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65.捕らえられた婚約者

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バンッ!!!

「失礼する!」

「「!?」」

「アレクシス!?何事だ?」


部屋の中からの返事を待つことなく、アレクシスは目的の人が待機している部屋の扉を勢いよく開けた。

そこには、驚いた様子のレオンハルトと共に先程話題に上がった人物が優雅に座っていた。
その様子に、アレクシスは冷え冷えとした視線を送ると簡潔に伝えた。


「今から、城の主治医を呼ぶ。
婚約披露宴が始まる前にしておけ」

「「!?」」

案の定、二人ともすぐに意味を理解すると、レオンハルトは向かいに座るシェリナスへ軽蔑の視線を送り、シェリナスは顔を青くして伏せてしまった。
その姿を見たレオンハルトは、呆れた様にフンッと鼻で笑う。

「お前は…馬鹿か?
王族の婚約者に位置付けられた時点で、他の者に身体を許せば極刑だぞ?」

「・・・へ?」


レオンハルトから発せられた言葉に、シェリナスは愕然とする。

「え…極刑って、うそ、嘘よね?
だって、まだ、婚約前じゃないっ!?
今から正式な手続きを始めるはずでしょっ!?」

「これが、普通の婚約であればな」

「!?」

「お前、忘れたのか?
これは"王命"なんだ。俺たちは、婚約の提案をされた訳じゃない。あの書面を読み上げる事で、すでに俺たちの婚約は成立している。
だから、お前とその相手は極刑となる」

「そ…そんな…っ」

「まぁ、アレクシスに感謝するんだな。兵が尋問する前に、させてくれるそうだ」

そう説明すると、レオンハルトは興味が無さそうにボソリと呟いた。
『俺としては、極刑で構わないがな』と。
それは、アレクシスの耳には届かなくてもシェリナスの耳にはしっかりと届いていた。


そして、アレクシスが呼んだ主治医が来て洗浄を始めようとした矢先、兵を引き連れた陛下ではなく、何故かレオンハルトの母である王妃様がやってきた。
そして、王妃は高らかに宣言する。

「シェリナス・ヒース。
王族を欺き、この城内で婚約者以外と交わるなど卑劣極まりない。この者を姦通罪で捕らえよ!」

「「「「はっ!」」」」

王妃様の号令と共に、周りを取り囲んでいた兵が一斉に動き出した。

そして、シェリナスは引きずられる様にして部屋から出されていく。

そして、王妃は部屋に残った息子へと微笑みを向けた。

「これで、邪魔者はいなくなったわね!
陛下も今回のことは反省してらっしゃるわ。
レオン、今ならまだ
頑張りなさい!」

「母上。ありがとうございます」

そう言って、部屋を出て行く王妃にレオンハルトは深々と臣下の礼をとった。

そして、頭をあげるとすぐ後ろに控えているアレクシスに悲願するかのように頼み込んだ。


「アレク!頼む!
ティアに会わせてくれっ!!」
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