上 下
50 / 58
火と月

50

しおりを挟む
セリーナからの宣言から始まった話しは、それぞれの国で秘匿して受け継がれてきた内容とは、少しばかり違っていた。
正確には、ほぼ一緒なのだが、それぞれの立ち位置での話しになるため、時代が進むにつれて受け止め方に相違が出てきたのだろう。
中でも、特に火の国アレースではそれが顕著に現われていた。

"核"については、双方の国とも代々王族の王位継承者第一位のみに伝わっており、それは隣で控えていた王妃達も理解していた。
しかし、その"核"がもつ力に関しては、3カ国とも意見がバラバラだった。

まず、【火の国:アレース】では、"核"は火の国の護り火とされており、代々"この火が途絶えるとき火の国は共に滅びゆくだろう"と伝承されてきたそうだ。

そして、【月の国:セリニ】では、"核"は光であり、生命のパワーとされ、"光が途絶えし時、世界は闇に包まれるだろう"と伝承されているらしい。


この時点で、それぞれの国が対象としているものが違ってくる。

【火は火の国】【月は世界】

火の国にとっては、自国の話しとされているが、反対に月の国にとっては、の話しとなっているのだ。それだけのことで?と思うかもしれないが、そこが違えばその先に行き着くまでの過程も道のりも全てが変わってくる。

そして、もう一つ…
話しを掘り下げていく中で、セリーナが驚いたことがあった。
それは、以前セリーナがカイルやハルシオンに話した"本来護らなくてはならない役目"の事だ。

セリニは命(生命の循環)
アレースは火(生活の火)
エルミスは水(命の水)
アウラは風(恵みの風)
ブロンデーは天候(災害を抑える力)
クロノスは大地(実りを支える基礎)


これらの役割に関する言い伝えを、両国の王達は全く知らされていなかったのだ。

特に、"光"を恩恵として称えていたセリニの王はセリーナの話に驚きを隠せずにいた。
それも、そうだろう。
『自分たちは、世界に満ちる光を守る=守れなければ闇が世界を覆う だろう』として、月の国の核を守ってきたのだ。
それが、この役割を元に考えれると『命の光が途絶えるとき、闇に包まれる=新たな生命が誕生することは永遠にない』と、略されるのだ。
もちろん、これまでも王族としてこの役割を重く受け止めてきた。
しかし、今まで護り続けていたものが、未来へと繋がる命なのだとしたら…
あまりにも大きすぎる。


火の国もそうだ。
すでに、継承者として火の王はカイルにも"核"の場所や伝承されたことを教えてきた。
しかし、それはあくまでも"火の国の魂"のように伝えてきたのだ。
それが、実際に生活していく中で火が使えなくなる…
世界から"火"そのものが消えてしまうなんて誰が想像できるだろうか。


各々が、唖然とした表情ではあるものの、必死に考えを巡らせていることがわかる。


そんな中、セリーナは【土の国:クロノス】の役目について話し始めた。


「クロノスは、実りを支える基礎です。
今、護りの無くなった"核"は、自らを守るため力を集めるでしょう。
私は、兄と違い正しく核について継承されておりません。
ですので、これからお話しすることは、あくまでも私のです。

恐らく、今後全ての国において作物を育てることは不可能になるかと…
それは近い未来【六神国】最大の飢餓がおとずれると言うことです」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】浮気した婚約者を捨てた公爵令嬢は想いを寄せられていた男達に溺愛される

cc.
恋愛
浮気をした婚約者をバッサリと捨てた公爵令嬢アリスティア。 婚約破棄が成立した途端、アリスティアの元には沢山の求婚が寄せられ…気がつけば、逆ハー状態に!!! しばらくは静かに過ごしたいと、次の婚約を先伸ばしにしていたら、周りの男どもが黙っていなかった。 隣の領地の侯爵令息には押し倒され… 目が覚めると第二王子が入ったまま… お兄様には夜這いをかけられ… 騎士団長令息には授業中に… 王太子殿下の近衛には馬車の中で… 次の婚約者はいったい誰か!?

【立場逆転短編集】幸せを手に入れたのは、私の方でした。 

Nao*
恋愛
9/20最新『護衛騎士と駆け落ちしたと非難された元王妃の私ですが、漸く平穏な暮らしが送れそうです。』 様々な悪意や裏切り、不幸を乗り越え幸せを手に入れた主人公の逆転劇を集めたSS・短編集です。

その日、運命の出会いを果たした

下菊みこと
恋愛
その日出会えてなければ、幸せなど永遠に訪れなかっただろう。 ご都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。

ふまさ
恋愛
「……き、きみのこと、嫌いになったわけじゃないんだ」  オーブリーが申し訳なさそうに切り出すと、待ってましたと言わんばかりに、マルヴィナが言葉を繋ぎはじめた。 「オーブリー様は、決してミラベル様を嫌っているわけではありません。それだけは、誤解なきよう」  ミラベルが、当然のように頭に大量の疑問符を浮かべる。けれど、ミラベルが待ったをかける暇を与えず、オーブリーが勢いのまま、続ける。 「そう、そうなんだ。だから、きみとの婚約を解消する気はないし、結婚する意思は変わらない。ただ、その……」 「……婚約を解消? なにを言っているの?」 「いや、だから。婚約を解消する気はなくて……っ」  オーブリーは一呼吸置いてから、意を決したように、マルヴィナの肩を抱き寄せた。 「子爵令嬢のマルヴィナ嬢を、あ、愛人としてぼくの傍に置くことを許してほしい」  ミラベルが愕然としたように、目を見開く。なんの冗談。口にしたいのに、声が出なかった。

『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*
恋愛
9/19最新『夫の愛人の子を身を挺して救うも、犯罪者の汚名を着せられ家を追い出されました…。』 規約改定に伴い、今まで掲載して居た恋愛小説(夫の裏切り・離縁がテーマ)のSSをまとめます。 今後こちらに順次追加しつつ、新しい話も書いて行く予定です。

双子の転生先は双子でした

cc.
恋愛
辺境伯家の双子、アシュリーとナタリー。 ふとした事で、前世の記憶を取り戻した2人は、前世でも双子だった事を思い出す。 国の要である防衛の最前線の辺境伯で、幼い頃より武術・剣術を嗜んできた2人。 アシュリーは暗器をペンに持ち替え、 ナタリーは剣を筆に持ち替えた。 『いくら辺境伯家の令嬢といっても、アレはすでに女じゃないだろう?』 『どれだけ金を積まれても、絶対に妻にはしたくないよな!』 陰でなんと言われているかなんて、よく知ってますよ… でもね、悪いけれど… 貴方達の様な、ケツの青いガキはこっちから願い下げよ! 齢16歳。 中身(前世)アラサー。 好きなタイプ 色気ムンムンのアラフィフ!! 現世で狙うは… アラフォー、一本! え、アラフィフじゃないのかって? 育てたいのよ! 色気ムンムンの自分好みのアラフィフに! ざまぁ? そんなもの…興味はないわ。 だって、最終的に幸せになれればそれでいいもの♪ *閑話にてR18が含まれる場合があります。 読まなくても、ストーリー的には問題ありません。

自国では『役立たず』隣国では『救世主』と呼ばれてます

cc.
恋愛
魔術研究が盛んな国、ディート王国。 この国の中央には、優秀な魔術師達が集められた研究塔が聳え立ち、魔術師の憧れの聖地と崇められていた。 そんな研究塔の"トップ"に配属されたシェイラは、実力のある魔術師ではあるのだが、もはや愛称は『役立たず』。 そんな彼女が、助けた相手は隣国の騎士団だった。 自国では『役立たず』と言われ続けた彼女が、隣国で『救世主』と呼ばれるようになるまでの話。

処理中です...