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第4章 悪徳結婚相談所をやっつけろ!
第7話 ケバ女
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「あなたは株で儲けて資金が豊富にあるって言っときなさい」
株?株で儲けたとか、損したとかってたまに聞くけど、私はいまいち株というのがどういうものなのか分かっていないので困惑の表情を浮かべていると、華鈴は呆れたように大きく溜息を吐いた。
「専門的なこと聞かれたら私が指示するから、あなたはそのまま言えばいいから」
「そんなんで大丈夫なのー?」
「大丈夫よ。金の亡者ならきっと喰いついてくるわよ」
「そう言っても全額投資するとは限らないじゃない」
「大丈夫よ。アイツのスマホ、ハッキングして儲かっているように見せるから」
ああ、なるほど!
華鈴が言うにはスマホがあれば証券会社に口座を作れて、スマホひとつで株の取引なんて簡単にできるとのことだった。
スマホをハッキングしてアイツには儲かっている画面を表示させて勘違いさせ、どんどん投資額を増やさせようという作戦だった。
株で大儲けしたと言ってお金に糸目も付けず惜しみなく使っている私が『この株が今は買い時よ』なんて言ってきたら、金の亡者のあの女社長が喰いつてこないはずがない。
株取引をさせて、儲けていると思わせて、実は華鈴が奪い取っているなんていう筋書きを描いているようだった。
「良い作戦だと思うけど、私お金ないよ。動物保護施設に寄付しちゃったから」
「良いのよ。その女社長の口座から引き落とされるクレジットカード作っちゃったから。遠慮なくどんどん使ってしまいなさい」
「わっるいやつだなー。じゃあ、私が浪費すればするほど女社長の口座から引き落とされるってこと?」
「そうよ。体育会系のあなたにも出来る事でしょ」
「誰が体育会系よ!私はれっきとしたリケ女よ!」
「はい、はい」
「それより相談所に顧客として普通に訪れて、どうやって女社長と知り合うのよ?」
女社長のスケジュールと行動パターンは教えてもらったが、接客は女社長の仕事ではない。通常は奥の事務所で仕事をしているのだろうから接触の機会はないと思われる。
「ちょっとした仕掛けしておいたから、向こうから接触してくるわよ」
「仕掛け?」
華鈴の話では女社長が好んで読んでいる経済誌があるのだそうだ。その経済誌には今月の注目人物をピックアップするコーナーがあり、そこに私が株で大儲けし財を成したと掲載されているんだとか。
「私、雑誌の取材なんて受けてないわよ」
「当たり前でしょ。全部私が作ったんだから」
「は?」
何でも写真と名前を私に代えた特別性のものを用意し、女社長に渡してあるのだとか。
株で大儲けした人がいる。それが私で、その私が自分のとこの顧客で、お金に糸目も付けず高額商品をどんどん買っているということを知る。金の亡者の女社長は当然どうやって儲けたのか気になって接触してくる。というのが華鈴の考えたものらしい。
「本当に大丈夫なの?」
疑問に思っていたのだが、正面口に女社長のものと思われる高級車が停まった。
今日この時間に私が相談所を訪れるという事は、予約を入れていたので当然耳には入っていたのかもしれないが、本当に私目当てで来たのだろうか?
てか普通に高級車で正面口前に乗り付けて来るんかい!
車から悪びれる様子もなくのうのうと、降りてきた女の顔を確認すると私は心の中でツッコミを入れずにはいられなかった。
運転は自分でしてきたようだが、正面口で降りると、キーをボーイ風の男に渡した。車はボーイ風の男が裏の駐車場まで運んで行くようだ。ここは高級ホテルかよ!とまたツッコんでしまった。
女は秘書風の女に出迎えられ、正面口から堂々と入って来る。お客さんがいるんだぞ!普通は遠慮するだろ!
呆れたー。自己顕示欲もここまでくると病気よね。あー、完璧にあれはターゲットの女社長じゃん。
若づくりしやがって、ケバくなっているって自覚ないんかい!笑っちゃうほど分かりやすいセレブ感出してやがって。ケバ女!
「おはようございます」
「おはよう」
従業員達はそのケバ女に次々と頭を下げていく。誰かやり過ぎていて気持ち悪くなってますよって教えてやれよ。
「くっさ!!」
ケバ女が入ってきた瞬間、キツめの香水の匂いが広がった。誰か臭いですよって教えてやれよ。
一人の秘書が近づいていき、女社長に何か耳打ちし出した。
臭いですとでも言っているのかな?
私の方をチラッと見た後こちらに近づいてくる。
臭い、臭い、言ってるの聞こえてしまった?怒られる?
「田渕飛奈さんですよね?先日発売になった週刊誌見ました。是非、握手させてください」
鼻が曲がりそうなのを我慢し、いきなり訪れた絶好のチャンスを逃す訳にはいかないと思い、媚びた声を上げ私も親しげな感じで「いつもお世話になってます」と返す。
「田渕飛奈さん、この度は当相談所のご利用ありがとうございます」
バカ女め、本当に単純な奴だ。華鈴がでっち上げた、嘘雑誌をあっさりと信用したのかよ。
「いいえー、こちらこそお世話になります。まずは自分磨きから始めようと思ってまして」
「そうですか、当社には優秀な講師が揃っておりますので、きっと有意義な時間になると思います」
「はい、期待してます。私はどうもせっかちでガサツで貧乏性なものでそれが改善できれば、素敵な出会いに巡り合えると思ってます」
「飛奈さんならきっと大丈夫ですよ」
「まあ、ありがとうございます。有難いことに資金面では苦労することがなくなりましたので、後は素敵な家庭が出来ればなと思ってますので、よろしくお願いします」
「そうなんですか?株取引ってそんなに儲かるものなんですか?」
ついに本性出して来やがったな、ケバ女が!
「いえいえ、攻略法がたまたま上手くいって、上昇株を手に入れることができまして」
「是非ともその攻略法というものをお聞きしたいですね」
私のその言葉を聞いた女社長はかなり興味津々だったようだ。第一段階はクリアといったところだろうか。
きっとゆっくり話がしたいと思っているはずだ。もしくは私から搾り取れるだけ搾り取ろうと考えたか。
今まで散々未来ある女性の笑顔を奪ってきたんだ。必ず地獄に落としてやる。
株?株で儲けたとか、損したとかってたまに聞くけど、私はいまいち株というのがどういうものなのか分かっていないので困惑の表情を浮かべていると、華鈴は呆れたように大きく溜息を吐いた。
「専門的なこと聞かれたら私が指示するから、あなたはそのまま言えばいいから」
「そんなんで大丈夫なのー?」
「大丈夫よ。金の亡者ならきっと喰いついてくるわよ」
「そう言っても全額投資するとは限らないじゃない」
「大丈夫よ。アイツのスマホ、ハッキングして儲かっているように見せるから」
ああ、なるほど!
華鈴が言うにはスマホがあれば証券会社に口座を作れて、スマホひとつで株の取引なんて簡単にできるとのことだった。
スマホをハッキングしてアイツには儲かっている画面を表示させて勘違いさせ、どんどん投資額を増やさせようという作戦だった。
株で大儲けしたと言ってお金に糸目も付けず惜しみなく使っている私が『この株が今は買い時よ』なんて言ってきたら、金の亡者のあの女社長が喰いつてこないはずがない。
株取引をさせて、儲けていると思わせて、実は華鈴が奪い取っているなんていう筋書きを描いているようだった。
「良い作戦だと思うけど、私お金ないよ。動物保護施設に寄付しちゃったから」
「良いのよ。その女社長の口座から引き落とされるクレジットカード作っちゃったから。遠慮なくどんどん使ってしまいなさい」
「わっるいやつだなー。じゃあ、私が浪費すればするほど女社長の口座から引き落とされるってこと?」
「そうよ。体育会系のあなたにも出来る事でしょ」
「誰が体育会系よ!私はれっきとしたリケ女よ!」
「はい、はい」
「それより相談所に顧客として普通に訪れて、どうやって女社長と知り合うのよ?」
女社長のスケジュールと行動パターンは教えてもらったが、接客は女社長の仕事ではない。通常は奥の事務所で仕事をしているのだろうから接触の機会はないと思われる。
「ちょっとした仕掛けしておいたから、向こうから接触してくるわよ」
「仕掛け?」
華鈴の話では女社長が好んで読んでいる経済誌があるのだそうだ。その経済誌には今月の注目人物をピックアップするコーナーがあり、そこに私が株で大儲けし財を成したと掲載されているんだとか。
「私、雑誌の取材なんて受けてないわよ」
「当たり前でしょ。全部私が作ったんだから」
「は?」
何でも写真と名前を私に代えた特別性のものを用意し、女社長に渡してあるのだとか。
株で大儲けした人がいる。それが私で、その私が自分のとこの顧客で、お金に糸目も付けず高額商品をどんどん買っているということを知る。金の亡者の女社長は当然どうやって儲けたのか気になって接触してくる。というのが華鈴の考えたものらしい。
「本当に大丈夫なの?」
疑問に思っていたのだが、正面口に女社長のものと思われる高級車が停まった。
今日この時間に私が相談所を訪れるという事は、予約を入れていたので当然耳には入っていたのかもしれないが、本当に私目当てで来たのだろうか?
てか普通に高級車で正面口前に乗り付けて来るんかい!
車から悪びれる様子もなくのうのうと、降りてきた女の顔を確認すると私は心の中でツッコミを入れずにはいられなかった。
運転は自分でしてきたようだが、正面口で降りると、キーをボーイ風の男に渡した。車はボーイ風の男が裏の駐車場まで運んで行くようだ。ここは高級ホテルかよ!とまたツッコんでしまった。
女は秘書風の女に出迎えられ、正面口から堂々と入って来る。お客さんがいるんだぞ!普通は遠慮するだろ!
呆れたー。自己顕示欲もここまでくると病気よね。あー、完璧にあれはターゲットの女社長じゃん。
若づくりしやがって、ケバくなっているって自覚ないんかい!笑っちゃうほど分かりやすいセレブ感出してやがって。ケバ女!
「おはようございます」
「おはよう」
従業員達はそのケバ女に次々と頭を下げていく。誰かやり過ぎていて気持ち悪くなってますよって教えてやれよ。
「くっさ!!」
ケバ女が入ってきた瞬間、キツめの香水の匂いが広がった。誰か臭いですよって教えてやれよ。
一人の秘書が近づいていき、女社長に何か耳打ちし出した。
臭いですとでも言っているのかな?
私の方をチラッと見た後こちらに近づいてくる。
臭い、臭い、言ってるの聞こえてしまった?怒られる?
「田渕飛奈さんですよね?先日発売になった週刊誌見ました。是非、握手させてください」
鼻が曲がりそうなのを我慢し、いきなり訪れた絶好のチャンスを逃す訳にはいかないと思い、媚びた声を上げ私も親しげな感じで「いつもお世話になってます」と返す。
「田渕飛奈さん、この度は当相談所のご利用ありがとうございます」
バカ女め、本当に単純な奴だ。華鈴がでっち上げた、嘘雑誌をあっさりと信用したのかよ。
「いいえー、こちらこそお世話になります。まずは自分磨きから始めようと思ってまして」
「そうですか、当社には優秀な講師が揃っておりますので、きっと有意義な時間になると思います」
「はい、期待してます。私はどうもせっかちでガサツで貧乏性なものでそれが改善できれば、素敵な出会いに巡り合えると思ってます」
「飛奈さんならきっと大丈夫ですよ」
「まあ、ありがとうございます。有難いことに資金面では苦労することがなくなりましたので、後は素敵な家庭が出来ればなと思ってますので、よろしくお願いします」
「そうなんですか?株取引ってそんなに儲かるものなんですか?」
ついに本性出して来やがったな、ケバ女が!
「いえいえ、攻略法がたまたま上手くいって、上昇株を手に入れることができまして」
「是非ともその攻略法というものをお聞きしたいですね」
私のその言葉を聞いた女社長はかなり興味津々だったようだ。第一段階はクリアといったところだろうか。
きっとゆっくり話がしたいと思っているはずだ。もしくは私から搾り取れるだけ搾り取ろうと考えたか。
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