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56.お茶会を終えて

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ジェイデン主催のお茶会は、大反響で終わりを迎えた。

招かれていた令嬢達は、全員が隣国からの令嬢だった為、それぞれの国へと帰路に着く。
その間も、ジェイデン殿下への賞賛が相次ぎ、誰もが"婚約者候補"としての意識を高めていた。

茶会のお開きの挨拶と共に、ジェイデン殿下の周りには、『最後にご挨拶を!』と令嬢達で長蛇の列ができていた。

一応、こんなこともあろうかとジェイデンは挨拶の際に"これ以上の挨拶は不要だ!"と、述べていた。
それにも関わらず、少しでも印象を残しておきたい令嬢達は群がった。
その行為が、ジェイデンにとって耐え難い苦痛であることも知らずに…

そして、無碍にはできないため、集まってくる令嬢達に対応しつつも、ジェイデンの目は真っ先に会場を後にしようとするアリスティアの姿を捉えていた。



◇ ◇ ◇


ジェイデン殿下がお開きの挨拶をした後、アリスティアは主催者に群がる令嬢を横目に颯爽と会場を後にした。

アリスティアとしては、謝罪を要求される前に一刻も早くこの場を立ち去りたかったのだ。

そして、会場を出てしばらく行った先で、サフィーナと婚約者のカルロスを発見した。
遠目から見ても、二人はとても仲睦まじく寄り添うようにして会話を楽しんでいた。
とても嬉しそうに、頬を赤らめて微笑むサフィーナをカルロスは愛おしそうに抱きしめて、そして二人は熱い口付けを交わしていた。

その様子に、アリスティアは初めて心から思った。

そして、その感情は今まで感じたことのない、初めて湧き上がったものだった。

アリスティアは、とっさに出口とは逆の庭のある方向へと向かった。

そして、おもむろに向かった先は…

あの美しいガゼボだった。


「はぁ…」


目の前に広がる美しい光景を眺めつつ、アリスティアの口からは溜息が漏れた。


なんて、久しぶりに感じたわね…」

ボソッと呟かれた声は、消え入りそうなほど小さくて儚いものだった。

今まで、自分の報われない恋を理解しながらもレオンハルトの側を離れられなかったアリスティア。

普通の、婚約者同士のように道端で寄り添いながら愛を囁き合うことなんてした事が無かった。
元婚約者だったノックスとでさえ、あんなに寄り添いながら過ごしたことは無い。
唯一したことといえば、手を繋いで庭を散歩したぐらいだ。

誰と身体を重ねても、人前でアリスティアに寄り添ってくれる相手はいなかった。
『愛してる』『君だけだ』と、どれだけ愛を囁いてくれても、それはベッドの中だけ…

それが、どれだけ寂しいことか…

アリスティアは、心からそれを噛み締めていた。
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