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第四章 準決勝 甲子園常連校
第13話 力投の柳澤
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よーし、皆んなが逆点してくれた。試合はここからだー。
皆んなが逆点してくれたのは嬉しかったのだが、向こうのピッチャーは僕と同じタイプの人間だ。
ノックアウトされてしまったのを複雑な心境で見ていた。
基礎トレーニングを増やし、走り込みを増やして体力を強化してきても、試合になるとスタミナ切れを起こしてしまうことがある。
きっと彼もそうだったのだろう。しかもそこで連打を浴びようものなら精神的に追い詰められ体が強張ってしまい、コントロールまで悪くなってしまう。
そんな悪いスパイラルにハマり打ち込まれてしまったのだろう。自分の姿を重ねてしまい同情してしまった。
僕はそうならないようにと思い、グラブを叩き気合い入れるようにして、
意気込んでマウンドに上がった。
だが、いきなりフォアボールを与えてしまった。人のことを気にしている場合ではなかった。
僕もコントロールがいまいち定まらない。
次のバッターはバッターボックスに入ると同時にバットを寝かしバントの構えをしてくる。
僕はバントと決めつけず、バスターの可能性も頭に入れつつ一球目を投じた。
『いいバントになったー。サード捕って1塁送球し、ワンナウトー。送りバント成功。ワンナウトでランナー2塁です』
あっさりバントで送られてしまい、この回もスコアリングポジションにランナーを進められてしまった。
本当に今日はずっとランナーを背負っての投球になっている気がする。
「バッター集中、バッター集中」
そんな声が聞こえてくるが、ネクストバッターズサークルには、前打席で3ランを打った4番が入っている。どうしても目に入ってしまう。
3番バッターも強打者だ。初対戦でいきなりヒットを打たれている。そして前回もボールをよく見られ、フォアボールで出塁されてしまっている。
気をつけなければならないバッターだ。
バッターに集中しなければと思い、帽子裏に書かれた応援メッセージに目をやってから大きく深呼吸し投球動作に入る、、。
『カキーーン』
「あっ!」
『打ったー、ライト前ー、セカンドランナー帰ってくるー、同点、同点です。再び振り出しに戻りましたー、序盤は投手戦になるかと思われたこの試合、中盤に入り大方の予想通り打ち合いとなって来ましたー』
「あぁーっ!しまったー!」
思わずそんな声が漏れてしまった。5点取られてしまった。交代だろうか?
でもまだ交代したくない。こんな形でマウンドを降りたくない。
ベンチの方に恐る恐る目を向けるとコーチがこっちに向かって拳を突き出してきた。この回はお前に任せる。そう言っているように思えた。
ヒットを打たれ、次は前対戦でホームランを打っているバッター。
本来なら代えられて当然だろう。でもコーチは僕に任せてくれるようだ。なら絶対に期待に応えなければいけないだろう。
弱気は禁物、松井君のリードを信じ、コントロールに注意しミット目掛け投げ込むのみ。
大きく息を吐き、ボールに魂を込め一球目を投じた、、。
『カキーーン』
「!!」
「ファール」
危ねー!ビックリしたー!大ファール飛ばしやがってー!!
でも大丈夫。ファールになるってことは僕のボールが勝っているってことなんだぞって吉田コーチは言っていたし。
ちょっとの差でもファールになるってことは僕が有利ってことなんだと、自分に言い聞かせ2球目を投じた、、。
『カキーーン』
「!!」
「ファール」
またかよ!?
内角に投げ込んだ2球とも大ファールを打たれてしまった。いやー、ビックリしたー。何なの?
松井君の方に目を向けると両手を上下させ、落ち着け、落ち着けと言っているようだった。きっと松井君も今の大飛球に肝を冷やしたことだろう。
ごめんよう。
大きく息を吐き3球目を投じる、、。
『カキーーン』
今度は外角に投げ込んだボールをライト線方向に打ってファールとなっていた。
よほど自分のスイングに自信を持っているのだろう、躊躇せず思いっきりバットを振ってくる。
でもこういう奴には、、。
『さんしーん、バッターアウト』
「よーし」
こういう奴にはフォークが有効なんだよ。祐希君の言葉通りだった。思わずマウンド上で大声を上げてしまった。
「しゃー、柳澤、ナイスピー」
「柳澤くーん、ナイスピー」
そうでしょ、そうでしょ。いやー、よかったリベンジ成功だ。また打たれてたまるもんか!
少しヒヤッとしたけど、きっとファールでストライクを稼ぐという松井君の思い通りの展開だったのだろう。
このまま次も打ち取ってやる。
『三遊間ー、抜けたー、レフト前ヒットー』
しまったー、やられたー。
これだよねー。こういうところをきっちり抑えられるようになったら、信用してもらえるんだろうけど。
2アウトランナー1、3塁。再び帽子を取り、裏の応援メッセージに目をやる。
集中し直し、今日1番の渾身のボールを投げ込んだ、、。
『サード捕ってファーストへ送球、アウトー、この回1点与えて同点とされてしまいましたが、2者残塁としスリーアウトチェンジです』
「柳澤せんぱーい、ナイスピー」
「柳澤ー、よくやったぞー」
「松井君のリードのお陰だよー」
「そ、そうかー?まあだろうと思っていたけどな」
「じゃあ、1点取られたのもお前のせいな」
「お前が外野に抜かすから悪いんだろーが」
「はー、何言ってんだよ!ボケたのかー?タイムリーはライト前だったろうが!」
「捕れよボケ!」
「捕れるかボケ!」
皆んなが逆点してくれたのは嬉しかったのだが、向こうのピッチャーは僕と同じタイプの人間だ。
ノックアウトされてしまったのを複雑な心境で見ていた。
基礎トレーニングを増やし、走り込みを増やして体力を強化してきても、試合になるとスタミナ切れを起こしてしまうことがある。
きっと彼もそうだったのだろう。しかもそこで連打を浴びようものなら精神的に追い詰められ体が強張ってしまい、コントロールまで悪くなってしまう。
そんな悪いスパイラルにハマり打ち込まれてしまったのだろう。自分の姿を重ねてしまい同情してしまった。
僕はそうならないようにと思い、グラブを叩き気合い入れるようにして、
意気込んでマウンドに上がった。
だが、いきなりフォアボールを与えてしまった。人のことを気にしている場合ではなかった。
僕もコントロールがいまいち定まらない。
次のバッターはバッターボックスに入ると同時にバットを寝かしバントの構えをしてくる。
僕はバントと決めつけず、バスターの可能性も頭に入れつつ一球目を投じた。
『いいバントになったー。サード捕って1塁送球し、ワンナウトー。送りバント成功。ワンナウトでランナー2塁です』
あっさりバントで送られてしまい、この回もスコアリングポジションにランナーを進められてしまった。
本当に今日はずっとランナーを背負っての投球になっている気がする。
「バッター集中、バッター集中」
そんな声が聞こえてくるが、ネクストバッターズサークルには、前打席で3ランを打った4番が入っている。どうしても目に入ってしまう。
3番バッターも強打者だ。初対戦でいきなりヒットを打たれている。そして前回もボールをよく見られ、フォアボールで出塁されてしまっている。
気をつけなければならないバッターだ。
バッターに集中しなければと思い、帽子裏に書かれた応援メッセージに目をやってから大きく深呼吸し投球動作に入る、、。
『カキーーン』
「あっ!」
『打ったー、ライト前ー、セカンドランナー帰ってくるー、同点、同点です。再び振り出しに戻りましたー、序盤は投手戦になるかと思われたこの試合、中盤に入り大方の予想通り打ち合いとなって来ましたー』
「あぁーっ!しまったー!」
思わずそんな声が漏れてしまった。5点取られてしまった。交代だろうか?
でもまだ交代したくない。こんな形でマウンドを降りたくない。
ベンチの方に恐る恐る目を向けるとコーチがこっちに向かって拳を突き出してきた。この回はお前に任せる。そう言っているように思えた。
ヒットを打たれ、次は前対戦でホームランを打っているバッター。
本来なら代えられて当然だろう。でもコーチは僕に任せてくれるようだ。なら絶対に期待に応えなければいけないだろう。
弱気は禁物、松井君のリードを信じ、コントロールに注意しミット目掛け投げ込むのみ。
大きく息を吐き、ボールに魂を込め一球目を投じた、、。
『カキーーン』
「!!」
「ファール」
危ねー!ビックリしたー!大ファール飛ばしやがってー!!
でも大丈夫。ファールになるってことは僕のボールが勝っているってことなんだぞって吉田コーチは言っていたし。
ちょっとの差でもファールになるってことは僕が有利ってことなんだと、自分に言い聞かせ2球目を投じた、、。
『カキーーン』
「!!」
「ファール」
またかよ!?
内角に投げ込んだ2球とも大ファールを打たれてしまった。いやー、ビックリしたー。何なの?
松井君の方に目を向けると両手を上下させ、落ち着け、落ち着けと言っているようだった。きっと松井君も今の大飛球に肝を冷やしたことだろう。
ごめんよう。
大きく息を吐き3球目を投じる、、。
『カキーーン』
今度は外角に投げ込んだボールをライト線方向に打ってファールとなっていた。
よほど自分のスイングに自信を持っているのだろう、躊躇せず思いっきりバットを振ってくる。
でもこういう奴には、、。
『さんしーん、バッターアウト』
「よーし」
こういう奴にはフォークが有効なんだよ。祐希君の言葉通りだった。思わずマウンド上で大声を上げてしまった。
「しゃー、柳澤、ナイスピー」
「柳澤くーん、ナイスピー」
そうでしょ、そうでしょ。いやー、よかったリベンジ成功だ。また打たれてたまるもんか!
少しヒヤッとしたけど、きっとファールでストライクを稼ぐという松井君の思い通りの展開だったのだろう。
このまま次も打ち取ってやる。
『三遊間ー、抜けたー、レフト前ヒットー』
しまったー、やられたー。
これだよねー。こういうところをきっちり抑えられるようになったら、信用してもらえるんだろうけど。
2アウトランナー1、3塁。再び帽子を取り、裏の応援メッセージに目をやる。
集中し直し、今日1番の渾身のボールを投げ込んだ、、。
『サード捕ってファーストへ送球、アウトー、この回1点与えて同点とされてしまいましたが、2者残塁としスリーアウトチェンジです』
「柳澤せんぱーい、ナイスピー」
「柳澤ー、よくやったぞー」
「松井君のリードのお陰だよー」
「そ、そうかー?まあだろうと思っていたけどな」
「じゃあ、1点取られたのもお前のせいな」
「お前が外野に抜かすから悪いんだろーが」
「はー、何言ってんだよ!ボケたのかー?タイムリーはライト前だったろうが!」
「捕れよボケ!」
「捕れるかボケ!」
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