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第1章 悪徳研究者をやっつけろ!
第17話 梨名VS保乃
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「保乃、状況判断を間違えるなよ。相手は自動小銃をぶっ放してくるような奴等だ。何してくるか分からん」
「分かってます。でも私に考えがあります。班長、今は私の指示に従ってもらえますか?」
「了解だ」
私の強い言葉に、班長は強く頷いてくれた。私の事を信頼してくれているのだろう。ありがとうございます。
この施設の図面は全て頭に入っている。
目的の部屋の上へと移動し手摺にロープを掛け降下する準備を手早く済ませると、班長と目を合わせる。
廊下側から行ったら待ち伏せがあるかも知れない。窓側から行くべきだと考えた。
準備が出来たことを確認すると、軽く頷きタイミングを合わせ一気に二階へ向け降下した。
降下し二階のベランダに降りようとした時、銃声が響き渡った。その音を聞いた私達はベランダには降りず、窓を蹴破り部屋へと飛び込んだ。飛び込むと同時に身を屈め、近くのテーブルに身を隠して中の様子を伺う。
部屋内は二部屋に区切られていた。こちら側には窓と廊下へのドアが有り、オフィスデスクが並んでいる。
オフィスデスクは三、三で向かい合い、その六つが一括りとなったものが四つほど並んでいた。別の括りの方に班長が身を隠しているのが見える。
班長の方に視線を送ると、奥の部屋を見るよう促されたのでそちらに視線を移す。奥の部屋には窓や扉は見られず、上半分が大きなガラス窓となった壁でこちらと区切られていてそこに一つ扉がついているだけだった。
棚には幾つもの薬品瓶が並び、試験管などの実験器具が見られる。こちらの部屋は事務的な作業をする部屋、向こうが実験室になっているそんなところだろうか。
そして銃を持った女性の姿が、私の目に飛び込んできた。
唯一と思われるドアに身を屈めながら班長と共に素早い動きで近づくと、ドアを開け一気に中に飛び込んだ。中に入ると硝煙の臭いと血の臭いが鼻を付いた。
「手を上げろ!」
窓を蹴破り、中を確認、敵を一瞬で識別し銃口を向け威嚇する。我々の素早い動きに中にいた者は虚を突かれ、反応する間もなかったのだろう。
素直に従い銃を捨て手を上げた。
足元には既に何発かの銃弾を浴び、横たわり動かなくなっている高畑達也の姿が見えた。
生存は絶望的のようだ。
「貴様―!なぜ、こんな真似をした!」
そう言いながら立ちすくむ女性との距離をジリジリと詰める。
この優位な状況にも警戒を解くことはしないまま、私も班長の後に続く。
こいつの仲間に栗林は一撃で殺られてしまった。十分な警戒が必要だ。現にアイツは追い詰められている状況だというのに表情一つ変えてない。それどころか余裕の表情にも見える。
切れ長のネコ目をしたその女性は、耳かけボブで片耳だけだしている。スポーツ女子を思わせる少し浅黒な肌をしていて、モデル並みのしなやかなスタイルをしていた。
私は銃を構えジリジリと近づいて行く班長を制する。もう少し様子を見て慎重に行った方が良い。そう思った。とても追い詰められている者の表情には見えない。絶対何か企んでいる。
その時だった。入ってきたドアがひとりでに締まり、ガラス窓が真っ黒になった。そして、照明が消えた。
「何!?」
窓やドアが無い部屋から光が奪われる。辺りは真っ暗闇に包まれた。一ミリも光がないので視覚が全く役に立たない。
私は持っていた懐中電灯を点けようと手をかけた、、。
「保乃!ダメだー!」
懐中電灯を点けた瞬間班長が飛びかかってきた。
そして、その場に班長の悲鳴が響き渡る。そして、そのあとブンブンと腕を振り回しているような音が響き渡った。
華奢な女性の動きとは思えない音ゆえ、攻撃を受けた後、班長が反撃している音と思えるが、暗闇の中で視覚を遮られているので、音だけが頼り。音だけがその場で何が起こっているか教えてくれていた。
失敗だった。班長に状況判断を間違えるなよと言われたばかりだったのに、、。
懐中電灯を点けようとしたのは余りにも迂闊だった。
真っ暗闇で光を点けてしまえば自分の居場所を知らせているようなもの。その光をめがけ攻撃を仕掛けてきたのだろう。
班長はそれを察知し、私の動きを止めようとしたのだ。その時、敵の攻撃を受け悲鳴を上げたが、致命傷には至らず反撃に転じた。そんなところだろうか。
「班長。大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。大丈夫だから声を出すな、位置を気取られる」
すぐ近くにいるはずの班長の姿すら全く見えない。微かに息づかいが聞こえてくる程度。
しかし、目の前の闇からは息づかいどころか気配すら感じられない。この暗闇の向こうに殺し屋がいると思うとゾッとする。
何メートル先にいるのだろうか?もしかしたら目の前にいるかもしれない。音がでないように注意し、周りを警戒しながらゆっくり手探りで進む。
「ふふふ。音を出さないように注意したって無駄よ。私にはあなた達の位置が手に取るように分かっているんだから」
話ながら動いているのだろう。声の聞こえてくる位置が右から左へと移動していっている。
「あなた達の乱れた呼吸音、鼓動が、あなた達の位置を私に正確に教えてくれている」
何を言っているんだこの女は?
確かに心拍は上がっているだろうが、他人がそれを聞き取れる訳がない。他人の心拍の高鳴りが聞こえるのなら、密かに想いを寄せることなど出来なくなってしまう。
片想いする人はいなくなってしまうことだろう。
嘘だってつけなくなる。疚しいことが有る者はすぐに悟られてしまうようになってしまうだろう。私はハッタリだろうと思い、無視し声の聞こえてくる暗闇を睨み付ける。
「随分丈夫な防護服を着ているのね。ナイフが突き刺さりきらなかったみたいね。でも筋を痛めたのかしら?それとも骨が折れちゃった?腕上がらないみたいね。片腕を押さえフラフラと壁沿いを歩いて何か考えでもあるのかしら?」
私の事じゃない!
班長の現在の様子を言っているのだろうか?
真っ暗闇の中でも班長の正確な状況が分かっているとでもいうのだろうか?
私にはその言葉が当たっているのかどうか知りようもないが、班長は自分の事を言われているなら当たっているかどうか分かっているはず。
聞きたい。聞くべきかどうか迷った。確かめられれば嘘を言っているかどうかハッタリかどうかすぐ分かることなのだが、声を出してしまえば、、。
「残念ながらそいつの言う通りだ」
私の心中を悟ったのだろうか、声を上げる前に班長がそう答えた。
「ぐわーっ!」
その後、悲鳴が響き渡る。
何が起きているというのだろうか?
暗闇に目を凝らすが詳細が全く掴めない。そうこうして私があたふたとしていると、銃声が響き渡り、ガラスが割れる音が響き渡った。
私は咄嗟にその場に身を伏せる。
部屋を仕切っていたガラスが割れ光が入って来る。暗闇から解放され、急に差し込んだ光により視力が一瞬奪われた。
目を細め見えてきた先の光景に私は驚愕した。喉をナイフで切りつけられ血だらけになって動かなくなっている班長の姿が飛び込んで来たのだ。
「あらあら。最後に味な真似してくれるわね」
あの万能な班長が!こんな小娘に殺られたというの?
信じられない!暗闇の中、何の気配も感じさせることなく、何の物音も出すことなく班長に近づきナイフを振り下ろしたのだろうか?
動かなくなっている班長の脇に、血の付いたナイフを持ち女は仁王立ちしていた。
おそらく班長は最後の力を振り絞り、銃でガラスに傷をつけガラスに体当たりし、仕切っていたガラスを割り隣の部屋に飛び込んだのだろう。
真っ暗闇では分が悪い、私も殺されてしまうと思って最後の力を振り絞っての行動だったのだろう。
「ちっくしょーっ!」
頭の中を走馬灯のように、班長との記憶が駆け巡る。
班長の訓練は厳しかった。女性だからといって甘やかされる事は一切なかった。
女性隊員だからこそ、こなせる危険な任務があるのではないかと、私を厳しく指導してくれた。
さまざまな記憶、思いが頭の中で駆け巡り私は我を忘れ飛び掛かった。
「貴様ーっ!!」
頭に血が上っているので私の攻撃は基本を忘れた大振りとなる。
サラリと交わされてしまい足がもつれ転倒する。その勢いのまま壁際まで飛んで行ってしまった。
そして、目の前に散らばっていた物という物を女に投げ付ける。女は冷静にそれを交わすと間合いを詰め、飛び蹴りをしてきた。
まともに貰ってしまったが、ダメージはそれほど無い。一発貰ったところで冷静さが戻った。
相手の攻撃を良く見て対処出来るようになり、何度か攻撃を当てる事が出来た。
先程の冷たい目をした女ほどのプレッシャーは感じない。押しきれると思った。向こうもそう思ったのだろう。ナイフを前面に構えこちらの動きを封じようと必死になる。私も持っていた警棒で応戦する。
「やっぱり、にわか仕込みじゃ無理ね。流石SPさん」
諦めたのだろうか、そう言って急に構えを解いた。私は構えを解かず警戒したまま相手を注視する。
「でも私を怨むのは筋違いだわ。班長さんを殺したのは、あ、な、た。班長さんは貴女のせいで死んだの。だってそうでしょ、貴女があの時、懐中電灯を点けさえしなければ致命傷になる一撃を喰らわずに済んだ。そうでしょ?」
「ふざけるな―っ!!」
都合が良いように解釈しやがって。私はその言葉にキレてしまった。
しかし、それは当然罠だった。
挑発し私を翻弄しようとしたのだ。冷静さを失った私は攻撃が再び大振りになる。そこをつかれ警棒をはね飛ばされ、ナイフを眼前に突き付けられた。
突き付けられたナイフの手元を掴み両手で押し返そうとするが体制が悪く徐々にドアの方に押し込まれていく。
ドアに体重を預けながら押し返そうとしているとドアが壊れ廊下に飛び出した。
相手は寝転びた状態の私の上に股がり眼前にナイフをなおも突き付けてきた。
私は必死で抵抗し突き付けられるナイフを押し返そうとする。が、相手が上で私は下で寝転んだ状態、徐々にナイフが迫ってくる。
その時、急に相手が視線を反らし注意を後ろの方に向けた。
「保乃、先輩ー!」
廊下の向こうの方から光牙が拳銃を構え走って来た。
それも見た女は飛び退き反対側へと消えて行った。
「はぁー、はぁー、はぁー」
私は起き上がり呼吸を整える。
「先輩、大丈夫ですか?」
私の様子を見た光牙は心配そうに声をかけてきた。しかし、なんというグッドタイミングで来てくれるんだ。
「あ、ありがとう、ホント、助かったわ」
私は緊迫感から解放されホッと胸を撫で下ろす。
「今、俺メッチャ、カッコ良かったですよね?ピンチに到着したヒーローみたいじゃなかったですか?」
自分で言うなよ。私はその言葉を苦笑いして流した。でも本当に助かった。
「それで、あなた、何でここに来たのよ?」
息を整えながら素朴な疑問をぶつける。
「何か有美さんが場所移動した方が良いって言うので、移動したので迎えに来たんです」
「有美が!?」
「分かってます。でも私に考えがあります。班長、今は私の指示に従ってもらえますか?」
「了解だ」
私の強い言葉に、班長は強く頷いてくれた。私の事を信頼してくれているのだろう。ありがとうございます。
この施設の図面は全て頭に入っている。
目的の部屋の上へと移動し手摺にロープを掛け降下する準備を手早く済ませると、班長と目を合わせる。
廊下側から行ったら待ち伏せがあるかも知れない。窓側から行くべきだと考えた。
準備が出来たことを確認すると、軽く頷きタイミングを合わせ一気に二階へ向け降下した。
降下し二階のベランダに降りようとした時、銃声が響き渡った。その音を聞いた私達はベランダには降りず、窓を蹴破り部屋へと飛び込んだ。飛び込むと同時に身を屈め、近くのテーブルに身を隠して中の様子を伺う。
部屋内は二部屋に区切られていた。こちら側には窓と廊下へのドアが有り、オフィスデスクが並んでいる。
オフィスデスクは三、三で向かい合い、その六つが一括りとなったものが四つほど並んでいた。別の括りの方に班長が身を隠しているのが見える。
班長の方に視線を送ると、奥の部屋を見るよう促されたのでそちらに視線を移す。奥の部屋には窓や扉は見られず、上半分が大きなガラス窓となった壁でこちらと区切られていてそこに一つ扉がついているだけだった。
棚には幾つもの薬品瓶が並び、試験管などの実験器具が見られる。こちらの部屋は事務的な作業をする部屋、向こうが実験室になっているそんなところだろうか。
そして銃を持った女性の姿が、私の目に飛び込んできた。
唯一と思われるドアに身を屈めながら班長と共に素早い動きで近づくと、ドアを開け一気に中に飛び込んだ。中に入ると硝煙の臭いと血の臭いが鼻を付いた。
「手を上げろ!」
窓を蹴破り、中を確認、敵を一瞬で識別し銃口を向け威嚇する。我々の素早い動きに中にいた者は虚を突かれ、反応する間もなかったのだろう。
素直に従い銃を捨て手を上げた。
足元には既に何発かの銃弾を浴び、横たわり動かなくなっている高畑達也の姿が見えた。
生存は絶望的のようだ。
「貴様―!なぜ、こんな真似をした!」
そう言いながら立ちすくむ女性との距離をジリジリと詰める。
この優位な状況にも警戒を解くことはしないまま、私も班長の後に続く。
こいつの仲間に栗林は一撃で殺られてしまった。十分な警戒が必要だ。現にアイツは追い詰められている状況だというのに表情一つ変えてない。それどころか余裕の表情にも見える。
切れ長のネコ目をしたその女性は、耳かけボブで片耳だけだしている。スポーツ女子を思わせる少し浅黒な肌をしていて、モデル並みのしなやかなスタイルをしていた。
私は銃を構えジリジリと近づいて行く班長を制する。もう少し様子を見て慎重に行った方が良い。そう思った。とても追い詰められている者の表情には見えない。絶対何か企んでいる。
その時だった。入ってきたドアがひとりでに締まり、ガラス窓が真っ黒になった。そして、照明が消えた。
「何!?」
窓やドアが無い部屋から光が奪われる。辺りは真っ暗闇に包まれた。一ミリも光がないので視覚が全く役に立たない。
私は持っていた懐中電灯を点けようと手をかけた、、。
「保乃!ダメだー!」
懐中電灯を点けた瞬間班長が飛びかかってきた。
そして、その場に班長の悲鳴が響き渡る。そして、そのあとブンブンと腕を振り回しているような音が響き渡った。
華奢な女性の動きとは思えない音ゆえ、攻撃を受けた後、班長が反撃している音と思えるが、暗闇の中で視覚を遮られているので、音だけが頼り。音だけがその場で何が起こっているか教えてくれていた。
失敗だった。班長に状況判断を間違えるなよと言われたばかりだったのに、、。
懐中電灯を点けようとしたのは余りにも迂闊だった。
真っ暗闇で光を点けてしまえば自分の居場所を知らせているようなもの。その光をめがけ攻撃を仕掛けてきたのだろう。
班長はそれを察知し、私の動きを止めようとしたのだ。その時、敵の攻撃を受け悲鳴を上げたが、致命傷には至らず反撃に転じた。そんなところだろうか。
「班長。大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。大丈夫だから声を出すな、位置を気取られる」
すぐ近くにいるはずの班長の姿すら全く見えない。微かに息づかいが聞こえてくる程度。
しかし、目の前の闇からは息づかいどころか気配すら感じられない。この暗闇の向こうに殺し屋がいると思うとゾッとする。
何メートル先にいるのだろうか?もしかしたら目の前にいるかもしれない。音がでないように注意し、周りを警戒しながらゆっくり手探りで進む。
「ふふふ。音を出さないように注意したって無駄よ。私にはあなた達の位置が手に取るように分かっているんだから」
話ながら動いているのだろう。声の聞こえてくる位置が右から左へと移動していっている。
「あなた達の乱れた呼吸音、鼓動が、あなた達の位置を私に正確に教えてくれている」
何を言っているんだこの女は?
確かに心拍は上がっているだろうが、他人がそれを聞き取れる訳がない。他人の心拍の高鳴りが聞こえるのなら、密かに想いを寄せることなど出来なくなってしまう。
片想いする人はいなくなってしまうことだろう。
嘘だってつけなくなる。疚しいことが有る者はすぐに悟られてしまうようになってしまうだろう。私はハッタリだろうと思い、無視し声の聞こえてくる暗闇を睨み付ける。
「随分丈夫な防護服を着ているのね。ナイフが突き刺さりきらなかったみたいね。でも筋を痛めたのかしら?それとも骨が折れちゃった?腕上がらないみたいね。片腕を押さえフラフラと壁沿いを歩いて何か考えでもあるのかしら?」
私の事じゃない!
班長の現在の様子を言っているのだろうか?
真っ暗闇の中でも班長の正確な状況が分かっているとでもいうのだろうか?
私にはその言葉が当たっているのかどうか知りようもないが、班長は自分の事を言われているなら当たっているかどうか分かっているはず。
聞きたい。聞くべきかどうか迷った。確かめられれば嘘を言っているかどうかハッタリかどうかすぐ分かることなのだが、声を出してしまえば、、。
「残念ながらそいつの言う通りだ」
私の心中を悟ったのだろうか、声を上げる前に班長がそう答えた。
「ぐわーっ!」
その後、悲鳴が響き渡る。
何が起きているというのだろうか?
暗闇に目を凝らすが詳細が全く掴めない。そうこうして私があたふたとしていると、銃声が響き渡り、ガラスが割れる音が響き渡った。
私は咄嗟にその場に身を伏せる。
部屋を仕切っていたガラスが割れ光が入って来る。暗闇から解放され、急に差し込んだ光により視力が一瞬奪われた。
目を細め見えてきた先の光景に私は驚愕した。喉をナイフで切りつけられ血だらけになって動かなくなっている班長の姿が飛び込んで来たのだ。
「あらあら。最後に味な真似してくれるわね」
あの万能な班長が!こんな小娘に殺られたというの?
信じられない!暗闇の中、何の気配も感じさせることなく、何の物音も出すことなく班長に近づきナイフを振り下ろしたのだろうか?
動かなくなっている班長の脇に、血の付いたナイフを持ち女は仁王立ちしていた。
おそらく班長は最後の力を振り絞り、銃でガラスに傷をつけガラスに体当たりし、仕切っていたガラスを割り隣の部屋に飛び込んだのだろう。
真っ暗闇では分が悪い、私も殺されてしまうと思って最後の力を振り絞っての行動だったのだろう。
「ちっくしょーっ!」
頭の中を走馬灯のように、班長との記憶が駆け巡る。
班長の訓練は厳しかった。女性だからといって甘やかされる事は一切なかった。
女性隊員だからこそ、こなせる危険な任務があるのではないかと、私を厳しく指導してくれた。
さまざまな記憶、思いが頭の中で駆け巡り私は我を忘れ飛び掛かった。
「貴様ーっ!!」
頭に血が上っているので私の攻撃は基本を忘れた大振りとなる。
サラリと交わされてしまい足がもつれ転倒する。その勢いのまま壁際まで飛んで行ってしまった。
そして、目の前に散らばっていた物という物を女に投げ付ける。女は冷静にそれを交わすと間合いを詰め、飛び蹴りをしてきた。
まともに貰ってしまったが、ダメージはそれほど無い。一発貰ったところで冷静さが戻った。
相手の攻撃を良く見て対処出来るようになり、何度か攻撃を当てる事が出来た。
先程の冷たい目をした女ほどのプレッシャーは感じない。押しきれると思った。向こうもそう思ったのだろう。ナイフを前面に構えこちらの動きを封じようと必死になる。私も持っていた警棒で応戦する。
「やっぱり、にわか仕込みじゃ無理ね。流石SPさん」
諦めたのだろうか、そう言って急に構えを解いた。私は構えを解かず警戒したまま相手を注視する。
「でも私を怨むのは筋違いだわ。班長さんを殺したのは、あ、な、た。班長さんは貴女のせいで死んだの。だってそうでしょ、貴女があの時、懐中電灯を点けさえしなければ致命傷になる一撃を喰らわずに済んだ。そうでしょ?」
「ふざけるな―っ!!」
都合が良いように解釈しやがって。私はその言葉にキレてしまった。
しかし、それは当然罠だった。
挑発し私を翻弄しようとしたのだ。冷静さを失った私は攻撃が再び大振りになる。そこをつかれ警棒をはね飛ばされ、ナイフを眼前に突き付けられた。
突き付けられたナイフの手元を掴み両手で押し返そうとするが体制が悪く徐々にドアの方に押し込まれていく。
ドアに体重を預けながら押し返そうとしているとドアが壊れ廊下に飛び出した。
相手は寝転びた状態の私の上に股がり眼前にナイフをなおも突き付けてきた。
私は必死で抵抗し突き付けられるナイフを押し返そうとする。が、相手が上で私は下で寝転んだ状態、徐々にナイフが迫ってくる。
その時、急に相手が視線を反らし注意を後ろの方に向けた。
「保乃、先輩ー!」
廊下の向こうの方から光牙が拳銃を構え走って来た。
それも見た女は飛び退き反対側へと消えて行った。
「はぁー、はぁー、はぁー」
私は起き上がり呼吸を整える。
「先輩、大丈夫ですか?」
私の様子を見た光牙は心配そうに声をかけてきた。しかし、なんというグッドタイミングで来てくれるんだ。
「あ、ありがとう、ホント、助かったわ」
私は緊迫感から解放されホッと胸を撫で下ろす。
「今、俺メッチャ、カッコ良かったですよね?ピンチに到着したヒーローみたいじゃなかったですか?」
自分で言うなよ。私はその言葉を苦笑いして流した。でも本当に助かった。
「それで、あなた、何でここに来たのよ?」
息を整えながら素朴な疑問をぶつける。
「何か有美さんが場所移動した方が良いって言うので、移動したので迎えに来たんです」
「有美が!?」
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