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5章 お爺ちゃんと聖魔大戦

415.お爺ちゃんのドリームランド探訪25

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「こんにちは! アキカゼ・ハヤテです」

「|◉〻◉)助手のスズキだよ!」

【こんちゃー】
【配信ありがとう!】
【前回見逃したー】
【今朝の配信はなかったぞ?】
【あれ、そうなの?】

「そうなんですよ。少し所用で個人的な要件を済ませてまして。家族水入らずの時間を過ごしてました」

【お、惚気か?】
【嫉妬乙】
【ご高齢でも仲良いのは良いですね】

「いや、妻との時間ではなく娘とね。こっちで色々積もる話を精算してたんだよ。シェリルはこっちの空気に合わせるのが苦手だからね。それに親娘二人でしかできない話もある。でしょ?」

【あ、そーいう】
【シェリルと来たんだ】
【犬猿の仲じゃなかったの?】

「最近彼女、随分と態度が丸くなってね。今までツンツンだったのが10回に一度デレてくれるようになってね。変われば変わるものだ」

【それ、デレてるのか?】
【ボブは訝しんだ】
【親から見れば目に入れても痛くないって奴だろ】
【なお、実際にデレているかどうかはご本人のみぞ知る】
【アキカゼさんの思い過ごしに1票】
【それで新しい情報は抜けたの?】

「そうだね、それで一件朗報がある」

【お、なになに?】

「|ー〻ー)その前に今日のゲストをお待たせしてます」

「おっと、そうだった。すっかり忘れてたよ」

【おま、忘れんなしwww】
【序盤雑談から紹介すべきゲストの存在忘れるってマ?】
【これはゲストの人切れて良い案件ですわ】
【どうせハンバーグさんとかだろ?】
【ワンチャン探偵の人とかな】
【そんな堂々と聖典の人連れてくるか?】
【割と結構連れてくるぞ? ほぼ全員が顔見知りだし】
【内、二人がクラメンだしな】
【だから偏りすぎだってーの】

「それでは自己紹介から始めてもらおうか?」

「がおーー、森のくまくま!」


 ハーフビーストになって優しい目元の森のくま君が大迫力の咆哮と共に現れた。
 と言っても本来の姿ではないので迫力も半減だ。
 少し遅れてカメラの前に呆れ気味のアール君も合流する。


「ネクロノミコンの幻影、アールよ。良い加減遅れを取り戻しに来たの。よろしく頼むわ」


 銀の髪をかきあげてつまらなそうに言い放つ。


【お前かよっっっっ!!!】
【ほんと、前回ほぼ活躍してなかったのに今更くるか】
【ってゆーか、今まで何やってたんだ?】

「親孝行くま」

「彼は自分の見た目と心の弱さにコンプレックスを持っていてね。そして兄弟の優秀さにも引っ張られて歪んだヒーロー像を抱いていたんだよ」

【あー、金狼が兄貴だっけ?】
【兄弟あるあるか】
【その捌け口に無垢なプレイヤーが選ばれてたってわけね】
【害悪じゃねーか】

「特に彼は五人兄弟の真ん中だとかで親の世話より兄弟の世話を焼いてるタイプだった。だよね?」

「くま!」

【口調だけで媚びてるのかと思ったら、そんな過去があったんだな】
【だからといって許されないが】
【PK行為はやりすぎだぞ?】

「別にくまはPKじゃないくま」

【ネームが赤い時点で言い逃れできない件】
【それwww】

「くま君のネーム? 赤くないよ。なんだったら少し黄金が混ざった朱だよね? だからPKではないんじゃない?」

【は、マジ?】


 一向に信じないリスナーからのコメントに証明するようにくま君がカメラの前に歩み出て、そのネームを見せつけた。


【マジじゃん、レッドネームじゃねーわこれ】
【結局なんの称号?】
【いや、遠目から見たら普通に赤いんだけど】
【近づかねーとわかんねーとかどう言う事だよ!】
【おーい、運営さっさとこのバグ治して。ケモプレイヤーどんどんいなくなるぞ】

「ビースト100%の特殊称号くまね。街に入れない代わりにレッドネームを討伐すると【血塗れ】の称号を得られるくま。この称号はつけてると直感が鋭くなるくま。悪意を持ってる相手を見るだけで看破することができるくまね。要はカルマ値を視認できる称号くま」

【え、強い】
【一眼見てPKかどうか判断できるのか】
【じゃあくまがキルしてたプレイヤーって?】

「レッドネームくまね。私刑だった自覚もあるくま。たくさんのプレイヤーに迷惑かけちゃってたくまね」

【レッドネームって秘匿できるんだっけ?】
【とあるアイテムを使えばカルマ値下げられるって聞いたぞ】
【それとスキルでネームの色を偽るのもあったはず】
【まぁあの見た目じゃPKされたって言いたい気持ちもわからんでもないが】
【見た目の見せる弊害www】
【被害者を装えばいくらでも悪いことできるもんな】
【今の俺らも実際世界が変われたら迫害されそうだけどな】
【あー、魚人ってだけで人類からは嫌悪の対象か】
【魚人迫害の歴史はインスマスが示してるから】

「|◉〻◉)そこはハヤテさんとクトゥルフ様を信じていただくしかないですね」

「まぁ、そんな感じ」

【本人のノリが一番軽いんだよなぁ】

「だって責任負いたくないもの。誰だってそうでしょ? 流石に変わってしまった過去は仕方ないと諦めるけど、ここから変わらないためにどうするかは私一人で背負える責任じゃないよ?」

【そりゃそうだ】
【今回はたまたま魚人ブームが来ただけって考えるのがいいか】
【問題はアキカゼさんほど俺らをフォローしてくれるかで】

「そこを私に振られてもね。他人の心までは覗けない」

「|◉〻◉)では本題に入りましょうか」

「そうですね。シェリルと同伴したことで入手した情報の開示です」

【お、得ダネくるか?】
【雑談枠だからあまり期待するなよ?】
【あれ、これ雑談枠だっけ?】
【最初から雑談枠だぞ】
【取り扱ってる人が少なく流れてくる情報が濃いから忘れがち】
【同意】

「アキカゼさんはくまの憧れの存在くま」

「ちょっとしっかりしてよマスター。こんな如何にも胡散臭い存在に憧れを抱くなんて……」

「|◉〻◉)諦めなさい。ハヤテさんはクトゥルフ様がお認めになったお方。ヨグ=ソトース様やアザトース様にも一目置かれ、あの邪智暴虐で有名なナイアルラトホテプにも呆れられる人間だから」

「存在が極悪じゃない! やっぱりここで仕留めた方が……」

【この温度差よ】
【くまは毒気が抜けたけど、やっぱり暴走の元凶はこの子?】
【見た目ただの世間知らずのプレイヤーなのにな】
【取り扱ってる情報が特級呪物だから】
【例のブログは魔導書扱いされてるって聞くぞ】
【それは草ですわ】
【昆布って言わねーの?】
【陸地で実家ネタは無粋。ハッキリわかんだね】
【海の中でならいいのか】
【適当言ってるだけだぞ、気にするな】

「まぁ私の存在が疑わしいのは仕方ないとして、同じ魔導書陣営同士手を組もうじゃないか」

「そうね、魔導書と言う枠組みのおかげで聖典側から狙われる特性を持つもの。一時共闘というやつね」

「くまー」

【この鳴き声は同意の意味か?】
【いや、とりあえずなんか言っとけの鳴き声だぞ】
【どちらとも受け取れるな】
【優秀な兄貴と弟に囲まれて育った処世術かな?】
【ああ、そういう】


 話が一向に進まないので手を叩いて注目を集め、歩きながら本題に入る。アール君が絡んできても、スプンタ君同様相手にしないでスルーしていこうと思う。
 この手の場合、敢えて取り合わずに真摯な態度を見せ続けるのが正解だからね。
 それを娘の教育で痛いほど身に染みたので二の轍は踏むまい。

 シェリルとの探索で得た霊樹の情報、そして陣営内の市場の概要を開示する。
 秘匿しておく意味合いもないのでこういう情報は共有した方がいいのだ。


【じゃあ、霊樹は聖典側と一緒に行ってパーティ組んだ方が木片多くもらえるんだな】
【その素材が喉から手が出るほど欲してるならそうだろう】
【どんなのに扱われるんですか?】

「娘曰く、聖典側で霊樹の苗木というアイテムへの加工が可能だそうだ。もりもりハンバーグ君からはダンジョンに神格を祀る祭壇が置けると聞いてるよ」

【へぇ、色々使い道があるんだな】
【じゃあ数は欲しいのか】
【でもダンジョンにも神格置く必要があるのか? 守護獣に神格を配置できるのとは別に?】
【そう言えばそうじゃん】

「私も詳しくはわからないんだ。その案件はもりもりハンバーグ君に丸投げしてるから」

「くまー」

【くま、話についていけてないだろ】
【しっかし何にでも使える鳴き声だな】
【あー、これは僕情報なんだけど。外の世界で手懐けた神格はダンジョンではモンスター扱いだそうです。祭壇における神格は僕達の崇拝する神様に限定されるそうで】


 おっと、すでにこっちにきていたもりもりハンバーグ君からの補足が入る。


【お、噂をすれば】
【ハンバーグさんちゃーす】
【こんにちは、お義父さん】

「こんにちは、もりもりハンバーグ君。合流は少し遅れると言うことだけど?」

【ええ、市場で仕入れた素材の使い道で少し悩んでまして。情報が整い次第そっちに合流します。それまではこちらでの参加とさせていただきます】


 相変わらずの律儀さだ。別にそこまでしなくてもいいのにね。
 事前に市場に流した霊樹の木片の使い道だろうけど、DPが足りなかったのかな?


【俺ら無視されるじゃん】
【ただのコメントに返信する奴いるの?】
【返事してくれるのなんて配信者ぐらいだぞ?】
【その配信者ですらスルーされるのが普通だぞ】
【涙拭けよ】
【そもそもネームすら公開されてないから】
【個性出したきゃ匿名で書き込むなよ】
【そりゃそうだ】

「さて、そろそろ目的地が見えてきたよ」

【港町かな?】
【なんか見たことのある町並み】
【アーカムかな?】
【よく地図なしで場所わかりましたね】

「|ー〻ー)アーカムは第二の故郷なんで忘れませんよ」

「姉妹もいっぱいいますしね」

【あー、そう言えば】
【インスマスに支配されてたんだっけ?】
【実家のような安心感】
【プライベートビーチで同族が寛いでるな】
【海の中にいなくていいのか】
【あれ、寛いでるように見えて実は外敵からの襲来に備えている可能性は?】

「|◉〻◉)いえ、ただ寛いでるだけですよ、あれ。休日なので」

【草】
【この姉にしてあの妹たちよ】
【姉妹なのか?】
【見た目からは判別できんな】

[ようやくこちらにきたか、アキカゼ・ハヤテ]

「お待たせしましたクトゥルフさん。アザトース様がお呼びとかで?」

[うむ。先方がこちらに寝返らないかと相談してきてな。余だけでは判断できぬため貴殿にきてもらった次第だ]

【神格が判断を委ねるってどういう……】

[単純な話、要があるのは余ではなくアキカゼ殿ということだ。余はメッセンジャーに他ならぬ]

【ひゃー、クトゥルフ様がメッセンジャー扱いとか】
【恐れ多くない?】
【その上で寝返れとかきな臭いですね】
【どうするんですか?】

「とりあえずお話を聞いてみないことにはね。なので今日のゲストは基本魔導書陣営だけに絞らせてもらうね。SAN値ロール案件の時はスズキさんに頼んで砂嵐入れてもらうから各自で対応するように」

【はーい】
【ここまでしてくれる配信者も珍しいで】
【これを基準に他の配信ディスるのやめろよ?】
【常識人を装ってるがこの人結構ぶっ飛んでるからな】

「失礼ですね。私ほどの常識人もなかなかいないですよ。ね、スズキさん」

「|◉〻◉)ソウデスネー」

【幻影にすらこんな態度されるマスターが居るってマジ?】

「うちのアールも似たようなもんくま」

【キエエエエアアアア、シャベッタァアアアア】
【そりゃ喋るだろ】
【今までの対応が鳴き声なのに急に会話するな】
【ネタにマジになるなよ】
【雑談枠だからいいものの】

「調子がズレるわ、このノリ」

「|◉〻◉)同意」

「あんたに言ってるのよ!」

「|◉〻◉)ぶえー」

 
 何やら幻影同士で揉めてるようだね。いつものことなので気にせずアーカムシティへと踏み込む。
 そこで予定のない人物と出会した。


「よぉ、爺さん。待ってたぜ」

「金狼君?」

「兄ちゃんくま?」

「くまも居たか。丁度いい、相談に乗っちゃくれねぇか?」


 腰に巻いたベルトは魔導書のもの。
 そして横に引き連れてる人物に見知っているものがあったのか、くま君が表情を顰めていた。
 と、なると彼女が例の幻影ということになるのか。

 それよりもだ、どうやってここに?
 いや、第三陣が始まったのだろう。偶然ここに辿り着いてここに居るとなれば状況は理解できる。
 だが、待っていたとは?

 イベント中は配信は見れないはずだ。
 彼は一体どのようにして私たちの来訪を知り得たのか。
 謎は深まるばかりだった。
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