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22.愛していると言われた日
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"レオンハルト殿下に会うことを禁ずる"
アリスティアが家へ戻ると、珍しく父である公爵から呼び出された。
コンコンとノックをすると「入りなさい」とお父様の返事が聞こえ、執務室の扉を開く。
そこには、お父様だけでなくお母様も座っていた。
その様子に、アリスティアは全てを察した。
「陛下より直々にお達しがくるなんて・・」
話しを終えて部屋に戻ったアリスティアは一人呟いた。
遅かれ早かれ、なんらかの勧告がくるであろうとは理解していた。
婚約破棄した者が、レオンハルト殿下の側にいることをよく思わない者は多いから。
そして、アリスティア自身、婚約破棄された後にも関わらず、こんなにも求められるとは正直思っていなかった。
婚約する前から何度も身体をあわせたが、レオンハルトがアリスティアに対して、愛を囁いてくれたことなど一度もないのだから。
しかし、昨晩彼は確かに言った。
『愛している』と。
何度も何度も、アリスティアを抱きながら口付けを交わしながら"愛している"と・・
あの時、アリスティアは初めて彼の愛を感じた。
できることなら、レオンの側にいたい…
この先ずっと、彼だけのものになりたい…
傷つくことを恐れ、今まで一度も声に出さなかった、彼への想いが溢れ出す。
幼い頃から大好きだった。
ティアと呼ぶ声も、
ぎゅっと抱きしめてくれる力強い腕も、
目が合うだけで微笑んでくれるあの笑顔も
…全て。
レオンの側が一番幸せだった。
ずっと居たいと思ってしまった。
どんどん欲張りになっていった。
だから、必死に気づかないふりをした。
彼が私を恋人と見てくれる日を夢見ていた。
身体だけじゃなく、私自身が必要だと思って欲しかった。
彼の心が欲しかった。
私は欲張りすぎた…。
あの頃のまだ遊びたりないレオンに、どんどんのめり込んでいく私を引き留めるようにして、両親は伯爵家との婚約を進めた。
全ては自分でまいた種だった。
結局、婚約破棄をしてレオンとはもう二度と結ばれない運命になった。
心が痛い・・・
溢れ出した想いは涙となりアリスティアの頬を濡らした。
流れ続ける想いをぬぐい、唇を噛み締めた。
そして、決意を胸に心から願う。
彼が…レオンが、どうか幸せでありますように、と。
翌日、アリスティアは兄にも告げず学園を休学。
____姿を消した。
◇◇◇
「ティアはどこですか!?」
屋敷中に響き渡るほどの大きな声を張り上げたのは、アリスティアの兄アレクシスだった。
冷静沈着な彼がこんな大声をあげるなんて・・と使用人たちの誰もが思った。
今朝、いつも通りアリスティアと朝挨拶をかわし「お兄様いってらっしゃいませ!」と、笑顔で手を振り見送られ家を出た。
そして、この日もレオンハルトの側近としての仕事をこなしていた。
何も変わらない、いつもと同じはずだった・・。
レオンハルトが、アリスティアと一度話しをしたいと言い出すまでは。
アリスティアが家へ戻ると、珍しく父である公爵から呼び出された。
コンコンとノックをすると「入りなさい」とお父様の返事が聞こえ、執務室の扉を開く。
そこには、お父様だけでなくお母様も座っていた。
その様子に、アリスティアは全てを察した。
「陛下より直々にお達しがくるなんて・・」
話しを終えて部屋に戻ったアリスティアは一人呟いた。
遅かれ早かれ、なんらかの勧告がくるであろうとは理解していた。
婚約破棄した者が、レオンハルト殿下の側にいることをよく思わない者は多いから。
そして、アリスティア自身、婚約破棄された後にも関わらず、こんなにも求められるとは正直思っていなかった。
婚約する前から何度も身体をあわせたが、レオンハルトがアリスティアに対して、愛を囁いてくれたことなど一度もないのだから。
しかし、昨晩彼は確かに言った。
『愛している』と。
何度も何度も、アリスティアを抱きながら口付けを交わしながら"愛している"と・・
あの時、アリスティアは初めて彼の愛を感じた。
できることなら、レオンの側にいたい…
この先ずっと、彼だけのものになりたい…
傷つくことを恐れ、今まで一度も声に出さなかった、彼への想いが溢れ出す。
幼い頃から大好きだった。
ティアと呼ぶ声も、
ぎゅっと抱きしめてくれる力強い腕も、
目が合うだけで微笑んでくれるあの笑顔も
…全て。
レオンの側が一番幸せだった。
ずっと居たいと思ってしまった。
どんどん欲張りになっていった。
だから、必死に気づかないふりをした。
彼が私を恋人と見てくれる日を夢見ていた。
身体だけじゃなく、私自身が必要だと思って欲しかった。
彼の心が欲しかった。
私は欲張りすぎた…。
あの頃のまだ遊びたりないレオンに、どんどんのめり込んでいく私を引き留めるようにして、両親は伯爵家との婚約を進めた。
全ては自分でまいた種だった。
結局、婚約破棄をしてレオンとはもう二度と結ばれない運命になった。
心が痛い・・・
溢れ出した想いは涙となりアリスティアの頬を濡らした。
流れ続ける想いをぬぐい、唇を噛み締めた。
そして、決意を胸に心から願う。
彼が…レオンが、どうか幸せでありますように、と。
翌日、アリスティアは兄にも告げず学園を休学。
____姿を消した。
◇◇◇
「ティアはどこですか!?」
屋敷中に響き渡るほどの大きな声を張り上げたのは、アリスティアの兄アレクシスだった。
冷静沈着な彼がこんな大声をあげるなんて・・と使用人たちの誰もが思った。
今朝、いつも通りアリスティアと朝挨拶をかわし「お兄様いってらっしゃいませ!」と、笑顔で手を振り見送られ家を出た。
そして、この日もレオンハルトの側近としての仕事をこなしていた。
何も変わらない、いつもと同じはずだった・・。
レオンハルトが、アリスティアと一度話しをしたいと言い出すまでは。
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