体の線が細めではあるが、諜報活動に優れた二番隊らしく、物腰が柔らかく親しみやすい雰囲気を醸し出しており、女性たちからの人気が高い。
そんな彼を婚約者に持つナナエラは伯爵令嬢の為、侯爵家であるクロードより爵位が低い。
その為、何をされても基本的には逆らえなかった。
クロードの性への興味は、他の人よりも早かったのだろう。婚約が整ったのは、お互いが10歳になった頃だった。親が話をしている間クロードに誘われて庭の奥まで連れてこられたナナエラに、クロードは悪びれることなく言った。
『服を脱いで』と。
意味がわからず、断るナナエラに対しクロードは冷めた目で言った。
『…お前、伯爵だろう?次期侯爵家当主の僕に逆らうのか?』
それからも、体を触りたいだの、胸を見せろだの言いたい放題のクロードにうんざりしたナナエラは反抗した。
『結婚するまでは、そういった事はできません』と。
それを境に、クロードからの連絡は一切来なくなった。貴族の務めである夜会にすら、エスコートもなければ顔を合わせない始末。
その様子から、社交界では下位のナナエラが一方的に悪く言われていた。
彼女からしたら、悔しくて仕方がなかっただろう。
ナナエラもまた、直ぐ様魔法を展開した。
諜報活動を得意とするクロードには、魔法をかける事はできない。
だから、ナナエラが最も得意とする"暗示"を使い、周りの人々を動かした。
"クロードを見つけたら、彼を見ずにはいられない"ように…と。
これで、自分の他にも彼を見張ってくれる仲間ができたのだ。
【ユーフォニア・ブレナンの場合】
テラス席にかけた瞬間、失敗したと思った。
目の前の光景から、目を離せないでいたから。想像はついた。私達も4人でいるのだから、きっと仲の良い彼らも一緒にいるだろうと…
案の定、脇道から女性を抱えて出てきた男性は、既に事を終えたかのように胸元をはだけさせ、興奮冷めやまぬ様子だった。
ライモンド伯爵家嫡男
アルバス・ライモンド。
長身に筋肉質で体格が良く、オレンジ色の髪に茶色の瞳の彼は、紛れもないユーフォニアの婚約者だ。血の気の盛んな騎士団三番隊所属の彼は、強靭な体格には似つかわしい甘いマスクで、これまた女性からの人気が高いうちの一人だ。
ただし、血の気も盛んであれば、それに比例するように性欲も盛んなのだろう。
娼館を目の前にして、外で交わる必要がどこにあるのだろうか?
しかも、娼婦を立たせなくするなんて…
アルバスが運動重視な事に対し、ユーフォニアは研究重視なタイプである。
正直言って、彼との距離感に関しては他の3人と違って、これと言った異議はない。
しかし、娼館通いをしているならば話は別である。
娼婦達は、その魅力的な身体を使い仕事をしている。そして、少しでも多くの男性と交わることで対価を得る。
と、なれば…
彼女達が、一体どれほど沢山の病原体を保持しているのかわからないのだ!
ユーフォニアの専攻は"毒"である。
数々の研究結果を出し、学園では個人の研究室まで与えられている程だった。
そんな彼女が展開する魔法は、少々残酷なものだった。
筋肉バカのライモンドには、わからないと踏んで彼自身に向かって魔法を展開させる。
"病原体収集"
今後、彼が交わる度、その身体には性病が蓄積し続けることになった。
*****
そして、彼女たちは宣言する。
「彼らが自由にするのなら、私達も自由にやるわ!」
こうして、Sランクパーティ
【運命の女神の剣】が結成されたのだった。
恐らく、一番初めに気づいたのは私だ。
肩と胸元がざっくり開いた、真っ赤なドレスがとても下品だと思った。
そのドレスの上から、お尻を撫で回している男性を見て最低だと思った。
そして、その男性の顔が自分の婚約者とそっくりな事実に目を背けたかった。
ライガスト侯爵家嫡男
クロード・ライガスト。
紫紺の髪に黒い瞳の彼もまた、将来を有望しされている騎士団二番隊に所属している。
先の2人よりも、体の線が細めではあるが、諜報活動に優れた二番隊らしく、物腰が柔らかく親しみやすい雰囲気を醸し出しており、女性たちからの人気が高い。
そんな彼を婚約者に持つナナエラは伯爵令嬢の為、侯爵家であるクロードより爵位が低い。
その為、何をされても基本的には逆らえなかった。
クロードの性への興味は、他の人よりも早かったのだろう。婚約が整ったのは、お互いが10歳になった頃だった。親が話をしている間クロードに誘われて庭の奥まで連れてこられたナナエラに、クロードは悪びれることなく言った。
『服を脱いで』と。
意味がわからず、断るナナエラに対しクロードは冷めた目で言った。
『…お前、伯爵だろう?次期侯爵家当主の僕に逆らうのか?』
それからも、体を触りたいだの、胸を見せろだの言いたい放題のクロードにうんざりしたナナエラは反抗した。
『結婚するまでは、そういった事はできません』と。
それを境に、クロードからの連絡は一切来なくなった。貴族の務めである夜会にすら、エスコートもなければ顔を合わせない始末。
その様子から、社交界では下位のナナエラが一方的に悪く言われていた。
彼女からしたら、悔しくて仕方がなかっただろう。
ナナエラもまた、直ぐ様魔法を展開した。
諜報活動を得意とするクロードには、魔法をかける事はできない。
だから、ナナエラが最も得意とする"暗示"を使い、周りの人々を動かした。
"クロードを見つけたら、彼を見ずにはいられない"ように…と。
これで、自分の他にも彼を見張ってくれる仲間ができたのだ。
【ユーフォニア・ブレナンの場合】
テラス席にかけた瞬間、失敗したと思った。
目の前の光景から、目を離せないでいたから。想像はついた。私達も4人でいるのだから、きっと仲の良い彼らも一緒にいるだろうと…
案の定、脇道から女性を抱えて出てきた男性は、既に事を終えたかのように胸元をはだけさせ、興奮冷めやまぬ様子だった。
ライモンド伯爵家嫡男
アルバス・ライモンド。
長身に筋肉質で体格が良く、オレンジ色の髪に茶色の瞳の彼は、紛れもないユーフォニアの婚約者だ。血の気の盛んな騎士団三番隊所属の彼は、強靭な体格には似つかわしい甘いマスクで、これまた女性からの人気が高いうちの一人だ。
ただし、血の気も盛んであれば、それに比例するように性欲も盛んなのだろう。
娼館を目の前にして、外で交わる必要がどこにあるのだろうか?
しかも、娼婦を立たせなくするなんて…
アルバスが運動重視な事に対し、ユーフォニアは研究重視なタイプである。
正直言って、彼との距離感に関しては他の3人と違って、これと言った異議はない。
しかし、娼館通いをしているならば話は別である。
娼婦達は、その魅力的な身体を使い仕事をしている。そして、少しでも多くの男性と交わることで対価を得る。
と、なれば…
彼女達が、一体どれほど沢山の病原体を保持しているのかわからないのだ!
ユーフォニアの専攻は"毒"である。
数々の研究結果を出し、学園では個人の研究室まで与えられている程だった。
そんな彼女が展開する魔法は、少々残酷なものだった。
筋肉バカのライモンドには、わからないと踏んで彼自身に向かって魔法を展開させる。
"病原体収集"
今後、彼が交わる度、その身体には性病が蓄積し続けることになった。
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そして、彼女たちは宣言する。
「彼らが自由にするのなら、私達も自由にやるわ!」
こうして、Sランクパーティ
【運命の女神の剣】が結成されたのだった。
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