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火の国【アレース】
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「おい!そこの君!」
不意に呼び止められたココは、手に持っていたドリンクをそっと配膳用のカートに乗せて振り返った。
「ここはもういい。悪いが、会場の片付けにまわってくれ!」
「かしこまりました」
煌びやかな夜会がお開きとなると、ドレス姿の御令嬢の代わりに会場内を練り歩くのは黒いワンピースに白いエプロン姿のメイド達だった。
ココも片付け要員として、会場に足を踏み入れた。
ココは…いや、セリーナは夜会が嫌いだった。
ゴテゴテしたドレスも、香水と料理の匂いが混ざり合った何とも言えない会場の匂いも…
そして、下心丸出しで無駄に声をかけて来る貴族達も…
その全部が嫌いだった。
しかし、土の姫として夜会に出ないという選択肢はない。
最低限だけ参加をしていた。
ココは、どこか懐かしさを感じながらも会場内の片付けに精をだした。
片付けも、終盤に差し掛かり数名のメイドのみを残して大半がゴミ出しや厨房など、まだ終わらない仕事へ回されていく。
そこへ一人の令嬢が顔を出した。
「ねぇ、ちょっと…あ、そこの貴女!悪いんだけど、ガーデンに飲み物を運んでくれないかしら?」
「かしこまりました。どのような飲み物をご所望ですか?」
「お酒よ、できるだけ強いものにしてちょうだい!」
よろしくね!と言って、真っ赤なドレスで着飾った令嬢は会場を後にする。
頼まれた通り、ドリンク係にお酒は一番強いものを用意してもらった。
そして、指名された場所まで飲み物を届けに向かうと微かに男女二人の話が聴こえてきた。
「…なぜですの?私の想いは…っ!」
「・・・できない」
何を話しているのかは聞き取れないが、揉めているような…そんな様子が感じられた。
(うわぁ~、気まずい…)
こんなタイミングで、お待たせしました~!なんて言って、お酒を持っていけるのだろうか…
思わず、自分で自問自答してしまう。
まぁ、そう思っていても頼まれたものは届けなければいけない。
ココは、大きく息を吸うと全力で“今きました”感をしっかりと纏わせて一歩踏み出した。
「失礼いた・・」
「殿下!!なぜっ…なぜ私ではダメなのです!?
幻姫など、もういない…もはや、幽霊姫ではありませんか!!!」
ココが、勇気を振り絞って出した一歩は、儚くも一瞬で崩れ去った。
先程、飲み物を頼んできた真っ赤なドレスの令嬢はカイル殿下に縋りつき訴え続けていた。
“何故、自分を選ばないのか”と。
そして、幻姫を「幽霊姫」と罵った瞬間…
カイル殿下から、恐ろしいほどの殺気が放たれた。
「…黙れ」
「ひっ…、わ、わ、わたくしは…」
「黙れと言ったのがわからぬか。下がれ…」
「で、ですが…「下がれ」」
次の瞬間、カイル殿下の周りにメラメラと燃え上がる炎が出現した。
そのまま彼は、もう一度彼女にはっきりと分からせるように言葉を発した。
「下がれ」と。
この時、ココは初めて彼が武力の強いこの火の国で【最強】と言われる所以を知った気がした。
不意に呼び止められたココは、手に持っていたドリンクをそっと配膳用のカートに乗せて振り返った。
「ここはもういい。悪いが、会場の片付けにまわってくれ!」
「かしこまりました」
煌びやかな夜会がお開きとなると、ドレス姿の御令嬢の代わりに会場内を練り歩くのは黒いワンピースに白いエプロン姿のメイド達だった。
ココも片付け要員として、会場に足を踏み入れた。
ココは…いや、セリーナは夜会が嫌いだった。
ゴテゴテしたドレスも、香水と料理の匂いが混ざり合った何とも言えない会場の匂いも…
そして、下心丸出しで無駄に声をかけて来る貴族達も…
その全部が嫌いだった。
しかし、土の姫として夜会に出ないという選択肢はない。
最低限だけ参加をしていた。
ココは、どこか懐かしさを感じながらも会場内の片付けに精をだした。
片付けも、終盤に差し掛かり数名のメイドのみを残して大半がゴミ出しや厨房など、まだ終わらない仕事へ回されていく。
そこへ一人の令嬢が顔を出した。
「ねぇ、ちょっと…あ、そこの貴女!悪いんだけど、ガーデンに飲み物を運んでくれないかしら?」
「かしこまりました。どのような飲み物をご所望ですか?」
「お酒よ、できるだけ強いものにしてちょうだい!」
よろしくね!と言って、真っ赤なドレスで着飾った令嬢は会場を後にする。
頼まれた通り、ドリンク係にお酒は一番強いものを用意してもらった。
そして、指名された場所まで飲み物を届けに向かうと微かに男女二人の話が聴こえてきた。
「…なぜですの?私の想いは…っ!」
「・・・できない」
何を話しているのかは聞き取れないが、揉めているような…そんな様子が感じられた。
(うわぁ~、気まずい…)
こんなタイミングで、お待たせしました~!なんて言って、お酒を持っていけるのだろうか…
思わず、自分で自問自答してしまう。
まぁ、そう思っていても頼まれたものは届けなければいけない。
ココは、大きく息を吸うと全力で“今きました”感をしっかりと纏わせて一歩踏み出した。
「失礼いた・・」
「殿下!!なぜっ…なぜ私ではダメなのです!?
幻姫など、もういない…もはや、幽霊姫ではありませんか!!!」
ココが、勇気を振り絞って出した一歩は、儚くも一瞬で崩れ去った。
先程、飲み物を頼んできた真っ赤なドレスの令嬢はカイル殿下に縋りつき訴え続けていた。
“何故、自分を選ばないのか”と。
そして、幻姫を「幽霊姫」と罵った瞬間…
カイル殿下から、恐ろしいほどの殺気が放たれた。
「…黙れ」
「ひっ…、わ、わ、わたくしは…」
「黙れと言ったのがわからぬか。下がれ…」
「で、ですが…「下がれ」」
次の瞬間、カイル殿下の周りにメラメラと燃え上がる炎が出現した。
そのまま彼は、もう一度彼女にはっきりと分からせるように言葉を発した。
「下がれ」と。
この時、ココは初めて彼が武力の強いこの火の国で【最強】と言われる所以を知った気がした。
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