424 / 497
5章 お爺ちゃんと聖魔大戦
378.お爺ちゃんと聖魔大戦22
しおりを挟む
収束したビームが、放たれたり放たれなかったりする事数回。
確実にこちらに当てる事だけになりふり構わなくなってきた聖典陣営(探偵さん)に我々魔導書陣営は上手く逃げおおせていた。
若干二名ほど暴走状態であるがそれは無視する。
むしろいい足止めになってくれた。
こういうのは制御できない方が悪いのだ。
何で呼び出したのかすら分からない。
見せ場が欲しかった?
それで暴走させられたらこっちがたまったものじゃないよ。
足止めご苦労様とでも労っておけばいいかな?
スズキさんなら言いそうだ。
そもそもこちらには聖典陣営と戦う理由がない。本当にない。
目的地であるレン高原は既に聖典陣営に取られており、交渉相手であるムーンビーストも人間に変えられてしまった可能性すらある。
私が奪ったところでムーンビーストに戻る可能性は低い。
なんせ置いた神格の眷属が出来上がる仕組みだ。
奪っておいて上手いことナイアルラトホテプが出張ってきてくれて、その上で拠点に居座る……そんな小数点以下の確率を願ったところで時間の無駄。
そもそも出張ってくるならムーンビーストを介さずともいいくらいだ。
直接交渉すればいい。
してくれるかは分からないけど。
えっ? それ以前にもっとヤバい神様が出てきているって?
私のログには何もないよ?
見間違いじゃない? 気さくなGMになら出会ったけど。
無理難題も押し付けられたけど、それはさておき。
私達プレイヤー側がこの世界に与える影響の大きさを今一度吟味する。
来た当時は取るに足らない路傍の石ころのような扱い。
が、自分でヨグ=ソトース召喚の手助けの下地を作った感覚からすれば思いの外プレイヤーの行動次第ではこのドリームランドの状況は大きく変わるものだ。
そもそもなぜこのイベントエリアが存在するのかすら私達には理解し難い。
GM、この場合はアトランティス人のあの人を例えて言うが、彼が言うには本当のゲーム世界はこちらだと言っていた。
だとすれば、私達はもっと自由に行動すべきだった。
イベントだからと制限時間を気にしすぎていた嫌いがある。
ゲーマーのさがとも言うべきか、競い合うポイント勝負くらいの感覚でいるからGMに足を掬われるのだ。
この世界に君臨する上位NPCこそが本当のGMぐらいにみていた方がいいな、これは。
向こうに存在するGMも、独自の思惑があって滞在してるように思えたし、クトゥルフさんも言っていたがNPCにはプレイヤーに見せない一面もある。
そして別の世界に存在する街。
それこそがこのドリームランドなのではないかと私は考える。
何の確証もないけど、何だかそう言う気がしてきたぞ。
それを言ったところで勝ち負けに拘るあの二人が止まってくれる筈もなく。
私が逃げ果せるまでに多くのフィールド破壊を行った。
向こうの神格も降ろす依代によっては侮れないものだなぁ。
本当に探偵さんは着眼点が違うよ。
普通あんな正義のヒーローを模したフォームになればそれが正解だと思うじゃない?
でもあの人は自分の用いるエネルギーでは不足と考えて得意分野でこちらの度肝を抜いてきた。
その点シェリルは独力で何とかしようともがいている。
こう言うところはやっぱり与している陣営によるんだなぁと思う。レムリア人はとにかく自分で何とかしようとしすぎる傾向にあった。会話できるけどコミニュケーション能力は高くない頭でっかちばかりなんだよね。
まぁ彼らの場合はコミュニケーションを取ろうとした相手が最悪だっただけでもあるけど。
みんな話を聞かない脳筋ばかりだもの。
そういう意味では被害者かな?
アトランティス人は他人のものを奪って支配して使役する傾向にある。完璧に支配者の系譜だ。誰かと仲良くしようなんて微塵も思ってない。負けたら名誉の死を選ぶ誇り高き一族なので本当に会話が通用しない困ったちゃんだ。
私はどちらだろうか?
前者とも後者とも言い難い。
ムーは自然と共にある。
力なきものは弱者として排他される厳しい世界だが、努力次第でそれを覆せる超自分大好き人間の集う陣営だ。
努力大好き、修行大好き。
強いやつは友達兼ライバル。切磋琢磨しあえる友情を持ち合わせる。家族思いの種族だ。
そういうところは( ͡° ͜ʖ ͡°)氏もくま君も当て嵌まる。
アンブロシウス氏はどこに与してるか見せてくれないので知らないけど、今行方をくらましてるとろサーモン氏はレムリアだった筈。
ならば……自分の考えを他者に強要する頭でっかちな嗜好に陥る筈(超偏見)!
シェリルもそうだが、私の知り合いでレムリアに行った人はそういう傾向が多かった。
なら彼も……そうだろうと定義つける。
だから仕掛けてくるなら逃げ場のない船の上。
私達が逃げ切ったと安堵している状態でだろう。
忍者としては何ら間違っていないが、その独断とも言える思考は必ずしもチーム一丸となってのものではない。
シェリルは周囲に合わせるタイプだけど、神格を降ろした探偵さんとかはあんな巨体で乗り込んではこれないだろう。
変形すれば海上でも走ってみせそうだけど、神格がそれを認めるかも分からない。何なら飛べば良さそうだし。
だがそれをしたら奇襲計画はパー。
とろサーモン氏的には美味しくない。
だから事前に通達なしで行うだろうと予測する。
そうと決まれば私達はスタコラサッサとアーカムへ戻ることにした。時間も差し迫ってるし、決戦の場はそこがいい。
スズキさんもクトゥルフさんも本領を発揮できるからだ。
それに、ヨグ=ソトースさんにもいい土産話になる。
軍門に下ると言えば聞こえは悪いが、要はこのドリームランドを遊ぶ上での後ろ盾になってくれる。
そう思えば少しは肩の荷が降りるものだ。
いつまでもフリーランスでいる事は憧れではあるが現実的ではないからね。
「船に乗るくま? 追いつかれるんじゃないかくま?」
港町が見えてきた辺りで私の行動を察してくま君。
アール君も正気かとそういう目で見てきている。
「大丈夫。向こうは海路を得意としていない」
「くまも苦手くまよ?」
「それも大丈夫だ。私にはこういうスキルがあるからね」
パーティー全員に効果のある輸送。
しかし今回は距離関係なく重力を0にする移送を同時にパーティーメンバー全員にかける。
本来なら2つが限界だが、領域展開中の私なら思った場所に腕を生やせるからね。
ちなみに領域は私を中心に展開されるので、移動すればその分侵食し続ける。
抵抗されると弱い部分もあるが、勝ち負けに拘ってる相手側はそこにまで考えが至らないのか領域展開し放題だった。
やったね。
そして聖典陣営を足止めしてくれた二柱の神様事アーカムに帰るのも私の仕事だ。風操作で操りつつ牽引する。
追撃してきてもその二柱が自動追尾してくれるだろう。
いやー後ろを気にしなくて楽ちん楽ちん。
牽引と追尾を一つの思考に任せ、もう一つ生やした思考で船を掌握する。
海と一体化する事で摩擦を減らし、風操作で爆速する。
これならアーカムのある大陸まで一っ飛びだ。
「くーまーーーー! 乗る人のことも少しは考えてほしいクマー。バターになるくまままままーー」
「おっと失礼」
くま君もまとめて掌握しておくことにした。
ああ、思考がいくらあっても足りない。
こういう時、私はついつい掌握領域に頼りがちになる。
もっと上手く出来ればいいんだけど。
『|◉〻◉)普通そうはならないんですよ?』
スズキさんにツッコミを頂いた。
そうなの?
思考が足りないから生やすというのは一般的ではないのか。
でも出来てしまうから私はそれをやってしまうんだなぁ。
『|ー〻ー)十分こちら側の思想です』
なるほど、為になったよ。
ではできる限り頑張らせていただこう。
やれるのにやらないのは勿体無いからね。
その分帰ったら労ってください。
『|◉〻◉)ふふふ任せてください。僕のお茶が火を吹きますから楽しみにしててください』
何だか今から飲むのが怖くなってくるなぁ。
それはさておき通常の1/100の時間で目的地に到着する。
本当なら二日間の船旅を満喫するところだが、こちらには時間がないし、神格化した二人を人眼につかずに搬送するのは無理があるから全力を出させてもらったよ。
なーに、力技で押し通るのは慣れてる。
こういうのは思い切りの良さが肝心だ。
そしてアーカムシティは私の支配領域でもある。
大陸に入るなりクトゥルフさんから声かけてもらった。
声を聞かなくなったなと思ったら、どうやらこっちでやることができたらしい。
拠点は神格を据え置くだけだと思っていたけど、据え置いたら据え置いたでやる事があるそうだ。
[それよりも先に、久しい仲間に挨拶をしておかねばの]
[おぉ、我が兄クトゥルフ。お会いしたかったぞ]
[むぅ、突然呼び出されて少し狼狽したが、貴殿が居られるとは。これは恥ずかしい姿をお見せしてしまったかな?]
突如暴走状態だった二柱に理性が返ってくる。
やはり持つべきものは知り合いだろう。
どことなく険の取れた顔立ちで二柱がクトゥルフさんと接している。
そこでピコンとつけっぱなしにしていたパーティーチャットにコメントが届いた。
( ͡° ͜ʖ ͡°):急にうちの神様が大人しくなった件
アンブロシウス:アキカゼ氏が何か策を弄してくれたのであろう
アキカゼ・ハヤテ:アーカムに戻ってクトゥルフさんに会わせただけですよ
私は特に何もしてません
( ͡° ͜ʖ ͡°):いや、それは草
アンブロシウス:うむ、あの激闘をどうくぐり抜けたか疑問は尽きまい
( ͡° ͜ʖ ͡°)それよりどうやって海を渡ったんだよ
アキカゼ・ハヤテ:どうって、泳いで? こう、シャバババーって
( ͡° ͜ʖ ͡°):説明になってなくて草
それ以前に早すぎんだろ
戦ってから数時間も経ってねーぞ?
一日二日かかる航路をどうやったらこんな短時間で着くんだよ
だめだ、ツッコミどころしかねぇ
アキカゼ・ハヤテ:そういえばシャッガイの民さんはどうしたんだろう?
急にいなくなったよね?
誰か知ってる?
アンブロシウス:彼なら普通に聖典の浄化に巻き込まれてご臨終されていたぞ?
尊い犠牲であった
( ͡° ͜ʖ ͡°):おい、脆すぎやしねーか?
原住民だろ
アキカゼ・ハヤテ:ああ、そうなんだ
急に静かになったと思ったら
ていうか効くんだ、浄化?
アンブロシウス:我々のLPにもダメージを与えるステータスだ。効かぬ道理はないであろうな
アキカゼ・ハヤテ:なら彼らの協力を要請する神様にも私達のステータスは通用する事になるって事?
( ͡° ͜ʖ ͡°):理論上はな
森のくま:はえー、くまそういうの全然わかんないくまー
アール:マスターは脳筋じゃからな
( ͡° ͜ʖ ͡°):おい、言われてんぞ
つーか魚の人ぐらい出張ってくるじゃねーかあんた
アール:あれと一緒にされるのだけはゴメンだわ
スズキ:|◉〻◉)呼びました?
( ͡° ͜ʖ ͡°):呼んでない帰れ
スズキ:|ー〻ー)ぶえー
ルリーエ:うちの妹が済まないわね
アンブロシウス:誰であるか?
アキカゼ・ハヤテ:うちの幻影
( ͡° ͜ʖ ͡°):あん? 爺さんの幻影は魚の人だろ?
アキカゼ・ハヤテ:過去を改竄したら分裂したんだ
今や別人だよ
アンブロシウス:ふむ、つまり以前までは同一人物であったと?
アキカゼ・ハヤテ:そういう事になる
まぁ私よりも好き勝手やってるけどね
ルリーエ:本当にご迷惑をおかけしてすいません
スズキ:|◉〻◉)そうやって自分は悪くないって態度ひどいと思いまーす
アンブロシウス:同一、人物……?
アキカゼ・ハヤテ:ちなみに素はスズキさんの方だよ
ルリーエは外向きの人格とでもいえばいいかな?
外向きというよりはクトゥルフさん向きだけど
アンブロシウス:ご苦労されているのだな
( ͡° ͜ʖ ͡°):違いねぇ
と、肉体の制御権が戻ってきたわ
アンブロシウス:む、こちらもそのようだ
アキカゼ・ハヤテ:ならば今一度私の始まりの地へと向かいましょう
アンブロシウス:ヨグ=ソトース殿か
お会いするのは初めてであるな
( ͡° ͜ʖ ͡°):気さくなおっさんだぜ? 爺さんに対しては
アキカゼ・ハヤテ:家族思いの良い人ですよ?
アンブロシウス:アキカゼ氏にのみ友好的な神格であるか
今から会うのが少し怖いな
もりもりハンバーグ:大丈夫ですよ良い人です
森のくま:きっとみんないい笑顔してるくまね
とーちゃんもしてそうな笑みくま
それ、きっと含み笑いってやつですよ。
悪戯を企む子供がするやつです。
この中でももりもりハンバーグ君の言葉が一番信用できないまであるからね。
いや、いい人なんだよ?
ただ少し気難しくて対応一つ間違えるだけで敵対してくる可能性があるだけで。
『|◉〻◉)それが一番問題な気がします』
下手なアピールしなきゃ大丈夫だよ。
穏便に行こう。
それより聖典陣営は付いてきてる?
『|ー〻ー)沖合で僕の妹たちが相手してます』
ああ、時間稼ぎご苦労様。
そろそろあつあつのお茶でも飲みたいところだ。
『|◉〻◉)僕のお茶汲み芸が火を吹く時が来ましたか?』
吹かなくていいから、普通にお願い。
確実にこちらに当てる事だけになりふり構わなくなってきた聖典陣営(探偵さん)に我々魔導書陣営は上手く逃げおおせていた。
若干二名ほど暴走状態であるがそれは無視する。
むしろいい足止めになってくれた。
こういうのは制御できない方が悪いのだ。
何で呼び出したのかすら分からない。
見せ場が欲しかった?
それで暴走させられたらこっちがたまったものじゃないよ。
足止めご苦労様とでも労っておけばいいかな?
スズキさんなら言いそうだ。
そもそもこちらには聖典陣営と戦う理由がない。本当にない。
目的地であるレン高原は既に聖典陣営に取られており、交渉相手であるムーンビーストも人間に変えられてしまった可能性すらある。
私が奪ったところでムーンビーストに戻る可能性は低い。
なんせ置いた神格の眷属が出来上がる仕組みだ。
奪っておいて上手いことナイアルラトホテプが出張ってきてくれて、その上で拠点に居座る……そんな小数点以下の確率を願ったところで時間の無駄。
そもそも出張ってくるならムーンビーストを介さずともいいくらいだ。
直接交渉すればいい。
してくれるかは分からないけど。
えっ? それ以前にもっとヤバい神様が出てきているって?
私のログには何もないよ?
見間違いじゃない? 気さくなGMになら出会ったけど。
無理難題も押し付けられたけど、それはさておき。
私達プレイヤー側がこの世界に与える影響の大きさを今一度吟味する。
来た当時は取るに足らない路傍の石ころのような扱い。
が、自分でヨグ=ソトース召喚の手助けの下地を作った感覚からすれば思いの外プレイヤーの行動次第ではこのドリームランドの状況は大きく変わるものだ。
そもそもなぜこのイベントエリアが存在するのかすら私達には理解し難い。
GM、この場合はアトランティス人のあの人を例えて言うが、彼が言うには本当のゲーム世界はこちらだと言っていた。
だとすれば、私達はもっと自由に行動すべきだった。
イベントだからと制限時間を気にしすぎていた嫌いがある。
ゲーマーのさがとも言うべきか、競い合うポイント勝負くらいの感覚でいるからGMに足を掬われるのだ。
この世界に君臨する上位NPCこそが本当のGMぐらいにみていた方がいいな、これは。
向こうに存在するGMも、独自の思惑があって滞在してるように思えたし、クトゥルフさんも言っていたがNPCにはプレイヤーに見せない一面もある。
そして別の世界に存在する街。
それこそがこのドリームランドなのではないかと私は考える。
何の確証もないけど、何だかそう言う気がしてきたぞ。
それを言ったところで勝ち負けに拘るあの二人が止まってくれる筈もなく。
私が逃げ果せるまでに多くのフィールド破壊を行った。
向こうの神格も降ろす依代によっては侮れないものだなぁ。
本当に探偵さんは着眼点が違うよ。
普通あんな正義のヒーローを模したフォームになればそれが正解だと思うじゃない?
でもあの人は自分の用いるエネルギーでは不足と考えて得意分野でこちらの度肝を抜いてきた。
その点シェリルは独力で何とかしようともがいている。
こう言うところはやっぱり与している陣営によるんだなぁと思う。レムリア人はとにかく自分で何とかしようとしすぎる傾向にあった。会話できるけどコミニュケーション能力は高くない頭でっかちばかりなんだよね。
まぁ彼らの場合はコミュニケーションを取ろうとした相手が最悪だっただけでもあるけど。
みんな話を聞かない脳筋ばかりだもの。
そういう意味では被害者かな?
アトランティス人は他人のものを奪って支配して使役する傾向にある。完璧に支配者の系譜だ。誰かと仲良くしようなんて微塵も思ってない。負けたら名誉の死を選ぶ誇り高き一族なので本当に会話が通用しない困ったちゃんだ。
私はどちらだろうか?
前者とも後者とも言い難い。
ムーは自然と共にある。
力なきものは弱者として排他される厳しい世界だが、努力次第でそれを覆せる超自分大好き人間の集う陣営だ。
努力大好き、修行大好き。
強いやつは友達兼ライバル。切磋琢磨しあえる友情を持ち合わせる。家族思いの種族だ。
そういうところは( ͡° ͜ʖ ͡°)氏もくま君も当て嵌まる。
アンブロシウス氏はどこに与してるか見せてくれないので知らないけど、今行方をくらましてるとろサーモン氏はレムリアだった筈。
ならば……自分の考えを他者に強要する頭でっかちな嗜好に陥る筈(超偏見)!
シェリルもそうだが、私の知り合いでレムリアに行った人はそういう傾向が多かった。
なら彼も……そうだろうと定義つける。
だから仕掛けてくるなら逃げ場のない船の上。
私達が逃げ切ったと安堵している状態でだろう。
忍者としては何ら間違っていないが、その独断とも言える思考は必ずしもチーム一丸となってのものではない。
シェリルは周囲に合わせるタイプだけど、神格を降ろした探偵さんとかはあんな巨体で乗り込んではこれないだろう。
変形すれば海上でも走ってみせそうだけど、神格がそれを認めるかも分からない。何なら飛べば良さそうだし。
だがそれをしたら奇襲計画はパー。
とろサーモン氏的には美味しくない。
だから事前に通達なしで行うだろうと予測する。
そうと決まれば私達はスタコラサッサとアーカムへ戻ることにした。時間も差し迫ってるし、決戦の場はそこがいい。
スズキさんもクトゥルフさんも本領を発揮できるからだ。
それに、ヨグ=ソトースさんにもいい土産話になる。
軍門に下ると言えば聞こえは悪いが、要はこのドリームランドを遊ぶ上での後ろ盾になってくれる。
そう思えば少しは肩の荷が降りるものだ。
いつまでもフリーランスでいる事は憧れではあるが現実的ではないからね。
「船に乗るくま? 追いつかれるんじゃないかくま?」
港町が見えてきた辺りで私の行動を察してくま君。
アール君も正気かとそういう目で見てきている。
「大丈夫。向こうは海路を得意としていない」
「くまも苦手くまよ?」
「それも大丈夫だ。私にはこういうスキルがあるからね」
パーティー全員に効果のある輸送。
しかし今回は距離関係なく重力を0にする移送を同時にパーティーメンバー全員にかける。
本来なら2つが限界だが、領域展開中の私なら思った場所に腕を生やせるからね。
ちなみに領域は私を中心に展開されるので、移動すればその分侵食し続ける。
抵抗されると弱い部分もあるが、勝ち負けに拘ってる相手側はそこにまで考えが至らないのか領域展開し放題だった。
やったね。
そして聖典陣営を足止めしてくれた二柱の神様事アーカムに帰るのも私の仕事だ。風操作で操りつつ牽引する。
追撃してきてもその二柱が自動追尾してくれるだろう。
いやー後ろを気にしなくて楽ちん楽ちん。
牽引と追尾を一つの思考に任せ、もう一つ生やした思考で船を掌握する。
海と一体化する事で摩擦を減らし、風操作で爆速する。
これならアーカムのある大陸まで一っ飛びだ。
「くーまーーーー! 乗る人のことも少しは考えてほしいクマー。バターになるくまままままーー」
「おっと失礼」
くま君もまとめて掌握しておくことにした。
ああ、思考がいくらあっても足りない。
こういう時、私はついつい掌握領域に頼りがちになる。
もっと上手く出来ればいいんだけど。
『|◉〻◉)普通そうはならないんですよ?』
スズキさんにツッコミを頂いた。
そうなの?
思考が足りないから生やすというのは一般的ではないのか。
でも出来てしまうから私はそれをやってしまうんだなぁ。
『|ー〻ー)十分こちら側の思想です』
なるほど、為になったよ。
ではできる限り頑張らせていただこう。
やれるのにやらないのは勿体無いからね。
その分帰ったら労ってください。
『|◉〻◉)ふふふ任せてください。僕のお茶が火を吹きますから楽しみにしててください』
何だか今から飲むのが怖くなってくるなぁ。
それはさておき通常の1/100の時間で目的地に到着する。
本当なら二日間の船旅を満喫するところだが、こちらには時間がないし、神格化した二人を人眼につかずに搬送するのは無理があるから全力を出させてもらったよ。
なーに、力技で押し通るのは慣れてる。
こういうのは思い切りの良さが肝心だ。
そしてアーカムシティは私の支配領域でもある。
大陸に入るなりクトゥルフさんから声かけてもらった。
声を聞かなくなったなと思ったら、どうやらこっちでやることができたらしい。
拠点は神格を据え置くだけだと思っていたけど、据え置いたら据え置いたでやる事があるそうだ。
[それよりも先に、久しい仲間に挨拶をしておかねばの]
[おぉ、我が兄クトゥルフ。お会いしたかったぞ]
[むぅ、突然呼び出されて少し狼狽したが、貴殿が居られるとは。これは恥ずかしい姿をお見せしてしまったかな?]
突如暴走状態だった二柱に理性が返ってくる。
やはり持つべきものは知り合いだろう。
どことなく険の取れた顔立ちで二柱がクトゥルフさんと接している。
そこでピコンとつけっぱなしにしていたパーティーチャットにコメントが届いた。
( ͡° ͜ʖ ͡°):急にうちの神様が大人しくなった件
アンブロシウス:アキカゼ氏が何か策を弄してくれたのであろう
アキカゼ・ハヤテ:アーカムに戻ってクトゥルフさんに会わせただけですよ
私は特に何もしてません
( ͡° ͜ʖ ͡°):いや、それは草
アンブロシウス:うむ、あの激闘をどうくぐり抜けたか疑問は尽きまい
( ͡° ͜ʖ ͡°)それよりどうやって海を渡ったんだよ
アキカゼ・ハヤテ:どうって、泳いで? こう、シャバババーって
( ͡° ͜ʖ ͡°):説明になってなくて草
それ以前に早すぎんだろ
戦ってから数時間も経ってねーぞ?
一日二日かかる航路をどうやったらこんな短時間で着くんだよ
だめだ、ツッコミどころしかねぇ
アキカゼ・ハヤテ:そういえばシャッガイの民さんはどうしたんだろう?
急にいなくなったよね?
誰か知ってる?
アンブロシウス:彼なら普通に聖典の浄化に巻き込まれてご臨終されていたぞ?
尊い犠牲であった
( ͡° ͜ʖ ͡°):おい、脆すぎやしねーか?
原住民だろ
アキカゼ・ハヤテ:ああ、そうなんだ
急に静かになったと思ったら
ていうか効くんだ、浄化?
アンブロシウス:我々のLPにもダメージを与えるステータスだ。効かぬ道理はないであろうな
アキカゼ・ハヤテ:なら彼らの協力を要請する神様にも私達のステータスは通用する事になるって事?
( ͡° ͜ʖ ͡°):理論上はな
森のくま:はえー、くまそういうの全然わかんないくまー
アール:マスターは脳筋じゃからな
( ͡° ͜ʖ ͡°):おい、言われてんぞ
つーか魚の人ぐらい出張ってくるじゃねーかあんた
アール:あれと一緒にされるのだけはゴメンだわ
スズキ:|◉〻◉)呼びました?
( ͡° ͜ʖ ͡°):呼んでない帰れ
スズキ:|ー〻ー)ぶえー
ルリーエ:うちの妹が済まないわね
アンブロシウス:誰であるか?
アキカゼ・ハヤテ:うちの幻影
( ͡° ͜ʖ ͡°):あん? 爺さんの幻影は魚の人だろ?
アキカゼ・ハヤテ:過去を改竄したら分裂したんだ
今や別人だよ
アンブロシウス:ふむ、つまり以前までは同一人物であったと?
アキカゼ・ハヤテ:そういう事になる
まぁ私よりも好き勝手やってるけどね
ルリーエ:本当にご迷惑をおかけしてすいません
スズキ:|◉〻◉)そうやって自分は悪くないって態度ひどいと思いまーす
アンブロシウス:同一、人物……?
アキカゼ・ハヤテ:ちなみに素はスズキさんの方だよ
ルリーエは外向きの人格とでもいえばいいかな?
外向きというよりはクトゥルフさん向きだけど
アンブロシウス:ご苦労されているのだな
( ͡° ͜ʖ ͡°):違いねぇ
と、肉体の制御権が戻ってきたわ
アンブロシウス:む、こちらもそのようだ
アキカゼ・ハヤテ:ならば今一度私の始まりの地へと向かいましょう
アンブロシウス:ヨグ=ソトース殿か
お会いするのは初めてであるな
( ͡° ͜ʖ ͡°):気さくなおっさんだぜ? 爺さんに対しては
アキカゼ・ハヤテ:家族思いの良い人ですよ?
アンブロシウス:アキカゼ氏にのみ友好的な神格であるか
今から会うのが少し怖いな
もりもりハンバーグ:大丈夫ですよ良い人です
森のくま:きっとみんないい笑顔してるくまね
とーちゃんもしてそうな笑みくま
それ、きっと含み笑いってやつですよ。
悪戯を企む子供がするやつです。
この中でももりもりハンバーグ君の言葉が一番信用できないまであるからね。
いや、いい人なんだよ?
ただ少し気難しくて対応一つ間違えるだけで敵対してくる可能性があるだけで。
『|◉〻◉)それが一番問題な気がします』
下手なアピールしなきゃ大丈夫だよ。
穏便に行こう。
それより聖典陣営は付いてきてる?
『|ー〻ー)沖合で僕の妹たちが相手してます』
ああ、時間稼ぎご苦労様。
そろそろあつあつのお茶でも飲みたいところだ。
『|◉〻◉)僕のお茶汲み芸が火を吹く時が来ましたか?』
吹かなくていいから、普通にお願い。
0
お気に入りに追加
1,982
あなたにおすすめの小説
昔助けた弱々スライムが最強スライムになって僕に懐く件
なるとし
ファンタジー
最強スライムぷるんくんとお金を稼ぎ、美味しいものを食べ、王国を取り巻く問題を解決してスローライフを目指せ!
最強種が集うSSランクのダンジョンで、レオという平民の男の子は最弱と言われるスライム(ぷるんくん)を救った。
レオはぷるんくんを飼いたいと思ったが、テイムが使えないため、それは叶わなかった。
レオはぷるんくんと約束を交わし、別れる。
数年が過ぎた。
レオは両親を失い、魔法の才能もない最弱平民としてクラスの生徒たちにいじめられるハメになる。
身も心もボロボロになった彼はクラスのいじめっ子に煽られ再びSSランクのダンジョンへ向かう。
ぷるんくんに会えるという色褪せた夢を抱いて。
だが、レオを迎えたのは自分を倒そうとするSSランクの強力なモンスターだった。
もう死を受け入れようとしたが、
レオの前にちっこい何かが現れた。
それは自分が幼い頃救ったぷるんくんだった。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~
ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」
ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。
理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。
追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。
そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。
一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。
宮廷魔術師団長は知らなかった。
クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。
そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。
「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。
これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。
ーーーーーー
ーーー
※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。
見つけた際はご報告いただけますと幸いです……
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
双極性障害でも生きてます。人間なんです。見下されてもいいじゃない
みゆき
エッセイ・ノンフィクション
精神疾患を患った私のブログ。双極性障害になってしまった私が書きたい事をなんとなく書いていくだけ。
内容に共感して下さる方がいれば嬉しいです。
稚拙な文章を読んで下さってありがとうございます。
『スキルの素』を3つ選べって言うけど、早いもの勝ちで余りモノしか残っていませんでした。※チートスキルを生み出してバカにした奴らを見返します
ヒゲ抜き地蔵
ファンタジー
【書籍化に伴う掲載終了について】詳しくは近況ボードをご参照下さい。
ある日、まったく知らない空間で目覚めた300人の集団は、「スキルの素を3つ選べ」と謎の声を聞いた。
制限時間は10分。まさかの早いもの勝ちだった。
「鑑定」、「合成」、「錬成」、「癒やし」
チートの匂いがするスキルの素は、あっという間に取られていった。
そんな中、どうしても『スキルの素』の違和感が気になるタクミは、あるアイデアに従って、時間ギリギリで余りモノの中からスキルの素を選んだ。
その後、異世界に転生したタクミは余りモノの『スキルの素』で、世界の法則を変えていく。
その大胆な発想に人々は驚嘆し、やがて彼は人間とエルフ、ドワーフと魔族の勢力図を変えていく。
この男がどんなスキルを使うのか。
ひとつだけ確かなことは、タクミが選択した『スキルの素』は世界を変えられる能力だったということだ。
※【同時掲載】カクヨム様、小説家になろう様
『星屑の狭間で』(チャレンジ・ミッション編)
トーマス・ライカー
SF
政・官・財・民・公・軍に拠って構成された複合巨大組織『運営推進委員会』が、超大規模なバーチャル体感サバイバル仮想空間・艦対戦ゲーム大会『サバイバル・スペースバトルシップ』を企画・企図し、準備して開催に及んだ。
そのゲーム大会の1部を『運営推進委員会』にて一席を占める、ネット配信メディア・カンパニー『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社が、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』として、順次に公開している。
アドル・エルクを含む20人は艦長として選ばれ、それぞれがスタッフ・クルーを男女の芸能人の中から選抜して、軽巡宙艦に搭乗して操り、ゲーム大会で奮闘する模様を撮影されて、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』の中で出演者のコメント付きで紹介されている。
『運営推進本部』は、1ヶ月に1〜2回の頻度でチャレンジ・ミッションを発表し、それへの参加を強く推奨している。
【『ディファイアント』共闘同盟】は基本方針として、総てのチャレンジ・ミッションには参加すると定めている。
本作はチャレンジ・ミッションに参加し、ミッションクリアを目指して奮闘する彼らを描く…スピンオフ・オムニバス・シリーズです。
Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~
NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。
「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」
完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。
「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。
Bless for Travel
そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる