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火と月
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温かい・・・
抱きしめている腕の中の彼女は、ちゃんと温かかった。
そして、ハルシオンの背にはしっかりと彼女の腕が添えられていた。
本物だ。
間違いなく…セリーナだ。
「セリーナ、よく無事で…っ」
もう、言葉が続かなかった。
ハルシオンは、抱きしめた腕に更に力を込めた。
もう、絶対に1人にはしない!
もう、絶対に危険な目には合わせない!
そんな思いが、ひしひしと伝わってくる。
「セリニ兄様もご無事で…安心いたし…まし…た…」
セリーナから、発せられた儚げな声はハルシオンの無事を心から安堵する様子が伺えた。しかし、同時にその声はどんどん震えていき、今にも消えてしまいそうだった。
抱きしめた腕を緩め、そっと震えるセリーナの肩に手を置くと、ハルシオンは覗き込む様な姿勢でセリーナに声を掛けた。
「セリーナ、顔を見せてくれ」
その言葉に従い、ゆっくりと顔を上げるセリーナ。
2人の視線が絡んだ瞬間…
セリーナの目からは、止めどなく涙がこぼれ落ちた。
今まで、我慢していた気持ちが一気に流れ出てしまったのだ。
嗚咽を上げながらも、自分自身を落ち着かせようと、必死に胸を押さえているセリーナに、ハルシオンは堪らなくなった。
"土の民は、近親者の命が消える瞬間を感じることができる"
昔、セスはハルシオンにそう言った。
セスとセリーナの叔父と叔母が、2人して立て続けに病で亡くなった時、2人の魂を誰かによって引き上げられていくような、そんな感覚を感じる、と…
そして、その後にはとてつもない悲しみと喪失感が波の様に一気に押し寄せてくる。
足元が、安定しない様な浮遊感があり、息を引き取る瞬間の思いが心の中に広がっていく…と。
叔父さんからは、病の痛みからの解放感と残してゆく家族への想いが…
叔母さんからは、先に亡くなった叔父さんの元へ行ける安堵感、そして残してゆく子供達への愛と苦しみ…
そういった感情が、全て流れ込んできて、堪らなく苦しくなる。
『俺ですら、ご飯が喉を通らなくなる。
セリーナは、特に治癒力が高い分感受性が強いからなぁ…
寝込んでしまった程だ。恐らく、病の痛みすら己の身に感じているだろうな』
昔のことを思い出しながら、ハルシオンは腕の中で必死に気持ちを落ち着かせようとしているセリーナを見つめた。
父と母、そして大好きな兄を一変に亡くしたこの子は一体どれだけの気持ちを背負っているのだろうか。
こんなにも、細い肩でどれだけの思いを受け止めたのだろうか。
それも…、たった1人で。
ハルシオンは、もう一度セリーナをギュッと抱きしめた。
徐々に、セリーナの呼吸が落ち着き始めた。
優しく背中を撫でてやると、セリーナは嬉しそうに小声で「ありがとう」と呟いた。
ハルシオンも、嬉しくてもう一度「セリーナ」と声を掛けようとした、その時!
「落ち着いたのなら、場所を移すぞ」
しなやかで、ハリのある声が2人の元に響いた。
そこには、色々と事情を聞きたげなカイルが複雑な表情で立っていた。
抱きしめている腕の中の彼女は、ちゃんと温かかった。
そして、ハルシオンの背にはしっかりと彼女の腕が添えられていた。
本物だ。
間違いなく…セリーナだ。
「セリーナ、よく無事で…っ」
もう、言葉が続かなかった。
ハルシオンは、抱きしめた腕に更に力を込めた。
もう、絶対に1人にはしない!
もう、絶対に危険な目には合わせない!
そんな思いが、ひしひしと伝わってくる。
「セリニ兄様もご無事で…安心いたし…まし…た…」
セリーナから、発せられた儚げな声はハルシオンの無事を心から安堵する様子が伺えた。しかし、同時にその声はどんどん震えていき、今にも消えてしまいそうだった。
抱きしめた腕を緩め、そっと震えるセリーナの肩に手を置くと、ハルシオンは覗き込む様な姿勢でセリーナに声を掛けた。
「セリーナ、顔を見せてくれ」
その言葉に従い、ゆっくりと顔を上げるセリーナ。
2人の視線が絡んだ瞬間…
セリーナの目からは、止めどなく涙がこぼれ落ちた。
今まで、我慢していた気持ちが一気に流れ出てしまったのだ。
嗚咽を上げながらも、自分自身を落ち着かせようと、必死に胸を押さえているセリーナに、ハルシオンは堪らなくなった。
"土の民は、近親者の命が消える瞬間を感じることができる"
昔、セスはハルシオンにそう言った。
セスとセリーナの叔父と叔母が、2人して立て続けに病で亡くなった時、2人の魂を誰かによって引き上げられていくような、そんな感覚を感じる、と…
そして、その後にはとてつもない悲しみと喪失感が波の様に一気に押し寄せてくる。
足元が、安定しない様な浮遊感があり、息を引き取る瞬間の思いが心の中に広がっていく…と。
叔父さんからは、病の痛みからの解放感と残してゆく家族への想いが…
叔母さんからは、先に亡くなった叔父さんの元へ行ける安堵感、そして残してゆく子供達への愛と苦しみ…
そういった感情が、全て流れ込んできて、堪らなく苦しくなる。
『俺ですら、ご飯が喉を通らなくなる。
セリーナは、特に治癒力が高い分感受性が強いからなぁ…
寝込んでしまった程だ。恐らく、病の痛みすら己の身に感じているだろうな』
昔のことを思い出しながら、ハルシオンは腕の中で必死に気持ちを落ち着かせようとしているセリーナを見つめた。
父と母、そして大好きな兄を一変に亡くしたこの子は一体どれだけの気持ちを背負っているのだろうか。
こんなにも、細い肩でどれだけの思いを受け止めたのだろうか。
それも…、たった1人で。
ハルシオンは、もう一度セリーナをギュッと抱きしめた。
徐々に、セリーナの呼吸が落ち着き始めた。
優しく背中を撫でてやると、セリーナは嬉しそうに小声で「ありがとう」と呟いた。
ハルシオンも、嬉しくてもう一度「セリーナ」と声を掛けようとした、その時!
「落ち着いたのなら、場所を移すぞ」
しなやかで、ハリのある声が2人の元に響いた。
そこには、色々と事情を聞きたげなカイルが複雑な表情で立っていた。
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