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火の国【アレース】

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チュンチュン…チュン…

鳥のさえずりで目を覚ますと、今日も1日が始まる。


…ん!?
鳥の


そんなもの、今まで聞いたことあったかな?

そう、思った瞬間…
下腹っに、鈍い痛みが走った。
慌てて起きあがろうとすると、なんだか腰も痛い。

そして、メイド寮の宿舎とはかけ離れている上質な布団に触れた瞬間、走馬灯の様に全てを思い出した。

呆然としながらも、ハッとして自分の身体を覗き込んだ。
案の定、一糸纏わぬ姿の自分がいる。

そして、記憶通りであれば隣にいるのは間違いなく…

「あぁ…やっぱり…」

だった。


隣で、スヤスヤと寝息を立てているその人こと、王太子カイル殿下だ。


頭の中で、しまったなぁ~と思いつつも慌てて脱ぎ散らかった服を着た。
そして、何事もなかったかの様にベッドを整えると、急いで王太子宮を後にした。

大地に問い掛ければ、見回りの兵達と会うことも無く寮に戻れる。

「ベッドも直した。服も綺麗に畳んでクローゼットへ戻したから、誰かと一夜を共にしたなんて分からないはず!」

そう、自分で納得した後シャワーを浴びてメイド服に着替えた。

痛みは、自分自身に治癒をかけたから大丈夫なはずだ。
そして、気を取り直して職場である王女宮へと向かった。



この時、ココは全く気づいていなかった。
王太子であるカイルが寝ていたシーツに、純潔を散らした証の、赤い印が残っていたことを…。



***

そして、その頃…

王太子宮では、この部屋の主人であるカイルが頭を押さえながら目を覚ました。

ひどい二日酔いである。
昨晩開かれた晩餐会で、今は亡き友人の話を出してからと言うもの、心無い周りの声をかき消す様にして浴びる様に酒を飲んでしまった。

何でも当たり障りなくこなしてしまうアイツとの約束…

『なぁ、カイル!俺の妹を嫁にしないか?』

『はぁ!?お前の妹って言ったら…治癒力の高いと噂の、あの幻姫だろ?
…なんで俺なんだよ?引くて数多だろーに?』


『いや、俺は絶対にお前と一緒になることを勧めるね♪』


『だから、何でだよ?』

『それは…まぁ、一度話せばわかると思うよ!今度のセリーナの誕生会にはお前を招待するから、絶対来いよ?』

『あぁ、わかったよ…。
ところで、お前の妹にって何をあげればいいんだ!?』

『はははっ!あいつは何でも喜ぶぞ♪』

『何でもって…一番難しいぞ?』

『本当に何でもいいさ!
…それより、カイル』

『ん?どーした?』

『万が一、俺に何かあったら妹を…
セリーナを頼む』

『…は?何かって、何だよ?』

『はははっ!とりあえず約束だぞ!
それで、何を贈るかは決まったのか?』

『…っ、まだだよっ!!!』


そう言って、笑いあった事がアイツとの最後の会話になるなんて思いもいなかった。

カイルは、日差しが差し込み始めた窓に目をやるとそっと呟いた。


___なぁ、セス。すまない。お前の妹、まだ見つけれてないんだ…
でも、必ずお前との約束は守る。だから、もう暫く待っててくれよ。


そう、新たになき親友へ誓うとバサリと布団をめくり上げた。
そして、着替えに向かおうと立ち上がった瞬間…
自分が何も着ていないことに気づいた。

晩餐会の後の事は、正直よく覚えていない。

しかし、明らかに可笑しいことにも気づく。

シーツは異様な程、綺麗に整えられており昨日着ていた服までもが綺麗に畳んで置かれていた。

王太子であるカイルの宮では、夜這いにやってくる令嬢を避けるために、夕食後はメイドの立ち入りを一切禁じていたのだ。

その為、大抵は脱いだ服をソファーや床に脱ぎ捨てておき、朝来るメイドが片付けるのである。

カイルは、ふと気づくとすぐ様、ベッドの上の布団をめくり上げた。

するとそこには…
自分が奪ったであろう、赤い印がしっかりと残っていた。







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