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第6章 悪徳盛り土業者をやっつけろ!

第6話 過積載で恫喝

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「えーっ!話が違うじゃない何でパンツスタイルなのー?」

 天衣のミニスカポリス姿を期待して頑張っていたのに、これでは話が違うじゃないか!

「今時スカートの制服警官がどこにいるのよ!いつの時代の話をしているのよ。普通の警察の制服はこんな感じでしょ」

 期待したのと違っていたが、まあでもこれはこれで可愛いからいいっか!

 華鈴はその後私の取り付けたセンサーから、トラックの持ち主達を次々とあぶり出していた。

 どうやら敵は搬出業者、運搬業者、搬入業者、土地管理者と全く違う組織が運営していることが分かった。

 コイツ等全員を締め上げなくてはいけないとのこと。なんだか忙しくなってきたぞー。お前等の家、土砂で埋め尽くしてやるから覚悟しておけ。

「それでどうするの?」

「取り敢えず運搬業者を過積載の道路交通法違反で捕まえる。捕まえて懲役刑になりたくなかったら協力しろと言って、搬出業者、搬入業者、土地管理者の土地に盛り土されている土砂を運搬業者に運ばせる」

「悪どいこと考えるわねー」

 本当にいつもながら感心する。

「それでどうするのよ?生き埋めにするの?」

「知ってる顔を生き埋めにするのは運搬業者も気が引けるだろうから、やっちゃっていいわよ」

「やっちゃってってどうやって?」

「煮るなり焼くなり勝手にしてちょうだい」

 煮るなり焼くなりって!どうにでもしていいってこと?

 さーてどうしたものか。

「じゃーん!華鈴はそう言って私に地図を突きつけてきた。

 ??

「これはね運搬業者の明日のルートよ。このルートのどこかで待ち伏せて、取締りしているって言って計量器に乗せ、過積載に違反しているって言ってやる」

「過積載じゃなかったらどうするのよ?」

「過積載してるに決まってるでしょ。たとえしてなくても偽造するわよ」

 悪い奴だなー。

 そう言う感じで始まった第一プラン。運搬業者をとっ捕まえて恫喝する作戦。

 まず私が測定器を用意している場所の1キロほど手前で待ち構え、来たら華鈴に連絡し、梨名が駐車場に招き入れる。

 招き入れたところで華鈴と天衣がドライバーに詰め寄る寸法だ。

 私達が待ち構えているとも知らず、運搬業者のトラックは今日も3台連なって走ってきた。通り過ぎた事を確認するとすぐに後を追いかけ、招き入れる場所へと急ぐ。

 今日も沢山の土砂を積んでいるようだった。これも何処かの違法な盛り土に運んでいくつもりなのだろうか。

 走ってきたところを警察の制服を着た梨名が誘導灯を振り駐車場へ誘導する。3台は抵抗する様子もなく誘導されるがまま駐車場へと入って行った。

 ここまでは素直に従ってくれているようだった。

「なんだよ!急いでんだよっ!」

 止められたことにイラだったのだろう。停車して華鈴、天衣の姿を確認すると怒鳴り声を上げた。

 先頭のドライバーは角刈りで口髭を生やした小太りの男性だった。後方の2台は茶髪の若い兄ーちゃんだった。

 先頭の男は威勢がいいようだが、2人の若者は警察に止められたことにかなり驚いてしまっているのだろう。オドオドし萎縮しているように思われる。

「急いでるじゃないわよっ!このトラック過積載だろっ!道路交通法知らないのかっ!」

 誘導を終えた梨名と目を合わせてしまった。いつもの引きこもっている華鈴からは想像もできないような怒声だった。

 華鈴が先頭のドライバーに詰め寄り、天衣が後ろに控える。私が2台目のトラックの脇に立ち、梨名が3台目のトラックの脇に立った。

「はー?なんで過積載しているって分かんだよ!違かったら責任取れるんだろーなー!」

 トラックを停止させた警官が女性だと分かったからなのか、それともトラックに荷物を積んだまま丸ごと測れる測定器があるなんて知らないからなのか、運転手はやたら強気だった。

「サスペンション下がり切ってんだろ!規定の積載量超えてなかったらこんな感じになる訳ねーだろ!そんなのも知らないでトラックドライバーしてんのか!知らないなんて通らねーぞ!」

 華鈴は一歩も引かずドライバーに詰め寄る。その迫力にドライバーはすくみ上がってしまったようだった。

 華鈴のクセに珍しくドスの効いた声を上げてくれるじゃないか。

「いや、こ、これは搬出業者が規定内だと言ってたからそれを信じていただけで」

「はー!そんな言い訳通ると思ってんのかっ!免許証見せろっ!」

 華鈴の迫力に押されたからなのか、それとも言い逃れできないと察したからなのかドライバーは素直に従って免許証を提示する。

「大型とって何年だ!」

「に、20年です」

「20年も経ってんなら自覚あったよな?」

「いえ、だから、その、、」

「だからテメーは何年ドライバーやってんだよ!いつもより重くなっているかどうかも分からないほど、しょうもないレベルなのかお前は!20年も運転しててそんなのも分からないのかっ!」

 華鈴は畳み掛けるように攻め立てる。

 トラックドライバーは事故無く、問題なく、長年荷物を運んだことにより信用を得られる。信用を損なうようなことになってしまったら、今後のドラーバーとしての価値を損ないかねない。

 20年もドライバーをしてきて、しょーもないレベルなんてレッテルは貼られたくはないだろう。

 人の嫌がるようなところを巧みにつく華鈴の意地汚さが滲み出ていた。

「こんなの完全に過積載って分かるが、念のため測ってやるから測定器の上までトラック進めろ」

 華鈴にそうドヤされドライバーは測定器の上に渋々トラックを進めた。

「このトラックの最大積載量はいくらだ!」

「9.2トンです」

「そうだな」

「じゃあこのトラックの車両総重量はいくらだ?」

「20トンです」

「そうだな、じゃあ計量してみた結果何トンになっている!」

「いや、だから、これは、、」

 偽造するまでもなく華鈴の言った通り過積載との結果が出ていた。

 華鈴は畳み掛ける。

「これどういうことだか分かってるのか?3台揃いも揃って過積載なんだぞ。これは重罪だからな。言い逃れできないぞ」

 ドライバーの虚な顔を見て笑いを堪えるのが大変だった。今どんな思いで華鈴の叱責を受けているのだろうか。

「ですから、我々は搬出業者さんの申告を信じたまでで」

「だから、貴様等は何年ドライバーやってんだよ。こんだけ車体が下がってるのになんで規定内だと思ったんだっ!重量オーバーなんじゃないかって思わなかったのかーっ!」

「す、すいません、ウチも不景気なんで、仕事断れる立場にないんですよ」

「知るかーっ!なんでテメーの都合で他の皆んなが、危険に晒されないといけないんだよ!過積載でブレーキ効かなくなったり、カーブ曲がりきれなくて事故になったらどう責任とんだっ!」

「大きな事故起こす前に捕まってありがたかったと思えっ!」

「は、はい、すいません、ところで私達これからどうなるんでしょうか?なんとかなりませんかね?」

「なるかーっ!さっきも言ったけどこれは重罪だからな、罰金刑で済むと思うなよ。これは懲役刑ものだからな!」

「懲役刑って!マジですか!?」

「テメーに家族がいるかどうか知らないけど、家族がいたら大変だな。テメーが刑務所に入っている間、収入0だな、どうすんだ!」

「ちょっと、ちょっと、それだけは勘弁してくださいよー!ウチの倅まだ小さくて育ち盛りなんですよ。それだけは勘弁してください」

「知るかーっ!じゃあなんでこんなことしたんだーっ!貴様ちゃんと反省してんのかーっ!」

「は、はい、すいません」

 あはは、怖っ!

 華鈴は徹底的に追い込んで言うことを聞くようにさせようとしているみたいだが、あまりにもすごい剣幕なのでなんだか可哀想になってきてしまった。

 若い2人は叱責されているドライバーを見て、真っ青になって震え上がっているようだった。
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