456 / 497
5章 お爺ちゃんと聖魔大戦
406.お爺ちゃんのドリームランド探訪18
しおりを挟む
「いやー、はっはっは」
これは完全に迷ったね。もはや笑うほかない。
本当にどこだろうか、ここは?
あたり一面、見渡す限りの珊瑚礁。
魚群が巨大な塊を維持しつつ何かを示すように回遊し、しかしスクリーンショットにも何も映らない。
もりもりハンバーグ君は地層チェックをしつつ、何かのメモを記していた。
メモをとりながら、トレンチコートの裾から伸ばした触腕を器用に操り周囲を泳いでいく。
すっかりここでの生活にも慣れたのか、景色を模写する余裕もあるみたいだ。どうやって色をつけてるんだろうかと突っ込みたいところはたくさんあるが、私がそういうのに疎いだけかもしれないから言わない。
【今更なこと言って良い?】
【なんだよ?】
【海中でメモ取ってることか?】
【今更だろ】
【海中でお絵描きしてようと今更とか言いそうだよな】
【海藻生えるわ】
「|◉〻◉)おっかしーなー、僕のダウジング棒はこっちを指してるんですけどねー。急に調子悪くなったぞ?」
【その手元でクルクル回ってるやつか?】
【そもそも扱い方きちんと把握してる?】
【ヤディスちゃんはどこいった?】
【さっき向こうの海域に流されてったぞ】
【ここの幻影達自由すぎひん?】
【主人が主人だからなー】
なんだか言われたい放題な気がするけど、それこそ今更だ。
「もりもりハンバーグ君、何かわかった?」
「そうですねー」
明後日の方向を見つめ、模写を描いてた手帳を懐に仕舞い込み、触腕を徐に伸ばして地面に吸い付かせて海中を歩いてくる。
「ここの海域の生態系は非常に面白いということが判明しました」
「どういう事?」
「本来この深度では深海魚ぐらいしか見かけないはずなんですよ」
「うん」
「でも中層の海域のように魚群が形成されています。それってその魚類を脅かす上位種が存在するって事ですよね?」
「そうだね。でもそれの何が珍しいの? 深海魚だって生存競争してるでしょ。確かにこの海域で生活する以上、独特の進化は経ている。それでも弱肉強食の世界だ」
「ああ、はい。それはそうなんですが、そんなに魚群を作って自分を強く見せる代わりにですね、その上位種らしい存在の影も形も見つからないんですよ。不思議なことに」
「えっ」
それは確かにおかしいね。
もりもりハンバーグ君はメモを添えて私に逐一説明をしてくれた。
「その魚群を作ってる魚は多分この世界特有のモノだと思います。地球ではまだ未発見の、生物です。なんとなくこの生物、お義父さんのところのスズキさんに似てるんですよね」
「サハギンの始祖みたいなもの?」
「そうかも知れません。しかしあそこまで人に近い手足が生えてない。まだ魚の領域のままです」
「うん、それで?」
「そんな魚類の上位種みたいな存在が逃げ回る生物がこの海域のどこにも見当たらないんですよ」
「夜行性の可能性もあるんじゃないの?」
「その可能性も踏まえて陽光操作でチェックしてます。しかしそれらしいものは特に」
「じゃあ本当に謎の敵に怯えてるだけなんだ?」
「だからこそ我々が探してる神格の影がここら辺にあるのでは、と睨んでます」
手帳を畳み、懐に仕舞う。
その確信めいた物言い。やはり彼は探索者としても素晴らしい。前回は活躍の機会こそなかったものの、一緒に行動してこれほど頼もしい人物もいないよ。
「|◉〻◉)ハヤテさーん、こっちに来てください!」
ちょうどその時、スズキさんからの掛け声。
何かを見つけたようだ。
スズキさんのダウジング棒が引力に引かれるようにその場所を指し示していた。
「ヤディス! スズキさんが何か見つけたようだ。そっちはどうだい?」
「匂いは確実に近づいてきてる。でもまだ姿が見えない」
「嗅覚ですか?」
「はい。本来鼻なんて持たない彼女ですが、幻影になった時に匂いという形で嗅ぎ分ける技能が生えたようです。ガタトノーア様の匂いは懐かしく、聖典側の匂いは鉄臭く、そして信仰の異なる神様はすえた匂いがするそうです」
「私は?」
「ノーコメントで」
【ワカメ】
【絶対磯臭いとかだろ】
【おい今ワカメって言ったやつ誰だ】
【海の中での草といったらワカメやろ】
【この人アキカゼさんのこと信頼はしてるけど信用はしてないよな】
【それwww】
【海藻=わかめは極論すぎるんだよなぁ】
【昆布!】
【海苔!】
【おい、コケ混ざったぞ】
【苔も草っちゃ草だろ】
【別物なんだよなぁ】
「なるほどね。それでスズキさんは何が見つかったの?」
「|>〻<)わかりませんー」
スズキさんが引力に負けて引きずられてる。
ダウジング棒が磁石かなんかだったの? ってくらい引きずられた。しかしそこには何もない。
ただ虚空が広がってるだけ。そしてついに行き着くところまで行った結果。
「|◉〻◉)あっ」
スズキさんの体がその場からパッと消える。
いや、スズキさんの体だけじゃない。
それ以外の景色も、空間ごとぽっかりと穴を開けていた。
「何が起きた!?」
「お義父さん、それよりスズキさんを!」
「あ、彼女なら残機無制限ですので。私が存在してる限り大丈夫ですよ。次のスズキさんは上手いことやってくれる事でしょう」
「|◉〻◉)前の僕はダメダメでしたが、僕はアレより上手くやってやりますよ。へっへっへ」
【なんかパラノイアじみてきたな】
【アキカゼさんがウルトラバイオレット様で昆布】
【ちくわ大明神】
【なんだ今の?】
【今回のリリーちゃん、ガラ悪くない?】
【性格設定までランダムかよ】
【当たりの性格出るまで突撃繰り返すのか?】
【アキカゼさんの普段の扱いがひどいのはこれを知ってたからか】
【それより原因不明の怪現象について考えようや】
「つまりあの怪現象に怯えてスズキさんの祖先は魚群を形成していた?」
「その可能性が高そうですね」
【しかし問答無用で食われたな】
【実際ホラーだろ、こんなの】
【身を寄せ合いたくなる気持ちもわかるわ】
【しかしああも問答無用だとまとまる方が危なくね?】
【その前の吸い込み攻撃でバラけても無駄そうだけどな】
【しっかし姿が見えず、吸い込み攻撃をしてくる神格なんていたか?】
【透明人間】
【アレは見えないだけで実態があるだろ】
【まず人間はあんなに手当たり次第食べないでしょ】
それは確かにそうだけど。
私たちはここにくる道中で何か見落としてるのではないか?
そんな気さえする。
「ヤディス、奴のにおいはどれに属する?」
「うーん、懐かしくはないけど、どこか近い。すえたにおい」
「こちら側の神格である事は確定のようです」
【この幻影の能力差ときたら】
【リリーちゃん食われただけじゃない?】
【次はもっと活躍するから】
【見てろよ見てろよ】
【煽ってやるな。若干びびってるじゃんか】
「|◉〻◉)び、びびってねーし」
【本当に小物だな、この子】
「誰に似たんでしょうかね」
私の質問にコメントは沈黙を貫き通す。
NGワードが何かみんな知ってるようだね。
さて、危険が迫ってるのもあるが、探索は続行する。
だが問題はその暗さだ。
先程までは確かに海底、それも深海とあって陽も当たらぬ真っ暗闇だったが、陽光操作を全身に纏って仕舞えば辺りはぼんやりと光を照り返す。
「流石お義父さん、この暗さに目が慣れてしまったので僕は気にしてませんでしたが。流石に足元まで暗いのは些かおかしいですね」
「ええ、深海は暗いのが当たり前ですが、さっきはここまで暗くなかったよね?」
【そうだっけ?】
【よく見てなかった】
【どこに注目すれば良いかは人それぞれだし?】
【いや、その観察力が問われるのがドリームランドだから】
私が体に纏う陽光操作の出力を上げてる時だ。
闇がそっと陽光を避けるように遠ざかった。
なるほど?その闇が本体か。闇そのものが神性か?
「おっと、マヌケが尻尾を出しましたね」
「流石です。追い詰めますか?」
「どのみち放っておけば被害に遭うのは我々です。いずれにせよここで戦っておいて損はないでしょう」
「ですね」
逃げる闇に対して私ともりもりハンバーグ君、そして失敗を返上するように参加したスズキさんによるさん方向からの陽光の照射で臆病者はついにその姿を表した。
<バグ=シャースが現れた>
それは人間のような目と口に覆われたゼリー上の生物。
先ほど見たように食欲旺盛で、数多の口から先程の魚影とスズキさんの足が見えていた。
「|◉〻◉)僕の仇ーー!」
そこへ飛び込んでいくスズキさん。
見えていれば怖くないのか、疾風迅雷の如き突き技がバグ=シャースに吸い込まれ、
「|◉〻◉)ぎゃぁああああ」
そのまま食べられた。
うん、だろうと思ったよ。
「お義父さん、アレはなかなかに近づけない相手のようですが」
「技を使うタイプではない。その上で食欲が武器になっている。消化器官の類は見当たらないし、私とも相性が悪そうだ。でもね、幻影がやられてハイそうですかと逃げるのも格好がつかないものだよ」
「ええ、僕も同じ思いです」
【バグ=シャースとかマイナーな神が出てきたな】
【神は神だろ】
【しっかし大食い系とか、ガタトノトーア様の下位互換?】
【これは侵食対決とみた】
【なんだその結果のわかってるバトル】
【それでも見つかったらしつこいやつで有名だぞ】
【近づいた奴絶対殺すマンやん】
それでも地形を掌握領域で相手の前にワープさせて攻撃をいなしていく。
戦っていってわかったことだが、バグ=シャースは物理攻撃が効かない。見た目でわかるものだが、無効じゃなくて物理的に接触したら食べられるという意味だ。
その上遠距離攻撃の魔法もレーザーも通用せず、クトゥルフの腕も半分食べられかけた。
とんでもない大食いだ。
一方でもりもりハンバーグ君の侵食攻撃も効果が薄い。
コメント欄では圧倒的有利との下馬評がついているが、難航してるようだ。
そもそもそれはガタノトーアご本人の場合の下馬評。
心を通わせているとはいえ、まだ私のように後継者として認められてない彼には荷が重いのだ。
それでも古代獣を囮にしてる間に肉の芽を埋め込み、ようやく侵食開始。
一つ分かったことだが、バグ=シャースは食事中は一切の攻撃が止まる。しかし食べる速度が尋常じゃないからすぐに臨戦態勢に戻ってしまうのだ。
そこで規模が山二つ分くらいある山田家をスズキさんと合体させて分身アタックをけしかけている。
スズキさんが突っ込む→食べられるの無限連鎖で時間を稼ぐ寸法だ。スズキさんの小さい体だと1秒も持たないが、これが山田家なら20秒は稼げる。
そしてついに肉の芽がバグ=シャースの肉体制御を完璧に乗っ取ったところで戦闘終了。
無数のスズキさん+山田家の残骸が海底を舞い、私たちのストレージにバトルリザルトが流れた。
バグ=シャースの魂片×10
シュブ=ニグラスへの手がかり1/10
「もりもりハンバーグ君は何貰えた?」
この手の報酬は基本ランダムが多い。私はそれとなく教えるけど、彼は何を引き当てたのかなんとなく気になった。
「僕はダンジョン素材の魂片×10と、ニョグタの生息地へ至る手がかりでした。お義父さんは?」
「魂片は同じで、私はシュブ=ニグラスの生息地を記した生息地への暗号。それも同じようなのをあと9個集めないと場所が判明しない奴」
「あぁ、上位神格ですもんね」
「ニョグタだって上位じゃないの?」
「流石にそちらと比べたらまだ弱いですよ」
【この人らの基準の弱いが俺にはわからない】
【いずれ慣れてくるで】
【慣れる、のか?】
【慣れないと無理だろ、だってダンジョン素材だぜ?】
【ダンジョンが今から恐ろしくて仕方ないんだが……】
山田家+スズキイメージ図
これは完全に迷ったね。もはや笑うほかない。
本当にどこだろうか、ここは?
あたり一面、見渡す限りの珊瑚礁。
魚群が巨大な塊を維持しつつ何かを示すように回遊し、しかしスクリーンショットにも何も映らない。
もりもりハンバーグ君は地層チェックをしつつ、何かのメモを記していた。
メモをとりながら、トレンチコートの裾から伸ばした触腕を器用に操り周囲を泳いでいく。
すっかりここでの生活にも慣れたのか、景色を模写する余裕もあるみたいだ。どうやって色をつけてるんだろうかと突っ込みたいところはたくさんあるが、私がそういうのに疎いだけかもしれないから言わない。
【今更なこと言って良い?】
【なんだよ?】
【海中でメモ取ってることか?】
【今更だろ】
【海中でお絵描きしてようと今更とか言いそうだよな】
【海藻生えるわ】
「|◉〻◉)おっかしーなー、僕のダウジング棒はこっちを指してるんですけどねー。急に調子悪くなったぞ?」
【その手元でクルクル回ってるやつか?】
【そもそも扱い方きちんと把握してる?】
【ヤディスちゃんはどこいった?】
【さっき向こうの海域に流されてったぞ】
【ここの幻影達自由すぎひん?】
【主人が主人だからなー】
なんだか言われたい放題な気がするけど、それこそ今更だ。
「もりもりハンバーグ君、何かわかった?」
「そうですねー」
明後日の方向を見つめ、模写を描いてた手帳を懐に仕舞い込み、触腕を徐に伸ばして地面に吸い付かせて海中を歩いてくる。
「ここの海域の生態系は非常に面白いということが判明しました」
「どういう事?」
「本来この深度では深海魚ぐらいしか見かけないはずなんですよ」
「うん」
「でも中層の海域のように魚群が形成されています。それってその魚類を脅かす上位種が存在するって事ですよね?」
「そうだね。でもそれの何が珍しいの? 深海魚だって生存競争してるでしょ。確かにこの海域で生活する以上、独特の進化は経ている。それでも弱肉強食の世界だ」
「ああ、はい。それはそうなんですが、そんなに魚群を作って自分を強く見せる代わりにですね、その上位種らしい存在の影も形も見つからないんですよ。不思議なことに」
「えっ」
それは確かにおかしいね。
もりもりハンバーグ君はメモを添えて私に逐一説明をしてくれた。
「その魚群を作ってる魚は多分この世界特有のモノだと思います。地球ではまだ未発見の、生物です。なんとなくこの生物、お義父さんのところのスズキさんに似てるんですよね」
「サハギンの始祖みたいなもの?」
「そうかも知れません。しかしあそこまで人に近い手足が生えてない。まだ魚の領域のままです」
「うん、それで?」
「そんな魚類の上位種みたいな存在が逃げ回る生物がこの海域のどこにも見当たらないんですよ」
「夜行性の可能性もあるんじゃないの?」
「その可能性も踏まえて陽光操作でチェックしてます。しかしそれらしいものは特に」
「じゃあ本当に謎の敵に怯えてるだけなんだ?」
「だからこそ我々が探してる神格の影がここら辺にあるのでは、と睨んでます」
手帳を畳み、懐に仕舞う。
その確信めいた物言い。やはり彼は探索者としても素晴らしい。前回は活躍の機会こそなかったものの、一緒に行動してこれほど頼もしい人物もいないよ。
「|◉〻◉)ハヤテさーん、こっちに来てください!」
ちょうどその時、スズキさんからの掛け声。
何かを見つけたようだ。
スズキさんのダウジング棒が引力に引かれるようにその場所を指し示していた。
「ヤディス! スズキさんが何か見つけたようだ。そっちはどうだい?」
「匂いは確実に近づいてきてる。でもまだ姿が見えない」
「嗅覚ですか?」
「はい。本来鼻なんて持たない彼女ですが、幻影になった時に匂いという形で嗅ぎ分ける技能が生えたようです。ガタトノーア様の匂いは懐かしく、聖典側の匂いは鉄臭く、そして信仰の異なる神様はすえた匂いがするそうです」
「私は?」
「ノーコメントで」
【ワカメ】
【絶対磯臭いとかだろ】
【おい今ワカメって言ったやつ誰だ】
【海の中での草といったらワカメやろ】
【この人アキカゼさんのこと信頼はしてるけど信用はしてないよな】
【それwww】
【海藻=わかめは極論すぎるんだよなぁ】
【昆布!】
【海苔!】
【おい、コケ混ざったぞ】
【苔も草っちゃ草だろ】
【別物なんだよなぁ】
「なるほどね。それでスズキさんは何が見つかったの?」
「|>〻<)わかりませんー」
スズキさんが引力に負けて引きずられてる。
ダウジング棒が磁石かなんかだったの? ってくらい引きずられた。しかしそこには何もない。
ただ虚空が広がってるだけ。そしてついに行き着くところまで行った結果。
「|◉〻◉)あっ」
スズキさんの体がその場からパッと消える。
いや、スズキさんの体だけじゃない。
それ以外の景色も、空間ごとぽっかりと穴を開けていた。
「何が起きた!?」
「お義父さん、それよりスズキさんを!」
「あ、彼女なら残機無制限ですので。私が存在してる限り大丈夫ですよ。次のスズキさんは上手いことやってくれる事でしょう」
「|◉〻◉)前の僕はダメダメでしたが、僕はアレより上手くやってやりますよ。へっへっへ」
【なんかパラノイアじみてきたな】
【アキカゼさんがウルトラバイオレット様で昆布】
【ちくわ大明神】
【なんだ今の?】
【今回のリリーちゃん、ガラ悪くない?】
【性格設定までランダムかよ】
【当たりの性格出るまで突撃繰り返すのか?】
【アキカゼさんの普段の扱いがひどいのはこれを知ってたからか】
【それより原因不明の怪現象について考えようや】
「つまりあの怪現象に怯えてスズキさんの祖先は魚群を形成していた?」
「その可能性が高そうですね」
【しかし問答無用で食われたな】
【実際ホラーだろ、こんなの】
【身を寄せ合いたくなる気持ちもわかるわ】
【しかしああも問答無用だとまとまる方が危なくね?】
【その前の吸い込み攻撃でバラけても無駄そうだけどな】
【しっかし姿が見えず、吸い込み攻撃をしてくる神格なんていたか?】
【透明人間】
【アレは見えないだけで実態があるだろ】
【まず人間はあんなに手当たり次第食べないでしょ】
それは確かにそうだけど。
私たちはここにくる道中で何か見落としてるのではないか?
そんな気さえする。
「ヤディス、奴のにおいはどれに属する?」
「うーん、懐かしくはないけど、どこか近い。すえたにおい」
「こちら側の神格である事は確定のようです」
【この幻影の能力差ときたら】
【リリーちゃん食われただけじゃない?】
【次はもっと活躍するから】
【見てろよ見てろよ】
【煽ってやるな。若干びびってるじゃんか】
「|◉〻◉)び、びびってねーし」
【本当に小物だな、この子】
「誰に似たんでしょうかね」
私の質問にコメントは沈黙を貫き通す。
NGワードが何かみんな知ってるようだね。
さて、危険が迫ってるのもあるが、探索は続行する。
だが問題はその暗さだ。
先程までは確かに海底、それも深海とあって陽も当たらぬ真っ暗闇だったが、陽光操作を全身に纏って仕舞えば辺りはぼんやりと光を照り返す。
「流石お義父さん、この暗さに目が慣れてしまったので僕は気にしてませんでしたが。流石に足元まで暗いのは些かおかしいですね」
「ええ、深海は暗いのが当たり前ですが、さっきはここまで暗くなかったよね?」
【そうだっけ?】
【よく見てなかった】
【どこに注目すれば良いかは人それぞれだし?】
【いや、その観察力が問われるのがドリームランドだから】
私が体に纏う陽光操作の出力を上げてる時だ。
闇がそっと陽光を避けるように遠ざかった。
なるほど?その闇が本体か。闇そのものが神性か?
「おっと、マヌケが尻尾を出しましたね」
「流石です。追い詰めますか?」
「どのみち放っておけば被害に遭うのは我々です。いずれにせよここで戦っておいて損はないでしょう」
「ですね」
逃げる闇に対して私ともりもりハンバーグ君、そして失敗を返上するように参加したスズキさんによるさん方向からの陽光の照射で臆病者はついにその姿を表した。
<バグ=シャースが現れた>
それは人間のような目と口に覆われたゼリー上の生物。
先ほど見たように食欲旺盛で、数多の口から先程の魚影とスズキさんの足が見えていた。
「|◉〻◉)僕の仇ーー!」
そこへ飛び込んでいくスズキさん。
見えていれば怖くないのか、疾風迅雷の如き突き技がバグ=シャースに吸い込まれ、
「|◉〻◉)ぎゃぁああああ」
そのまま食べられた。
うん、だろうと思ったよ。
「お義父さん、アレはなかなかに近づけない相手のようですが」
「技を使うタイプではない。その上で食欲が武器になっている。消化器官の類は見当たらないし、私とも相性が悪そうだ。でもね、幻影がやられてハイそうですかと逃げるのも格好がつかないものだよ」
「ええ、僕も同じ思いです」
【バグ=シャースとかマイナーな神が出てきたな】
【神は神だろ】
【しっかし大食い系とか、ガタトノトーア様の下位互換?】
【これは侵食対決とみた】
【なんだその結果のわかってるバトル】
【それでも見つかったらしつこいやつで有名だぞ】
【近づいた奴絶対殺すマンやん】
それでも地形を掌握領域で相手の前にワープさせて攻撃をいなしていく。
戦っていってわかったことだが、バグ=シャースは物理攻撃が効かない。見た目でわかるものだが、無効じゃなくて物理的に接触したら食べられるという意味だ。
その上遠距離攻撃の魔法もレーザーも通用せず、クトゥルフの腕も半分食べられかけた。
とんでもない大食いだ。
一方でもりもりハンバーグ君の侵食攻撃も効果が薄い。
コメント欄では圧倒的有利との下馬評がついているが、難航してるようだ。
そもそもそれはガタノトーアご本人の場合の下馬評。
心を通わせているとはいえ、まだ私のように後継者として認められてない彼には荷が重いのだ。
それでも古代獣を囮にしてる間に肉の芽を埋め込み、ようやく侵食開始。
一つ分かったことだが、バグ=シャースは食事中は一切の攻撃が止まる。しかし食べる速度が尋常じゃないからすぐに臨戦態勢に戻ってしまうのだ。
そこで規模が山二つ分くらいある山田家をスズキさんと合体させて分身アタックをけしかけている。
スズキさんが突っ込む→食べられるの無限連鎖で時間を稼ぐ寸法だ。スズキさんの小さい体だと1秒も持たないが、これが山田家なら20秒は稼げる。
そしてついに肉の芽がバグ=シャースの肉体制御を完璧に乗っ取ったところで戦闘終了。
無数のスズキさん+山田家の残骸が海底を舞い、私たちのストレージにバトルリザルトが流れた。
バグ=シャースの魂片×10
シュブ=ニグラスへの手がかり1/10
「もりもりハンバーグ君は何貰えた?」
この手の報酬は基本ランダムが多い。私はそれとなく教えるけど、彼は何を引き当てたのかなんとなく気になった。
「僕はダンジョン素材の魂片×10と、ニョグタの生息地へ至る手がかりでした。お義父さんは?」
「魂片は同じで、私はシュブ=ニグラスの生息地を記した生息地への暗号。それも同じようなのをあと9個集めないと場所が判明しない奴」
「あぁ、上位神格ですもんね」
「ニョグタだって上位じゃないの?」
「流石にそちらと比べたらまだ弱いですよ」
【この人らの基準の弱いが俺にはわからない】
【いずれ慣れてくるで】
【慣れる、のか?】
【慣れないと無理だろ、だってダンジョン素材だぜ?】
【ダンジョンが今から恐ろしくて仕方ないんだが……】
山田家+スズキイメージ図
0
お気に入りに追加
1,977
あなたにおすすめの小説
VRMMOで神様の使徒、始めました。
一 八重
SF
真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。
「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」
これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。
「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」
「彼、クリアしちゃったんですよね……」
あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。
VRMMOを引退してソロゲーでスローライフ ~仲良くなった別ゲーのNPCが押しかけてくる~
オクトパスボールマン
SF
とある社会人の男性、児玉 光太郎。
彼は「Fantasy World Online」というVRMMOのゲームを他のプレイヤーの様々な嫌がらせをきっかけに引退。
新しくオフラインのゲーム「のんびり牧場ファンタジー」をはじめる。
「のんびり牧場ファンタジー」のコンセプトは、魔法やモンスターがいるがファンタジー世界で
スローライフをおくる。魔王や勇者、戦争など物騒なことは無縁な世界で自由気ままに生活しよう!
「次こそはのんびり自由にゲームをするぞ!」
そうしてゲームを始めた主人公は畑作業、釣り、もふもふとの交流など自由気ままに好きなことをして過ごす。
一方、とあるVRMMOでは様々な事件が発生するようになっていた。
主人公と関わりのあったNPCの暗躍によって。
※ゲームの世界よりスローライフが主軸となっています。
※是非感想いただけると幸いです。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
魔法が存在しない世界でパリィ無双~付属の音ゲーを全クリした僕は気づけばパリィを極めていた~
虎柄トラ
SF
音ゲーが大好きな高校生の紫乃月拓斗はある日親友の山河聖陽からクローズドベータテストに当選したアーティファクト・オンラインを一緒にプレイしないかと誘われる。
始めはあまり乗り気じゃなかった拓斗だったがこのゲームに特典として音ゲーが付いてくると言われた拓斗はその音ゲーに釣られゲームを開始する。
思いのほかアーティファクト・オンラインに熱中した拓斗はその熱を持ったまま元々の目的であった音ゲーをプレイし始める。
それから三か月後が経過した頃、音ゲーを全クリした拓斗はアーティファクト・オンラインの正式サービスが開始した事を知る。
久々にアーティファクト・オンラインの世界に入った拓斗は自分自身が今まで何度も試しても出来なかった事がいとも簡単に出来る事に気づく、それは相手の攻撃をパリィする事。
拓斗は音ゲーを全クリした事で知らないうちにノーツを斬るようにパリィが出来るようになっていた。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~
オイシイオコメ
SF
75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。
この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。
前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。
(小説中のダッシュ表記につきまして)
作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。
後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜
黄舞
SF
「お前もういらないから」
大人気VRMMORPGゲーム【マルメリア・オンライン】に誘った本人である幼馴染から受けた言葉に、私は気を失いそうになった。
彼、S級クランのクランマスターであるユースケは、それだけ伝えるといきなりクラマス権限であるキック、つまりクラン追放をした。
「なんで!? 私、ユースケのために一生懸命言われた通りに薬作ったよ? なんでいきなりキックされるの!?」
「薬なんて買えばいいだろ。次の攻城戦こそランキング一位狙ってるから。薬作るしか能のないお前、はっきり言って邪魔なんだよね」
個別チャットで送ったメッセージに返ってきた言葉に、私の中の何かが壊れた。
「そう……なら、私が今までどれだけこのクランに役に立っていたか思い知らせてあげる……後から泣きついたって知らないんだから!!」
現実でも優秀でイケメンでモテる幼馴染に、少しでも気に入られようと尽くしたことで得たこのスキルや装備。
私ほど薬作製に秀でたプレイヤーは居ないと自負がある。
その力、思う存分見せつけてあげるわ!!
VRMMORPGとは仮想現実、大規模、多人数参加型、オンライン、ロールプレイングゲームのことです。
つまり現実世界があって、その人たちが仮想現実空間でオンラインでゲームをしているお話です。
嬉しいことにあまりこういったものに馴染みがない人も楽しんで貰っているようなので記載しておきます。
異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)
朝食ダンゴ
ファンタジー
不慮の事故(死神の手違い)で命を落としてしまった日本人・御厨 蓮(みくりや れん)は、間違えて死んでしまったお詫びにチートスキルを与えられ、ロートス・アルバレスとして異世界に転生する。
「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」
生前、目立っていたことで死神に間違えられ死ぬことになってしまった経験から、異世界では決して目立たないことを決意するロートス。
十三歳の誕生日に行われた「鑑定の儀」で、クソスキルを与えられたロートスは、最弱劣等職「無職」となる。
そうなると、両親に将来を心配され、半ば強制的に魔法学園へ入学させられてしまう。
魔法学園のある王都ブランドンに向かう途中で、捨て売りされていた奴隷少女サラを購入したロートスは、とにかく目立たない平穏な学園生活を願うのだった……。
※『小説家になろう』でも掲載しています。
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる