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5章 お爺ちゃんと聖魔大戦

347.お爺ちゃんとゲスト参加②

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 マリンがハーフマーメイドの説明を終えると、ユーノ君も続いて人魚形態にシフトする。
 そこで満を持してルリーエが商品説明を始めていた。
 さっき頼み込んで作った商品だったが、いつの間に生産に入ったのだろうか?
 本人的には納得いかない点も多かったが、反響を見てこれは稼げると思ったのか、商機を見出したようだ。
 相変わらずスズキさんは画面端からチラチラ出たり引っ込んだりしてる。
 コメントで「失せろ」という言葉を多く頂くたび、同じコメントで反論していた。完全に遊びでやってるんだよなぁ、この人。

 ルリーエの印象操作とはいえ、同時進行は大変だろうに。


[同時操作ではないぞ。以前分裂したと言ったであろう? 物理的に分裂して今では姉妹のように振る舞っておる]


 なるほど。元が一緒というだけで別操作になってる訳か。
 その上で記憶を引き継いでると。
 アメーバーか何かかな?

 疑問が解消したところで海底内に侵入する。
 ここから先は海の眷属の領域内。
 一見敵対しそうなフォルムの種族がいても、普通に挨拶出来るなんとも奇妙な場所だ。

 翻訳はルリーエがしてくれた。
 彼女は通訳係も担っている。
 私は字幕スーパーが網膜内に書き込まれるからね。
 所謂自動翻訳と言うやつだ。ついでに私の中に御大が居ることをそれとなく伝えたらしく、相手をビビらせていた。
 こう言う余計なところはスズキさんっぽいんだよなぁ。

 元スズキさん……いや、本家はルリーエの方か。
 私の中でもそこら辺がぐちゃぐちゃになっている。
 なんせあの子自由すぎるからね。
 他の幻影から奇抜な子扱いされるのも納得だ。


「さて、マリン。海の中を泳いでみてどうだい?」

「最高! お爺ちゃんは普通に泳いでついてきてるけど、私結構全力で泳いでるのにどうして?」

「マリンちゃん、アキカゼさんはショートワープを持ってるからだよ」

「あっそうか!」


 勘のいいユーノ君に促されて納得しているマリン。
 しかしそれでは合格点はあげられないな。


「それじゃあ50点と言うところかな? 私は確かにショートワープを持っているけどね? こういうことだって出来るんだ」


 水流操作は何もない空間に水を生み出すのみならず。
 そこにある水流にベクトルを持たせることだって可能だ。


『そこら辺が海霧纏の由来ですね』


 ルリーエ曰くそう言うことらしい。でも海霧纏ほど便利じゃないけどね、私の能力は。APだって消費するし。
 

『海霧纏の場合は同時発動できないデメリットがありますから』


 確かにそう考えると不便か。


『ですが天空ルートで試練を乗り越えるための一助になります。要はお助け要員ですね』


 ふむ。それはそれとして、空も泳げると言うのは本当?


『可能ですが、クトゥルフ様の支配する世界でのみとなっております』


 それはトップの神格が代替えする期間のみという事だろうか?
 そんな弱気な発言をするだなんて彼女らしくない。
 私のアドバイスで影響の出た神格がいただろうか?


『ゾロアスターとヒンドゥーの二大勢力が結託しているとの情報が入ってますね。すぐにはこちらに届かないでしょうが一応備えてはいます』


 シェリルと探偵さんが私のアドバイスで決起したか。
 では私達は備えつつ、今ある環境を楽しもうか。

 そもそもあの宗派が仲良く手を組む姿が想像できない。
 プレイヤーの介入で手を組んででもいいと認識させたのだろうか?
 ルリーエの見解ではこれだけではこちらが破れる事はないが、それ以外も参入してくると厳しいとの事だ。
 クトゥルフ様からすれば有象無象ではあるが、力を増して眷属を奪われると厄介との事。
 神格ばかり強くても聖魔大戦で優位に立てないそうだ。
 その為に今のうちに信仰を集めておきたかったのかな?
 私に伝わってこない情報が多すぎていまだに不透明なんだよね、そこら辺。
 御大は任せておけと言うので任せてはいるけどさ。

 私がマリンや視聴者サービスにジェットコースターばりの海流を操作してる裏で、なんてこと聞かせてくるんだろうと思いつつ、ユーノ君にも同じように体験させて次へ移動する。

 そこで水域が変わる。変わった。
 要は水圧が強くなり始めたのだ。肌に圧がかかり始める。

 私は水圧耐性があるので平気だが、人間の肌のままのマリンはここから下の海域には侵入出来ないみたいだ。
 私の後を追おうとして見えない壁にぶつかっていた。


「お爺ちゃん、私達はここまでが限界みたい」

「ルリーエ、どう言うこと?」

「はい。ハーフと頭にあるように地上で活動するための皮膚を媒体にしているため、そもそも水圧に抵抗する肌を持ち合わせてません。なのでとっつきやすい分のデメリットがあるのです」

「どうすればいいんですか?」

「答えは簡単でございます。纏う海霧纏を切り替えればいいのです。クトゥルフ様は上流海域に住まう者にも分け隔てなく深海行きを行き来できるように海霧纏を与えて下すったんです。なのでマリン様やユーノ様方はその試練を受ける挑戦権がございます」

「だって、ユーノ。挑戦しよっか?」

「そうだね。ここまで配信らしい配信もできてないし。皆さんごめんなさい、今日はターゲットを変更して試練に挑戦してみようと思います。カメラはマリンちゃんに付随する感じでいいかな?」

「それでオッケー」

【マリンちゃがんばえー】
【ちょうど試練のデータを切らしてた】
【助かる】
【まだ未公開情報じゃねーのこれ?】
【実装されたの昨日だぞ?】
【誰かチャレンジしたやついねーの?】
【まだ探してる最中】
【|◉〻◉)君たち情けないにゃー】
【まさか中流海域にあるとか知らないし】
【↑↑うるせー漂ってるだけの奴に言われたくねー】
【スズちゃん、死んだふり状態でも目立ちたがりなのな】
【|◉〻<)てへ)
【かわいこぶっても遅いんだよなー】
【こんなのをルリーエ様と同一視してたとは】
【スズちゃん最低!】


 コメントを見る限り場所の特定もまだだったようだ。
 ルリーエはマリンの視聴者を通じてこの際公開してしまうつもりでいるのだろう。スズキさんは相変わらず場の支配権を握ってるかのような立ち回りだ。
 本体のうざさをコメントで中和……いや、より加速させてコメントを脱線させていた。

 その後ルリーエの案内で我々は水圧の試練へと赴いた。
 上流海域仕様から中流海域仕様にシフトするためのもののようだ。


「そう言えば、海霧纏(カムイ)中って霊装は使えるんですか?」

「扱えますよ。そもそものシステムが違いますので」

「良かったぁ。半ば戦闘スタイルの一部になってたし使えなかったらどうしようって思っちゃった」

「これは朗報だね。みなさん、霊装と海霧纏の併用は可能だそうです!」

「ねー!」

【かわいい】
【かわいい】
【かわいい】
【おいお前ら……かわいいオーラで朗報が流されかけてるじゃねーか】
【草】
【アキカゼさんの配信じゃないからかわいさ重視なんだぞ?】
【知ってた。曲がりなりにもアイドルチャンネルだもんな】
【この距離感の近さよ。尊みを感じるな】


 加速するコメントに、気になるワードがあったのだろう。
 マリンが私に聞いてくる。普段はユーノ君へすぐ聞いてるところを今は私が請け負ってやるとするか。
 頻度を見るに彼女の気苦労が知れるというものだ。


「お爺ちゃん、尊みって何?」

「うーん、お爺ちゃんも今時の言葉はよくわからないなぁ。おうちに帰ったらオクトくんに聞いてみたらどうかな?」

「うん、そうする。それよりみんな、試練するよー!」

【マリンちゃは素直でかわいいにゃー】
【アキカゼさん、ナイスアシスト】
【マリンちゃがんばえー】
【ユーノちゃも頑張ってー】
【はい、常備薬( ´∀`)っ|胃薬|】
【ここまで配信が明後日の方向へ飛ぶことがかつてあっただろうか?】
【|◉〻◉)完全にハヤテさんの被害者ですね】
【スズちゃんどっちの味方なの?】
【|ー〻ー)~~♪】
【あ、この子誤魔化し始めたぞ】
【口笛吹けるんか? 魚の口で】
【|◉〻◉)あーあー聞こえなーい】


 何をやってるんだか。
 相変わらずコメントを振り回してるのかボロを出して振り回されてるのか。スズキさんは相変わらずだ。
 
 試練に挑戦できるのは一名のみ。
 行ってくるねと言う孫を見送り、私達もシステムから生配信中の画面を開いて孫の応援を開始した。

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