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5章 お爺ちゃんと聖魔大戦

389.お爺ちゃんのドリームランド探訪1

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 第二回の聖魔大戦が始まった。
 今回は私のみの参加だ。もりもりハンバーグ君も、森のくま君もリアルで予定があるとかで誘っても来なかったよ。残念。

 当たり前のように横に居るスズキさんを従え、配信出来るかどうかも検証しつつマナの大木の裏側へ赴く。


「やぁ、前回ぶりだね。今日はこっちの方で来たんだ」

[ふむ、貴殿が初めての通過者だな]

「他の人も誘ったんですけど都合がつかなくて」

[強制するものではないからな]

「そういえば、向こうは配信って出来るんですか?」

[そこに浮いてる玉状の物体を向こうで維持できるかという話であれば、出来ないだろうな]

「やはり向こう側は選ばれしものしかいけない感じでしょうか?」

[そうだな。だがこちらで処置すれば少しは持つだろう。少し待てるか?]

「いくらでも」

[では少し待て]


 イ=スの民は配信用のカメラをいじくり、何やら銀色のケースを持ち出してそれの中に入れた。
 なんかバチバチ放電してるけど大丈夫だろうか?
 そして煙が噴き出て、カメラはぐずぐずに溶解して所々変形してしまっている。
 どう考えても原型をとどめていないのに、それを触腕で摘まんで私に渡す。


[よし、これでいいだろう]


 いや、よくないですよね?
 明らかに実験失敗みたいな見た目してますよ。
 あとなんかヌメヌメしてますし、あ、なんか目があった気がする。って言うかぎょろっとした目がついてません?
 明らかに怪異ですよこれー!


「取り敢えず起動できるっぽいので持っていくことにします。どれくらい持つか検証も兼ねるので、またおかしくなったらみてもらっていいですか?」

[そうであるな。いつでも持ってきてくれて構わぬぞ]


 フレンドリーな回答をいただいたのでスズキさんを引き連れてドリームランドへ赴く。
 そして生配信を開始する。


「こんにちは、アキカゼ・ハヤテです」

「|◉〻◉)ぎょぎょ! 助手の魚の人だよ!」

「さて久しぶりの配信に私も何を話していいかわかりませんが、取り敢えず今日どこにきてるかリスナーさんから当ててもらいましょうか?」

「|◉〻◉)早速の無理ゲーですね」

【わこつー】
【久しぶりの配信!】
【聖魔大戦クリア者の配信場所かー】
【まさかドリームランドじゃないだろ】
【あそこって配信できるのか?】
【今できてるじゃん】

「そうですね、自分で配信しようとしても反応はしなかったですよ」

【やっぱり無理かー】
【じゃあなんで今追っかけられてるんだろ?】
【公式の配慮なんだろ?】
【それが正解か?】

「それじゃあそろそろ答え合わせと行きましょうか」

「|◉〻◉)ですね~」

【話聞いてなくて草】
【この人いつもこうだぞ?】

「いや、実はもう答えが出てるので今更かなとは思ってたんです」

【正解者いた?】
【待て、それっぽい答え出してるのってドリームランドだけだぞ?】
【ま?】
【え、ドリームランド来てるの?】
【配信できないって話じゃなかったんかい!】

「実は聖魔大戦のライダーとしてエントリーしてる時はできなかったんですよ。で、ライダーをやめてフリーパスになった今、こうやって配信してるわけですね~」

【ですね~じゃないんだが】

「|◉〻◉)ちなみに通常の方法じゃ無理らしいですよ?」

「ね。事前にゲートキーパーやってるイ=スの民にお願いして改造してもらったんだよ」

「|ー〻ー)改造っていうより実験された感じでしたが」

【草】
【出たよ、誰も会えない神話生物】
【未だに草の根分けて探してるけど見つからないって噂の】

「えー、暇そうにしてるよ? あ、でも侵食度低いと逢えないかも」

「|◉〻◉)100ないと出会えない系の人ですよね」

「そんな前提あるんだ? 知らなかったよ」

「|ー〻ー)ミ=ゴとかは侵食率関係なしに見えますけどね」

【アキカゼさんより魚の人の方が詳しいのなんで?】

「|◉〻◉)なんでだと思います?」

【幻影説が出てるけどほんと?】

「雑談はこれくらいで切り上げて、まずここがどこか突き止めることから始めようか。ちなみに私は絶賛迷子中だよ」

【草】
【聖魔大戦参加者じゃないから怪異に関係ないところに飛ばされるのか】
【逆に次のクリア者向けの検証としてはあり】
【その参加者は配信見れないわけですが】
【これ絶対参加プレイヤーから見たら余計なことしてるよな】
【それ】


 久しぶりの感覚を思い出しつつ、よくわからない荒野を進む。
 ちなみに通ったはずのゲートは見当たらない。
 しかし銀の鍵を取り出すと、それっぽい門が出てくるので帰るのはいつでもできるようだ。

 問題は地図が手元にないことくらいだ。
 アーカムで手に入れた地図はあくまで現地のものだった。
 空撮もダン・ウィッチ村周辺のものだったしね。

 取り敢えず歩くだけの映像は飽きられやすいのでネタに走る。
 スズキさんの用意した浮くコタツに世話になりながら、カメラの前でクルクル回転しながら荒野を進む。


【行動が既に不真面目なんだよな】
【コーヒーカップかな?】
【魚の人、緊張感ないって言われない?】
【あ、お茶飲んでる】

「毎回茶柱立ってるんだよね。なんかコツとかあるの?」

「|◉〻◉)絶対に浮く茶柱を最後に添えてます」

【ズルじゃん】
【草www】
【草に草を生やすな】
【それにしても第一村人すら見かけねーな】

「あ、みかん食べます?」

「頂こう」

【この人達何しに来てるんだっけ?】
【ここがドリームランドって忘れそうなほどほのぼのしてるわ】
【そこはかとない不穏なふいんき(なぜか変換できない)】
【お、なんか変なの居るぞ?】
【めっちゃこっち向かってきてますよ?】
【砂埃巻き上げて不穏ですね】
【全く動じてなくて草】

「|◉〻◉)これ、直撃コースですかね?」

「ああ、それは困るね。領域展開しておく?」

「|◉〻◉)任せます」

「じゃ、やっとくね」

【ここまでの流れ、みかんの皮むきながらの出来事】
【なんかそれっぽいポーズしとかなくていいんですか?】
【みかん食べながらお茶飲んで実行したぞ】
【草】
【シェリル達が必死にやってる横でこの人ときたら】
【あぁ、ぶつかるー!!】
【その後、彼らの姿を見るものはいなかった】
【↑やめろ!】


 竜巻のようなものを掌握領域で堰き止め、正体を目撃すると。
 そこにはとてもあんな巨大な竜巻を起こせそうもない小動物がいた。


【猫ちゃんかな?】
【お前の知ってる猫ってツノ生えてるのか?】
【なお、翼も生えてる件】


[■■■■■!!!]


 言葉にならない、冒涜的な咆哮が私の横を通り抜ける。
 その音が遠くの方で爆発を起こした。


「|◉〻◉)物騒な声ですね。音?」

「ですねぇ」

【それをなんともなさそうに受け流してるのは流石というか】
【猫ちゃんめちゃくちゃ怒ってね?】
【むしろ怒りの矛先完璧アキカゼさんだ】
【そりゃ(行動邪魔されたら)そうよ】

「頭撫でておけば機嫌治してくれないかな?」

【クトゥルフの鷲掴みでなでなですな!】

[■■■■■■■■!?]

【めっちゃ苦しそうな声出してません?】

「よーしよしよしよしよし」

「|◉〻◉)これ、もしかして聖典側の聖獣の類では? なのでハヤテさんに反応してるっぽいです」

【犬猿の仲じゃねーか】
【そりゃ魔導書の最適任者相手に威嚇しますわ】

「酷いなぁ。私は何もしてませんよ?」

【えっ?】
【ヨグ=ソトース召喚幇助】
【アーカムシティの支配者がどの面下げてそんな言葉吐くんですか?】

「それは前回の話ですよね? 今回はただコタツに入ってお茶飲んでただけですもん」

【普通にこの世界に与えた影響が消えてないだけなのでは?】
【あー、それはありそう】
【じゃあ一番最初に影響与えたのって実は後々響いてくるんじゃ?】

「流石に後追いの方が有利でしょ。ちなみに今の聖魔大戦はどんな感じ?」

【見てないんですか?】

「見てないねぇ。身内が頑張ってるのは知ってるけど、それをわざわざ見てあれこれ言うつもりはないよ。結局この手のイベントはプレイヤーがどれだけ神格と向き合うかで結果が変わるから。私のアドバイスを受けて成功するのは私の後任くらいでしょ? なので今の参加者に何もいうことはないよ」

【これくらいじゃないとクリア出来ないんやろな】
【だな】
【はえー、誰かのプレイングが参考にならない世界か】
【エンドコンテンツは魔境やで】
【それどころかこっちがチュートリアル扱いされてるんだが】
【序盤で出会うモンスターが聖獣クラスとかまじ勘弁なんだが?】
【初見でヨグ=ソトース召喚する人もいるし、普通だよ】
【普通とは……?】

「よし、仲良くなれた」


 私の献身的な撫で回しで猫っぽい生き物はその場で首を垂れていた。


【グッタリしてるだけなんだよなぁ】
【これ、STR吸われすぎて弱ってるだけでは?】

「|◉〻◉)しょうがないのでおこたに入れてあげますかね」

【あの流れで仲間になると思ってるおめでたい人達がこちら】
【空に浮くコタツで十分に不審者です】

「ええ、それは言いがかりですよ。ね、スズキさん?」

「|◉〻◉)そうですよ。これくらい普通です」

【普通ってなんだったっけ】
【悪い、俺の辞書に載ってる普通と意味合いが違うわ】

「こうして私の旅路に新しいお供がついてくることになった。これがのちのち大きな災いを生むことになろうとは、私とスズキさんは思ってもいなかった」

【草】
【モノローグ風にコメントすな】
【そんなこと言ってる時点で察してるんでしょ?】

「最悪探偵さんかシェリルを見つけたら丸投げしようかなくらいには思ってる。ほら、私って優しいから」

【自分で言うな】
【平常運転ですな】
【これを皮切りに聖典側の神格がよってきそうだな】
【それフラグや】
【喜ぶかどうかは実際会うまでわからないけど】
【まず真っ先に攻撃されるやろな】
【あり得る。アキカゼさんって放っておくと勝手に事態大きくするから】

「えー濡れ衣はやめてよ。ね、スズキさん?」


 尋ねたスズキさんは上半身を伸ばして私のベルトに下げてるロイガーを摘まんで引っ張った。ブーメランですよと言いたいのかな?
 はいはい、どうせ私が悪いですよー。
 誰も味方してくれないのを不貞腐れながら、流れるログを目で追っていった。
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