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プロローグ ~昔話~
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「お産まれになった姫様は、風の属性でございます」
「…な、なんだと?」
その報告に、王子は腕に抱いた娘を見た。
姿は、火の属性特有の赤い髪をしている。
それなのに…属性は"風"だなんて。
不思議そうに抱いていた赤ん坊を覗き込むと、その子がそっと目を開けた。
その子は、火の属性を司る赤い目ではなく、愛する妻と一緒の澄み切った美しい緑の目を受け継いでいた。
新たな孫が産まれたと報告を聞いた、火の国の王は安堵し、風属性との報告には飛び上がるほど喜んだそうだ。
そして、それぞれの国同士の婚約が盛んに行われるようになると、受け継がれる属性に関して色々とわかってきた。
まず、受け継がれる属性は両親の属性のどちらかであり、それは"子供を産む国に左右される"という事だ。
要するに、嫁ぎ先で産めばその国の属性に。
風の王女のように実家に戻って産めば、その国の属性を受け継ぐことになるのだ。
しかし、例外ももちろん存在する。
それは、両親どちらでもない国で産んだ場合だ。
その場合、より強い家系の属性寄りになるらしい。
王族直径と隣国の伯爵系とであれば、王族直径の属性になるという事だ。
特に、平民なども属性は必ず持ってはいるもののとても微弱だ。
その為、どうしても平民同士であっても系列の濃い方の属性に寄りやすくなる。
そして、もう一つだけ例外があった。
それは、【クロノス】と呼ばれる土の国の王族達だ。
もともと、土の国の女達の中には、稀に不思議な力を持つものが産まれる。
それは、各属性とも関係の無いもので土属性特有のものらしい。
その稀な力とは、治癒能力のことだ。
その力を持つ女性達が、怪我や病に臥せっている者に触れると、忽ち回復をみせる。
もちろん、その怪我や病の程度にもよるが、その力の恩恵は計り知れなかった。
その中でも、特に力が強く現れる者たちがいる。
それが、土の国の王族の姫君達だ。
彼女達の治癒力は、他の女性たちとは比べ物にならないほど強く、どんな万仏の病でも治してしまう程だった。
そして、そんな姫達の中でも最も力のある者には、それを称えるかのように身体のどこかに花が咲く。
正確には、花の紋章が浮かび上がるのだ。
そして、驚くことに紋章持ちの姫達だけは、願うだけで、どこにいても希望の属性の子を産むことができた。
その為、大きな力を持つ王族の姫は他国の王子達にとても人気が高かった。
そして、それは土の国の女性にも言えることだった。
特に、治癒力が少しでもあれば平民でさえも他国の貴族との婚姻が結ばれたりなど、とても人気が高かった。
しかし、それに応じて他の国による誘拐なども年々増えてきていた。
そして、後にこの人気ぶりから恐ろしい事件が発生する。
「…な、なんだと?」
その報告に、王子は腕に抱いた娘を見た。
姿は、火の属性特有の赤い髪をしている。
それなのに…属性は"風"だなんて。
不思議そうに抱いていた赤ん坊を覗き込むと、その子がそっと目を開けた。
その子は、火の属性を司る赤い目ではなく、愛する妻と一緒の澄み切った美しい緑の目を受け継いでいた。
新たな孫が産まれたと報告を聞いた、火の国の王は安堵し、風属性との報告には飛び上がるほど喜んだそうだ。
そして、それぞれの国同士の婚約が盛んに行われるようになると、受け継がれる属性に関して色々とわかってきた。
まず、受け継がれる属性は両親の属性のどちらかであり、それは"子供を産む国に左右される"という事だ。
要するに、嫁ぎ先で産めばその国の属性に。
風の王女のように実家に戻って産めば、その国の属性を受け継ぐことになるのだ。
しかし、例外ももちろん存在する。
それは、両親どちらでもない国で産んだ場合だ。
その場合、より強い家系の属性寄りになるらしい。
王族直径と隣国の伯爵系とであれば、王族直径の属性になるという事だ。
特に、平民なども属性は必ず持ってはいるもののとても微弱だ。
その為、どうしても平民同士であっても系列の濃い方の属性に寄りやすくなる。
そして、もう一つだけ例外があった。
それは、【クロノス】と呼ばれる土の国の王族達だ。
もともと、土の国の女達の中には、稀に不思議な力を持つものが産まれる。
それは、各属性とも関係の無いもので土属性特有のものらしい。
その稀な力とは、治癒能力のことだ。
その力を持つ女性達が、怪我や病に臥せっている者に触れると、忽ち回復をみせる。
もちろん、その怪我や病の程度にもよるが、その力の恩恵は計り知れなかった。
その中でも、特に力が強く現れる者たちがいる。
それが、土の国の王族の姫君達だ。
彼女達の治癒力は、他の女性たちとは比べ物にならないほど強く、どんな万仏の病でも治してしまう程だった。
そして、そんな姫達の中でも最も力のある者には、それを称えるかのように身体のどこかに花が咲く。
正確には、花の紋章が浮かび上がるのだ。
そして、驚くことに紋章持ちの姫達だけは、願うだけで、どこにいても希望の属性の子を産むことができた。
その為、大きな力を持つ王族の姫は他国の王子達にとても人気が高かった。
そして、それは土の国の女性にも言えることだった。
特に、治癒力が少しでもあれば平民でさえも他国の貴族との婚姻が結ばれたりなど、とても人気が高かった。
しかし、それに応じて他の国による誘拐なども年々増えてきていた。
そして、後にこの人気ぶりから恐ろしい事件が発生する。
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