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火の国【アレース】
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「シエルの容態は?」
「はっ、それが…未だ熱が下がらず毒消しの薬が全く効いていない状態でございます」
「そうか…国中の土の民に声をかけ、少しでも治癒力を持っているものを探し出せ!」
「はい、かしこまりました」
シエルが突然倒れて、既に5日が経とうとしていた。
王族の避暑地として利用している国の南東に、小さな島がある。
毎回、こちらに遊びにきてはシエルは数人の従者を引き連れて色々な場所へと遊びに出掛けていた。
帰ってくるやいなや、一目散に駆け寄ってきては「あそこに行ってきたわ!」「あちらでは、こういうの食べたのよ!」と、手振り身振りで教えてくれる。
今回も、同様だった。
しかし、朝出かけて日が傾く前に戻ってきたシエルの様子は、明らかに違っていた。
本人も「疲れたから、すぐ休みます」と言い、すぐに寝所へと向かった。
しかし、翌朝容態は悪化していた。
高熱を出し、意識がない。
急ぎ、医師に診てもらうと「毒の反応が見られる」との事だった。
しかし、一体何の毒かが分からない。
寝る前の食事はとっていない。
ならば、毒を盛られたのは出先でのはずだ。
すぐに、調べさせたものの毒を盛られた形跡を見つけることはできなかった。
そうなると、残る可能性は毒持ちの生物との接触だった。
噛まれたのか、刺されたのか、触れただけなのか…
それすらも、症状が出ておらず判断できなかった。
そして、3日間程経つと高熱でうなされているシエルの身体から発疹のようなものが出始めた。
その症状から、ヤドクガエルという毒ガエルに接触した可能性が有ると診断された。
ヤドクガエルの体に触れた直後で有れば、すぐにその種類を確認し、解毒できるので問題ないのだが、丸一日経つと体内に毒がまわってしまう為、毒の強さの判別がつかなくなる。ましてや、カラフルなヤドクガエルは体の色により使用される解毒剤が変わってくる。
シエルが、どの色のヤドクガエルに触れたのか分からない今、下手に解毒剤を使用することができないのだ。
だから、俺は賭にでた。
"土の民の治癒力"を求めて。
国内にいる土の民の捜索を開始させた。
土の民は保護した、この火の国を良くは思ってくれているはずだ。
しかし、こちらに来た時ほとんどの者が力を隠したとされている。
その力が原因で祖国が滅んだのだ。
隠そうとして、当然だろう。
恐らく、探し出すのは難しいだろう。
セスが良く言っていた意味が、今なら良くわかる。
『なぁ、カイル。
土の国の民とは、仲良くしておけよ~。能力を持たない者でもいい。だが、1人だけでも顔見知りができれば、土の民は絶対に見殺しにはしない』
『それなら、大丈夫だ。セスがいるからな♪』
『だから、俺じゃなくて…民とだよ』
『まぁ、いざとなればセリーナもいるしな』
『幻姫ね…そうさせてもらうよ!』
半信半疑で聞いている俺に対し、セスは最後まで"土の民と触れ合っとけよ"と何度も釘を刺していた。
それでも、俺は心のどこかで"セスがいるから"と思っており、楽観視していた。
ふと窓の外に視線をやると、誰もいない庭が見える。
いつもこの時間なら、シエルが走り回っているのに…
「…なぁ、セス。お前の言うとおりだった。
お前も幻姫もいなければ、俺は…妹さえも助けてやれない。
ただの、愚兄だ…」
そう呟くと、カイルは悔しそうに拳を打ち付けた。
「はっ、それが…未だ熱が下がらず毒消しの薬が全く効いていない状態でございます」
「そうか…国中の土の民に声をかけ、少しでも治癒力を持っているものを探し出せ!」
「はい、かしこまりました」
シエルが突然倒れて、既に5日が経とうとしていた。
王族の避暑地として利用している国の南東に、小さな島がある。
毎回、こちらに遊びにきてはシエルは数人の従者を引き連れて色々な場所へと遊びに出掛けていた。
帰ってくるやいなや、一目散に駆け寄ってきては「あそこに行ってきたわ!」「あちらでは、こういうの食べたのよ!」と、手振り身振りで教えてくれる。
今回も、同様だった。
しかし、朝出かけて日が傾く前に戻ってきたシエルの様子は、明らかに違っていた。
本人も「疲れたから、すぐ休みます」と言い、すぐに寝所へと向かった。
しかし、翌朝容態は悪化していた。
高熱を出し、意識がない。
急ぎ、医師に診てもらうと「毒の反応が見られる」との事だった。
しかし、一体何の毒かが分からない。
寝る前の食事はとっていない。
ならば、毒を盛られたのは出先でのはずだ。
すぐに、調べさせたものの毒を盛られた形跡を見つけることはできなかった。
そうなると、残る可能性は毒持ちの生物との接触だった。
噛まれたのか、刺されたのか、触れただけなのか…
それすらも、症状が出ておらず判断できなかった。
そして、3日間程経つと高熱でうなされているシエルの身体から発疹のようなものが出始めた。
その症状から、ヤドクガエルという毒ガエルに接触した可能性が有ると診断された。
ヤドクガエルの体に触れた直後で有れば、すぐにその種類を確認し、解毒できるので問題ないのだが、丸一日経つと体内に毒がまわってしまう為、毒の強さの判別がつかなくなる。ましてや、カラフルなヤドクガエルは体の色により使用される解毒剤が変わってくる。
シエルが、どの色のヤドクガエルに触れたのか分からない今、下手に解毒剤を使用することができないのだ。
だから、俺は賭にでた。
"土の民の治癒力"を求めて。
国内にいる土の民の捜索を開始させた。
土の民は保護した、この火の国を良くは思ってくれているはずだ。
しかし、こちらに来た時ほとんどの者が力を隠したとされている。
その力が原因で祖国が滅んだのだ。
隠そうとして、当然だろう。
恐らく、探し出すのは難しいだろう。
セスが良く言っていた意味が、今なら良くわかる。
『なぁ、カイル。
土の国の民とは、仲良くしておけよ~。能力を持たない者でもいい。だが、1人だけでも顔見知りができれば、土の民は絶対に見殺しにはしない』
『それなら、大丈夫だ。セスがいるからな♪』
『だから、俺じゃなくて…民とだよ』
『まぁ、いざとなればセリーナもいるしな』
『幻姫ね…そうさせてもらうよ!』
半信半疑で聞いている俺に対し、セスは最後まで"土の民と触れ合っとけよ"と何度も釘を刺していた。
それでも、俺は心のどこかで"セスがいるから"と思っており、楽観視していた。
ふと窓の外に視線をやると、誰もいない庭が見える。
いつもこの時間なら、シエルが走り回っているのに…
「…なぁ、セス。お前の言うとおりだった。
お前も幻姫もいなければ、俺は…妹さえも助けてやれない。
ただの、愚兄だ…」
そう呟くと、カイルは悔しそうに拳を打ち付けた。
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